「うわっ、本気じゃねぇか!」
健太は、男の銃口が完全に自分を捉える前に、近くにあった机を蹴り倒した。その衝撃でモニターが傾き、男の視線が一瞬逸れる。
「悪いな、銃向けられるの慣れてるんで!」
健太は勢いよく前に飛び出し、男の腕を掴んで銃口を逸らす。そのまま肘をねじり上げ、銃を床に落とさせた。
「ぐっ……!」
男が苦痛に顔を歪めた瞬間、健太は素早く銃を拾い上げ、逆に相手に突きつけた。
「悪いけど、お前の予定より俺の予定を優先させてもらうぜ。」
そのとき、イヤピースから梨央の焦った声が飛び込んでくる。
「健太!外部のセキュリティが動き始めたわ!増援が来るかもしれない!」
「了解!データは?」
「もう少し!」
健太は歯を食いしばり、男を床に押さえつけたまま出口に視線を向けた。廊下の奥から足音が次第に近づいてくる――。
廊下の奥から複数の足音が響いてくる。その音に混じって、無線機から指示を出す声が聞こえた。
「侵入者発見!各階を封鎖しろ!」
健太は押さえつけていた男を一瞬だけ見下ろし、肩をすくめて笑った。
「残念だけど、俺はここに長居するつもりはないんだわ。」
そう言うと、相手の顔を拳で軽く一撃して気絶させると、素早く立ち上がった。イヤピース越しに梨央へ呼びかける。
「梨央!これ以上は無理だ。データの転送、終わったか?」
「ギリギリ間に合ったわ!USBに全部入れてるはず。」
「完璧!なら撤退するぜ!」
健太はUSBをポケットに突っ込み、廊下の突き当たりにある非常階段を目指して走り出した。その直後、後方からセキュリティチームが姿を現す。
「止まれ!動けば撃つぞ!」
振り返らずに健太は大声で返した。
「動かなかったら撃たれないって保証あんのか?!」
その瞬間、乾いた銃声が響き、壁のすぐ横に弾痕ができた。
「うわっ、本気じゃねぇか!」
健太は身を低くしながら走り、非常階段へのドアを勢いよく蹴り開けた。
非常階段は薄暗く、金属の手すりに古びた感触が残る。健太は駆け下りようとしたが、上の階からも別のセキュリティチームが現れた。
「上も封鎖かよ……しつけぇな!」
仕方なく、健太は手すりを掴むとそのままジャンプし、踊り場を一気に飛び降りた。
「クソ、何者だコイツ!」
上のセキュリティが驚愕の声を上げる中、健太は軽く着地し、そのまま階下へと全力で走り続けた。
階段を下る途中で、不意に下の階からも別のセキュリティが姿を現す。健太は息を吐きながらポケットから閃光弾を取り出し、階段の下へ転がした。
「目、やられるぞ!」
閃光弾が爆発し、眩い光が狭い空間を包み込む。その隙に、健太は手すりを滑るように下り、一気に相手の脇を抜けていった。