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可憐の少女

作者: 血路誘拐
掲載日:2025/10/27

茶色い艶やかな髪に追いかけられる可憐なあの人は、急にそんな話を始めた。

「例え話なんだけど」と前置きして、

「10月10日の朝、消費期限が10月5日って書いてあるメロンパンがそこに置いてあるとしたら、それは間違いってことになるよね」

と、まるで誰に説明するでもなく、淡々と続けていた。


「でも、10月10日の夜、そのメロンパンの袋に“期限切れ”って書かれたとしたら、その存在は間違ったものじゃなくなる」

あの、前にある椅子の右後ろの足を遠く眺めながら私は聞いた。

彼女は、ただ一人で思考の奥に沈んでいくように喋り続けた。


「そのメロンパンの歴史を見たとき、10月の6、7、8、9日は確かに間違いであった経歴を持つし、あとからラベルが変えられたからといって、その過去の日たちが正しいに変わるわけじゃない。間違いだったっていう史実はあるの」

声はどこか遠くのものみたいで、

「4日間、メロンパンはキッチンで隠れてて、誰にも認識されてなかったかもしれない。そこにあった間違いは、いつも黙って見ている世界のやつと、メロンパンしか知らない。……その4日間は、2人だけの間にあった秘密が、メロンパンを存在させたのかも」

と、最後だけ少し優しく言って、私を捕まえる腕を離し、艶やかな残り香を遺して去っていった。


大変だ。私は呼吸を忘れていたかもしれない。

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