漫才4
「こんにちはどーもー! ケンタです」
「ミキです、よろしくお願いします」
「いやぁ、クリスマスも大晦日も過ぎて、世間は正月モード一色ですね、ところで皆さんはクリスマスはいかがお過ごしでしたか」
「家で1人でツイッター」
「それ俺のクリスマスだから! って何でミキちゃんばらしちゃうの!?」
「私は芸人仲間でパーティーしてました」
「俺の話はスルーなんですねそうなんですね……とまあ、今年は少し寂しいクリスマスを過ごしてしまった俺なんですが」
「去年もです」
「うるさいよ!? ばらさなくていいよ!? ……でですね。私、来年こそは誰かと過ごしたいんですが」
「人生諦めが肝心」
「ひどっ!? まだ20代なんだから諦めたくないですよ!? ……で、諦めきれない自分は、どうしてもやってみたいクリスマスデートがあるんですよ」
「へえ、そうなんですか。ところで私も最近ツイッターをはじめまして」
「だから! なーんーで俺の話題から話をそらすの!?」
「……あぁ」
「何で天をあおぐんすか!? 駄目っすよ! 今日は俺の話をさせてもらうんすから!」
「ありがとうございましたー」
「終わらすな! まだ俺の話は終わってない! ……で、ですね、どうしてもやってみたいクリスマスデートって言うのは遊園地でのデートなんですね」
「無理な夢」
「うるさいよ!? 可能性は0じゃないんだから! ほら、やっぱり観覧車の上で『きれい……』『あぁ、綺麗だね、でもお前の方がもっと綺麗さ』」
「おぇえええ」
「なんて擬音だよ!? そこはヒューヒューとかでしょ!? ……でですね、来年のクリスマスに遊園地デート出来るように、ミキちゃんに練習の協力をしてほしいんですよ」
「無駄な練習」
「何で確定なんすか!? 1年後がどうなってるのかなんて分かんないだろ!?」
「……分かりました。それでは私が遊園地に少し遅れてきた彼女の役をやりますので、ケンタは受付をやってください」
「うぃ、了解で……す?」
「ごめん、ちょっと遅くなっちゃって。うん……うん、それじゃはいろっか。えっと……入場券……あ、あったあった。受付の人、お願いします」
「え、あ、俺? は、はい、確認しました。ど、うぞ」
「……なんか、さっきの受付の人すっごく気持ち悪い目で見に来たねー」
「ちょっと待てい! 何でミキちゃんがデートしてんの!? 今日は俺がデート!」
「……やれやれ」
「だから、憐れんだ目で見ないで!? 万が一って言葉もあるじゃんか! というわけで、俺が遊園地に着いた彼氏の役をやりますから」
「私は第3者の役をやりますね」
「ミキちゃん……ほんとに関わる気が0ですね……いいですよーだ。……ごほん、『ごめん、待たせちゃったね。それじゃあ遊園地に入ろっか』」
「誰か! 誰かー! あそこに幼女を連れた誘拐犯がー!」
「誰のことだよミキちゃん!? って指差さない! 何で俺のデート相手が幼女になってるんすか!?」
「とうとうケンタも犯罪に手を……ええ、ええ、昔から小学生好きの気質がありまして……いつかやると思っていました」
「勝手に俺の変なイメージを世間に垂れ流さないでよ!?」
「このロリコン」
「嘘言うな! ったく、なんで初デートの相手が小学生なんだよ」
「相手がいない」
「うるさいなわかってるよ! ……お願いです。ミキちゃんが彼女の役やってくれませんか?」
「……はぁ、しょうがないですね。やってあげますよ」
「何でそんな上から目線なのか気になりますが、お願いします」
「ぴ、ぽ、ぱ。『ごめんなさい、ちょっと急用できちゃっていけなくなっちゃった』」
「デートさーせーて! 何いきなりドタキャンしてんの!? もう!」
「『ケンタ、今日は、とっても楽しかった。またデートしようね』」
「デート終わってんじゃん!? 大事なのはあいだ! 結果ではなくて経過を楽しみたいんです! ああ、もう! 自分がエスコートしてくから、ついてきてよ! 『よーし、まずは最初にどれに乗ろっかー。よし、じゃあまずコーヒーカップに乗って』」
「降りて」
「『次はモノレールに乗って』」
「降りて」
「『ゴーカートに乗って』」
「降りて」
「『メリーゴーランドに乗って』」
「降りて」
「乗ーせーて!! ミキちゃん! 乗り物乗ーせーて! こうさ、遊園地デートの醍醐味といえば乗り物乗って『キャー』って言ってるところで『大丈夫だよ、僕が着いてるからね』みたいな会話することでしょ!?」
「おぇえええ」
「その擬音やめて! そういう時は『ヒューヒュー』みたいに言ってよ! ああもう、せっかくの遊園地デートなのに、こんなんだったら陶磁器センターに行って土器を見てた方がドキッとしそうだよ」
「ヒューーヒューー」
「今その擬音やめて! 木枯らしになってるから! 分かってるよどうせすべったよ! ああもう、ミキちゃん、ちゃんとデートさせる気ないでしょ! もういいよ! じゃあこれで最後、俺たちは今からお化け屋敷に入ります」
「分かりました。『ケンタ、怖かったね』」
「だから終わらさないで! お願いだから一緒にお化け屋敷入って!」
「分かりました分かりました……『ケンタ、怖くなって来たね』」
「『大丈夫だよ、僕がついてるからね』」
「『出たあ! お化けー!』」
「俺の顔指差すな! 俺はお化けじゃねえ! ……はあ、だめだ……全然練習にならなかった。このままじゃ来年も俺は1人で過ごすのか」
「独り身だね。ヒューーヒューー」
「だから木枯らし吹かすな! もういいよ!」
「ありがとうございましたー」