表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/8

「全員、それぞれの持ち場で動いてくれ。」

 東京湾・輸送艦「しらたま」の沈没現場周辺。

「じゃ、オレはちょっと泳いできますわ!」

 西崎 健太はおどけた口調でそう言うと、防水仕様の通信機を耳に装着し、黒いウェットスーツ姿で波打つ海面に飛び込んだ。


「慎重に行動しろ。見つかったらただじゃ済まない。」

 東雲 鷹が冷たい声で通信越しに告げるが、健太は軽く肩をすくめただけだった。


「大丈夫っすよ、リーダー。オレを捕まえられるヤツなんていませんから。」

 海中に潜り、沈没現場付近の様子を探る健太。散乱する船体の破片の中に、錆びた金属とは異なる異質な機材の破片を見つける。それを慎重に撮影しつつ、通信を入れる。


「鷹さん、これ、多分軍用だ。普通の輸送艦に積んでるもんじゃないっす。」

 同時刻、仮設指令室内

「……確かに不自然ね。」

 神崎 梨央はノートパソコンを前に、輸送艦の航行記録データを解析していた。その手元の画面には、膨大な数のログデータが流れている。


「沈没前の20分間、外部からのアクセスログが異常に増えてる。それに、これ……暗号化されたデータを発信してる形跡があるわ。」


「暗号化されたデータ?」

 東雲が彼女の後ろに立ち、その画面を覗き込む。


「ええ。この艦が、ただの輸送任務だけをしていたとは思えない。誰かが、国家機密に関連する情報を盗み取った可能性があるわね。」


 彼女の指先がキーボードを叩き続ける音だけが響く中、画面に暗号化されたファイルの一部が表示される。


「アクセスの出元を特定できるか?」

「やってみるわ。でもこれ、かなり手の込んだハッキングよ。」

 海上保安庁の仮設検視室

「さてと、これがどうして死因になったか調べるかね……」

 五条 剛は引き揚げられた遺体に向かいながら、軽く呟いた。その目は鋭く、手元の検視器具を正確に操る。


「……やっぱりおかしいな。」

 防護マスク越しに漏れる声には、独特の興奮が混じっている。


「普通の爆発じゃこんな毒物は出ないはずだ。それに、この痕跡……化学兵器の類だな。」


 検視レポートに手を動かしつつ、通信機を手に取る。


「鷹さん、これただの爆発じゃない。船に積んでた何かが原因で毒性のガスが発生してる。」


「つまり、その『何か』が沈没の鍵だということか。」

 東雲の声が通信機越しに響く。

 仮設指令室

 各メンバーの報告を受け、東雲は冷静に情報をまとめる。健太が発見した軍用機材、梨央の暗号データ、そして五条の毒物痕跡。全てが繋がり始めていた。


「……この輸送艦、『国家機密に関連する積荷』を運んでた可能性が高いな。」


「国家機密って具体的に何を?」

 梨央が問いかけるが、東雲は答えず、壁に貼られた現場写真に視線を向ける。


「それを知っているのは、退艦した連中か、このデータの送り先だ。」


「じゃあ、次の手はどうするんです?」

通信越しに健太が尋ねる。


「退艦者の素性を洗い出す。梨央、暗号データの復元を急げ。五条さん、毒物の成分特定を頼む。全員、それぞれの持ち場で動いてくれ。」


 東雲の指示に、メンバー全員が静かに頷き、それぞれの任務に戻っていった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ