第97話 着々と準備は進む
巷は迷宮省の変質で大混乱。
それと同時に、迷宮省の中林長官が、あのきら星はづきを目の敵にしているようで……。
彼女の所属するイカルガエンターテイメントを狙い撃ちで、締付けをきつくし始めた。
……と思ったら、呪術的カウンターで迷宮省職員がやられたらしく、手出しできないでいる。
「世の中はあまりにも混迷の度合いを深めている。国家の介入を力技でカウンターしていいんだ……」
『彼女は特別だろうね』
ザッコを通じて、大京さんと会話をする俺だ。
家の中では、マシロが当たり前みたいな顔をしてちゃかちゃか動き回り、お掃除などをしている。
平日は仕事で忙しいから、休日を使って色々お手伝いをするのだそうだ。
自分のために時間を使ってくれていいのにな。
『そんなきら星はづきさんだが、実は先程我が家に来た』
「なんだって!?」
『彼女と今後の方針について詰めてね。我が家の子供達も彼女のファンだったから大喜びだった。どうだい? どんな圧力にも負けること無く、あらゆる権力やしがらみから自由なデザイナーだろう』
「うーん、仰る通りで。とんでもないことになっているな……」
そんな俺も、せっかくあのきら星はづきとフレンドになったので、コラボ配信をしませんかという連絡を送っている。
彼女からは、
『あっあっ、わ、わ、分かりました! お仕事片付いたらスケジュール立てておきます!』
との連絡。
そりゃあ忙しいだろう。
世界最高の配信者の一人なのだから。
ここは今度、公の場で声を掛けてみようかな。
イカルガエンターテイメントも、きら星はづきの兄である元配信者、斑鳩が設立したものだ。
妹のために会社まで作ってプロデュースしている。
シスコンであろう。
そしてそんな斑鳩は、八咫烏の元相棒である。
大京さんとの連絡の後、八咫烏にも話を持ちかけてみた。
『ああ、大京さんの新アバターでしょ? 今ザッコで連絡もらって知った。この間はづきちゃんにお願いするって聞いてたけど、まさか本当に実行に移しちゃうとはなあ……! さすがの行動力だよ。これを機会に、斑鳩もまた僕と一緒に活動したりしてくれないかなあ』
「やはり元の相方は恋しかったりする?」
『するねえ……! 僕の隣に立てる男は彼しかいなかったからね。ああ、あの頃は楽しかったなあ……』
八咫烏が遠い目をしているのがザッコの音声だけからでも分かる。
彼の親友たるチャラウェイ曰く、普段はあらゆることに半分も力を使わずに挑んでおり、生きるための大目標を喪失した状態らしい。
最近、俺と関わったりしてから日々が楽しくなってきたようで……。
『そういうわけで、あいつを元気にするための企画でもあるんですよね、フォーガイズ!』
「なるほどー!」
最後はチャラウェイと連絡を取った。
彼の場合は本当にフットワークが軽いので、せっかくだから会って飯でも食おうという話になった。
『マシロちゃん? いいっすよ、連れて来ちゃおうよ。もう身内っしょ』
「そう言ってもらえると助かる~!」
「? 先輩、どこ行くんスか?」
「ちょっと出てチャラウェイと飯を食う。一緒に来なよ」
「行くッス!! 誘ってもらえて嬉しいー!」
ぴょんと飛び跳ねて喜びを表現するマシロだった。
社会人女性なのに女子高生のような喜びよう!
なお、普段は我が家に居候しているシノだが、最近の迷宮省の迷走を調べるべく外に出ている。
彼は様々な情報を集めたり、今の迷宮省の目が俺達に向かないように工作してくれたりしてくれているのだ。
帰ったら特上のお揚げを用意しておかねばな。
「魔導書はお留守番な。一冊だけ護衛でついてきてくれ」
『わっかりましたー! じゃあ私が』
『ん俺だ俺だ俺だぁ!!』
『フロッピーちゃんも行くんでやんすよね? だったらあっしらが行かなくても大丈夫。戦える魔法は教えてあるでやんす!』
おおっ、メンタリスからのフロッピーへの信頼が厚い!
『でもフロッピーちゃんを一人で行かせるのは心配……!! あっしも行くでやんすー!!』
うおーっと吠えながら、なんか魔力で幻を生み出す魔導書たち。
何をするのかと思ったら、なんと幻を使ってじゃんけんを開始した。
普通は相手の心を読めるメンタリスが有利そうなものだが、何も考えていないフロータと頭の中で炎が渦巻いていて全く思考が読めないイグナイト相手だ。
普通にじゃんけんで負けて悔しがっていた。
『イヤッハー! 当然の勝利。私です私です』
「よし、護衛をよろしくなフロータ!」
『まっかせてください! 主様といえば私ですからねー。不意のダンジョン発生も蹴散らして見せますよ!』
さすが魔導書随一の武闘派。
頼もしい。
浮遊の魔導書なのに武闘派……?
深いことは考えずにおくこととする。
マシロを伴い、電車で街へ繰り出す。
マシロはフロータと色々お喋りをしており、その内容は主に俺に関することだ。
俺が今まで配信していた裏事情を知りたいらしい。
そんな大したことはないのだが……。
「へえー! 先輩、苦労してきたんスねえ……! あたし、全然知らなかった。配信者ってそんなに大変なんだ」
「飯を食うための仕事とするなら、幾らでもこだわれるからな。妥協なき配信づくりがあのリスナー数を実現できる。面白い配信は口コミで、新しい登録者を連れてきてくれるんだ。こだわりまくって悪いことなんか何もない」
「ほえー……! あ、あたしも微力ながら、できるだけお手伝いして行くッス!」
「マシロは頑張りすぎるタイプだから、あまり無理しないでいいよ」
「いえいえ! ここは二人の家計のことッスし……!」
内助の功に全力を出すつもりのマシロなのだった。
チャラウェイと待ち合わせした駅に到着すると、改札の外で日に焼けたチャラい兄ちゃんがいる。
チャラウェイである。
「うーっす。また日に焼けた?」
「俺日焼けしやすくてすぐ黒くなるんすよね。ショウゴさんはあんま焼けてないみたいで」
「外出る時はいつもあの姿だからなあ……」
「なるほど、UVカット完備なのか。便利だなー。マシロちゃんもちーっす! もう身内なんだから色々話聞いてってよね。質問だってしていいから」
「あ、は、はいッス!!」
なんか緊張しているマシロなのだった。
『ま、分からなければ私が解説してあげますからね! なんでも聞いて下さい!』
おっ、フロータがマシロに先輩風を吹かせているではないか。
そんな俺たちは、現状とこれからの話をするために……。
行きつけの個室焼肉屋に向かうのだった。
飯を食う時、いつもここだなあ!
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