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TSして魔法少女になった俺は、ダンジョンをカワイく攻略配信する~ダンジョン配信は今、カワイイの時代へ~  作者: あけちともあき
夏の魔女バトル

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第78話 夏の日の遭遇

 スパイスになって、さんざんマシロでASMRの威力を試した。


「うああああ悔しい~! 先輩だって分かってるのにスパイスちゃんのASMRカワイすぎて限界化するぅぅぅ」


「お前結婚したらこれ毎日試すからな」


「ひぃー」


『ほんと仲良しですよねえー。よきかなよきかな!』


『ん女の方にぃ、魔法の才能が無いのだけが残念だぁ』


 そう。

 マシロは全く魔法の才能がなかった。

 本当に一般人なのである!


 あとは常識人でもあるので、配信者の受ける元となる頭のおかしさも足りない。

 コツコツ趣味でやっていくのが良かろうね。


「こんこん」


「おや、シノさんスマホをくわえて来てどうしたんだい? ほほー、何か事件が?」


 狐の姿で当たり前みたいに我が家を闊歩するシノ。

 横でマシロが倒れていて、天井近くをフロータとイグナイトが飛んでいる。


 フロッピーは充電中。

 賑やかな我が家だ。

 なお、俺は今、スパイスモードだ。


「どらどら? ふふーん。ほえー! えーっ!!」


 素で変な声をあげてしまった。

 おじさんモードでやってたら変な人。

 だがスパイスの姿ならカワイイのだ。


『なんですなんです主様? フロータ興味あるなー』


 ふわふわと肩の高さまで降りてくるフロータ。


『うおー、下の方が冷房効いてて涼しいですねえ! 天井近くはやっぱりイグナイトの領域じゃないですかー』


『ん夏はぁ! 俺の季節ぅ! だがぁ……湿気は勘弁して欲しいぃ~』


 本だもんね。

 さてさて、スパイスが驚いていたのは、異世界関連のニュースが大々的に載っていたからだ。

 そこには、『エルフ出現!!』とか書いてある。


「エルフ!? そんなまたまた。ファンタジー小説じゃないんだぞー」


『おっ、主様が正常化バイアスに陥ってますね! でもよく考えて下さい。主様は魔女の子孫で魔法少女に変身するじゃないですか! だったらエルフくらいいてよくないですか?』


「ほんとだ」


 俺は今、完璧に論破されたぞ。

 自分の存在そのものがファンタジーだったのだ。


 ほな、エルフはいるかあ。


『まあ私達が生まれた世界にエルフなんかいないのでおとぎ話かもですけどね!』


 ほな、エルフはいないかあ。


「まあまあ、先入観なしで見てみよう。あ、きら星はづきの動画につながってるんだこれ。あの娘、世界の変化の先頭に立ってるようなムーブをいつもしてるんだよなあ」


 そこには、ダンジョン化した東北の山村でエルフと遭遇する彼女の姿があった。

 女子高生配信者きら星はづき。

 今この国で……いや、世界でもトップクラスの配信者であり、数々の伝説を成し遂げてきた存在だ。


 そんな彼女がエルフと……出会ったぁ!


「動画の中のエルフの人、人気出そうだね。堅物な感じでくっころって言いそう。カナンさんって言うのかあ。カワイイねー」


 とてもエルフらしい外見のエルフだった。

 金髪碧眼、真っ白な肌で細身。

 現実の白人は割とゴツゴツした顔つきをしてるけど、エルフの場合はフェイスラインがアジアンな美女のそれで、目が大きくて鼻がそんなに高くない。

 各人種のちょうどいいバランスの所、いいとこどりしてますねこれ。


「あーっ、これは人気出るなー。アバターなしでこれでしょー? スパイスは予言する! エルフの配信者いっぱい出るよ!」


『ありえますねー! 素で魔法使えるみたいですし! 精霊魔法~? そんな原始的で体系化されてないものを行使して魔導書に抗えるとでも~?』


 おっ、フロータが対抗意識を燃やしている。

 ハードカバー部分を左右にシュッシュッと突き出してるのは、魔導書流のシャドーボクシングだろう。


「こんこん」


「あ、はいはい。シノさん迷宮省に一旦顔を出すのね。いってらっしゃーい」


「ええ、それでは~」


 シノが狐っ娘の姿に変身し、マシロが倒れている間にササッと家を出ていった。

 まだ、マシロに正体がバレてないんだよな。

 狐に似た犬で、何故か我が家に住み着いていると思われている。


『実際、これからは異世界とこちらの世界の境界線が揺らいでいくでしょうねえ』


「そうなの? つまりスパイスたちが前にやってた、異世界を通じて別の場所に移動とかがやりやすくなる?」


『なりますねー。そもそもダンジョンっていうのが異世界の風景をこっちに投影することそのものですから。そんなのがずっと繰り返されてたから、いつ世界同士の境界線が崩れてもおかしくなかったんですよね』


「そうだったのかー! スパイスたちは危ないところで暮らしてたんだねえ」


『そうなんです! まあ、この世界の術者や科学技術っていうのでこらえてたみたいですけど……。多分この一年でめちゃめちゃにバランスが変わる何かが起こったんじゃないですかね? なんかこっちの世界、神に比肩する大英雄でも生まれました?』


「知らないなあー」


 スマホの動画で、きら星はづきが「あちょちょ!」とか間の抜けた声を発しつつ、巨大で言葉を話すフクロウ頭の熊を『ウグワーッ』と真っ向から粉砕していた。

 相変わらず編集されているのか、それともリアルなのか分からない光景だ。

 こんな風に儚くモンスターはやられないでしょ?


『うーん、ゾッとしますねー。私、絶対この女の子とは会いたくないですねー!』


「そうなの?」


『この娘、ヤバいですよ! あらゆる魔の者の天敵ですよ! そんな予感がビンビンします! もし遭遇したら私、気配を消して一言も喋りませんからね!』


『ん俺もだぁー。あのゴボウで叩かれたらぁ、俺は消滅するぅ』


「そんなに!? そりゃあ大変だなあ。みんなを隠しておかなくちゃ」


『それと主様! 異世界との境界が曖昧になってきたということは……いよいよ決戦が近いですよー』


「ああ、精神の魔女ね! あいつ、異世界を使ってこっちに攻めてきてたもんねえ」


『ええ。精神の魔女は、多くの人間を支配して、そいつらに共通の夢を見させることでこれを通じて異世界に移動していると思われますね。私が知ってる精神の魔法で、世界に干渉する手段は夢を使った儀式くらいですから。だから、そろそろ本人がこっちに来ると思いますねー。主様、さんざんあいつの手駒を蹂躙してましたからね!』


「そうだねえ。もしかして精神の魔女、煽られ慣れてない?」


『相手の精神を支配するやつが、対等な関係で煽られたりすることってあると思います?』


 無いなあ!

 それじゃあ向こうは今、顔真っ赤な可能性があるってことだね!


「これはアンテナを高くして、精神の魔女到来をチェックしないとなあ……」


 迫りくる次なる決戦に、スパイスは兜の緒を締める心地なのだ!

 なお、まだマシロは回復しておらず、「脳が溶けるッス~。ああ~」とか言っているのだった。


 想像以上の威力だな、ASMR。


 

お読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
突然懐かしの世界ウルルン!
なるほど、だからはづきっちの視点からだと魔導書たちが喋ったりしてなかったわけですか……なるほど流石神に比肩しうる大英雄w
あっちで一切喋ってなかったの、ただ単にビビってただけなんかい! しかし、一般配信者()の目線だとはづきっちの理不尽っぷりがよう見えるなぁ。
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