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プロローグ
私があの少年に会ったのは、戦後すぐの話だった。
あの戦争で何が起こったのか。それを知っているのは彼だけなのだろう。
少なくとも、ドイツ連邦共和国初代大統領に就任した私ですら、本当のところは何も分かっていない。
だが、彼が歴史を紡いだのは紛れも無い事実だ。国連も米連も、ソ連や中国ですら、彼に踊らされていたのだから。
世界の帝国主義に区切りを付けた最後の帝王。私にしてみれば、イギリスの見解は欺瞞に満ちたものである。
日本にいたっては何も話そうとしない。あの大戦に余程の真実を隠しているのか。
戦後三十年経過した今でも、私はよく彼のことを思い出す。
――1975年 ドイツ連邦共和国初代大統領アドルフ・ヒトラーの回想録より