第2話「視聴者の提案、令嬢の改革スタート」
リアンの配信は前回の“愚痴発言”で急にバズり、王都の貴族や領地関係者の間でも話題になっていた。コメント欄には、領地改革や商業アイディアが次々と送られてくる。
「これ、本当に実行してもいいのかな……」
リアンはスマホを握りながらつぶやいた。画面には、百件以上のコメントが流れ続けている。
――「小麦畑の区画を変更して、作物の回転率を上げましょう!」
――「倉庫の管理をもっと効率化すれば、腐敗率が下がります!」
――「役人の巡回スケジュールを変更して税収アップ!」
「みんな……かなり具体的だな……」
リアンは眉をひそめつつも、ワクワクしていた。自分の配信がこんな形で役に立つなんて、夢にも思わなかった。
翌朝、リアンは侍女リサとともに、領地の中心に向かった。リアンの屋敷は王都中心部ではなく、少し郊外にある小さな領地。畑や工房、商人の集まる市場も点在していた。
「今日は、配信で提案された改善策をいくつか試してみるわよ!」
「はい、令嬢!」
リサは少し緊張しながらも、リアンのやる気に合わせて小走りでついていく。
まずはコメントで推奨された小麦畑の区画整理だ。従来は均等ではない小さな畑が点在していたが、リアンは視聴者の提案通り、大きな区画にまとめることにした。
「こうして畑を大きくまとめると、農具や人員の管理もしやすくなるんだって」
リアンは配信カメラを畑の端に設置し、作業の様子を実況した。
――「わぁ、令嬢、すごい!」「参考になります!」「これで収穫量アップ間違いなし!」
コメントがリアルタイムで届く。リアンは嬉しさに笑みをこぼす。
「なんだか……現代の配信みたいね。みんなが画面越しに手伝ってくれる感じ……!」
次は領地の市場。毎週開かれる市は、人手不足と不規則な商品配置で客足が伸び悩んでいた。
リアンはコメントで人気だった「商品配置の効率化」と「商人への報酬制度」を試すことにする。
「商品を種類ごとに並べ替え、人気商品は目立つ場所に。商人には売上に応じて小さな報奨を渡す……これで活気が出るはず!」
市場を巡りながら、リアンは配信を続けた。視聴者からは実践アドバイスだけでなく、励ましやリアクションも届く。
――「令嬢、市場改革の実況、面白いです!」「こんなアイデア、誰も思いつかない!」「リアン様、尊敬します!」
「わ、私……ちょっと有名になっちゃったかも……」
リアンは耳まで赤くなりながらも、配信の楽しさに胸を弾ませた。
数日後、リアンの領地では小麦の収穫量が前年度比で15%増加。市場の売上も20%アップ。視聴者たちはコメントで報告とお祝いを送ってくれる。
「これ、もしかして……私、商才あるかもしれない……!」
リアンは笑顔でカメラに向かって話す。
――「皆さんのおかげです! 本当にありがとう!」
だが、リアンの耳に、外から低い声が聞こえた。
「……あの令嬢、ただの遊びでやってるだけじゃないだろうな?」
影のように市場の隅に立つ青年が、リアンの配信を監視していた。
リアンの異世界での“配信改革”、思わぬ形でライバルの目にも触れることになった――。