7 趙王君が守りたかったものside趙王君
7 趙王君が守りたかったものside趙王君
趙王君
天才囲碁棋士であり、七大タイトルを制覇した傑物。
その才覚は誰もが認める者であるが、趙王君は焦っていた。
家礼の血が抜かれた。
平城院梨沙から教えてもらった。
相変わらず有能な働きだ。
鑑定にはかなりの時間がかけられるだろう。
それもそのはず、何しろ世界有数の名家である石舟院家の若君のDNA鑑定をするのだから。
家礼の奴。スヤスヤと眠っていたそうだ。馬鹿の間抜けめ。
趙王君は僅かな余暇を家礼の為に使っている。
家礼は趙王君にとっては妹同然であるからに決まっている。
趙王君と平城院梨沙は知っているのだ。
家礼は男の子ではなく、女の子だと。
しかも、家礼は最近、御菓子作りにはまっていると聞いた。
何と、自分にも手伝ってくださいと言った。
しかし、趙王君は生まれてこの方、料理はおろか、囲碁以外何もできないポンコツなのだ。
趙王君は一抹の戸惑いを覚えながら、石舟院家の邸宅へと向かった。
「姉さん、来てくれたのですね。一緒にお菓子作りを始めましょう」
家礼のテンションは思いのほか高かった。
血が抜かれたことに家礼は気付いてはいない。
趙王君は馬鹿の間抜けめ、と心の内で言い募りながら、家礼の誘いに乗った。
平城院梨沙を含む使用人総出でのお菓子作りの会となった。
家礼が明らかに調子に乗っているのが見て取れた。
「皆さん! 高級な材料を用意させました。
早速、お菓子の会を始めましょう!」
家礼は満面の笑みで、使用人と趙王君に指示を飛ばした。
贅を尽くした材料に一同みんなは引いていた。
趙王君の眼から見て、一般庶民が用意できる材料ではない。
貴族のお姫様の道楽そのものであった。