5 探偵と大貴族
5 探偵と大貴族side家礼
家礼は追い詰められていた。
叔父が雇った日本一の探偵に。
やはり、叔父は家礼が女だという事を疑っていた。
あれだけ、自分の身を案じていると言った言葉は偽りである事に衝撃を隠せない。
いや、先に皆を欺いていたのは自分なのだが。
応接室で、家礼は目の前に座っている探偵が忌々しくて仕方がなかった。
「石舟院家礼様。
初めまして、日本一の探偵を自称する至理で御座います。
私は貴方が重大な事実を隠している事をある程度掴んでいる」
至理はじろじろと此方を凝視している。
明らかに確信を持ち、家礼を疑っている。
冷汗が家礼の頬を伝う。
一体、目の前の男はどれだけ、家礼の秘密を掴んでいるのか。
「至理さん、僕は貴方が言っている意味が分かりかねません。
僕は石舟院家の正当な当主です。
下賤な平民風情が不快なのですよ」
家礼は不快感を思いのほか、露にして捲し立てた。
ムッとして、至理を見据える。
「家礼様、私は貴方の正体を必ず掴んで見せます。それでは」
至理は啖呵を切って、その場を後にする。
それを憎々しく、家礼は見送って怯え震えていた。