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「クロスリンク、始動だ。」

 夜明け前、まだ薄暗い東京湾の水面は静まり返り、輸送艦「しらたま」が波に揺れながら停泊している。甲板上では、数名の乗組員が機材の点検をしているが、どこか慌ただしい様子だ。湾内には霧が立ち込めており、遠くから見た輸送艦のシルエットがぼんやりと浮かび上がっている。

 突然、船の内部で鈍い爆音が響く。甲板にいた乗組員が一瞬動きを止めるが、次の瞬間には耳をつんざくような大爆発が起こる。

 火柱が船体の中央から立ち上り、甲板を吹き飛ばす。破片が四方八方に飛び散り、水面を激しく叩きつける音が響く。輸送艦が徐々に傾き始める中、火の手はさらに広がり、黒煙が空へと立ち昇る。

 「なんだ!? 爆発だ!」と叫ぶ乗組員の声がかき消されるほどの轟音が続く。逃げ惑う者、救命ボートを下ろそうとする者。しかし状況は手遅れだった。

 湾岸警備隊の巡視船が異変に気づき、急行するも間に合わない。「あれは誰だ?」顔は霧の中で見えないが、輸送艦にある甲板の片隅に不自然に立ち尽くす黒い服を着た人物がいた。「しらたま」の船体は大きく傾き、そのまま水中に吸い込まれるように沈没していく。沈む直前、輸送艦の通信装置が奇妙な暗号信号を発信。湾内には火のついた残骸や油膜が浮かび、黒煙が風に流れていく。

 夜が明け、ニュースヘリが現場を空撮し、破片や油膜が漂う惨状を映し出す。画面には、「自衛隊輸送艦、爆発沈没。原因は調査中」の速報テロップが流れる。視聴者は謎めいた事件の始まりを予感する。


 早朝、まだ薄暗い東京のビル街。特別捜査部の本部「クロスリンク」のオフィスは、警視庁本庁舎内の最上階。一般的な部署とは異なり、機密性の高い装備と電子機器が並ぶ洗練された空間だ。

 中央には、リーダーである東雲 鷹のデスク。机上には整理された書類の山、デスクライトがかすかに光を落としている。

 東雲は椅子に深く腰掛け、前夜の事件報告書を無言で読み込んでいる。その表情にはいつもの冷静さがあるが、目は鋭く光っている。

 突然、彼のデスクの端に置かれた専用の通信端末が鳴り響く。端末に表示されるのは「緊急出動命令」の文字。

 東雲は端末を手に取り、指で操作して詳細を確認する。画面には「東京湾にて海上自衛隊輸送艦『しらたま』爆発沈没」の一報と、簡単な概要が表示される。彼の眉がわずかに動く。

「爆発? 事故じゃないな……。」

 直感で事件性を感じ取る東雲。彼は即座に席を立ち、近くのホワイトボードに状況を書き出し始める。

 東雲は通信端末でチームメンバーに連絡を取る。

最初に応答したのは西崎 健太。端末越しに、彼のやや寝ぼけた声が響く。

「リーダー、朝早くからなんスか?また厄介ごとっすか?」

「東京湾で自衛隊の輸送艦が沈んだ。事故じゃない可能性が高い。すぐに本部に集合しろ。」

 次に梨央と五条にも同様の連絡を入れる。梨央は短く「了解です」と答え、五条は少し冗談を交えながらも即座に準備を整える様子を見せる。

 全員への連絡を終えた東雲は、壁に掛けられた「クロスリンク」のエンブレムに目を向ける。そこには「全ての線を繋ぎ、真実を掴む」というモットーが刻まれている。

「この線を見逃すわけにはいかない……。」

 彼は上着を羽織り、廊下に出る。その姿は、背中に揺るぎない決意を漂わせている。

 エレベーターのドアが閉まる直前、彼が静かに呟く。

「クロスリンク、始動だ。」

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