第59話 ツーリングはここまで! ついでにファイアボール
「すみません、流石に限界が……」
「あっ、迷宮省カーに故障発生! さすがに大爆発で横転から無理やり復帰とかするとねー」
※『さもありなん』『ドラゴン、一瞬の登場で凄いインパクトを残していったなあ……』『スパイスちゃんがなんかとんでもないことをやった気もするw』『我々は聞かなかったことにした……!』
空気の読めるペッパーどもとお肉どもだなあ!
さてさて、ちょうどいいところで第二廃墟を発見。
ここに至るまで、現地の住人と一人も遭遇できてないので……。
「うーん、こりゃあこの世界の人間は全滅してるかもしれねえなあ……!!」
「やっぱり!」
「コンコン!」
案の定、廃墟は誰も住んでるはずがないのだった。
ただまあ、人間が作り上げた街にはモンスターがあまり頻繁に入り込んでこないようで。
ゴブリンみたいな小さいサイズのやつとか、来てもグリフォンみたいな小回りが利くモンスターくらい?
比較的安全だから、ここを拠点にして戻ろうということになった。
「こちらにゲートを開きます。先日スパイスさんで実験した長距離移動の儀式がシステム化されましたので、ここから地球に到着できれば、スパイスさんのご自宅を使う必要もなくなりますね」
迷宮省の人が説明してくれる。
なるほど、それはありがたいかも。
「スパイスにも一応プライベートというものがあるからねー」
※『幼女の日常に国家が介入していたのか』
「言い方ぁ!」
というわけで、異世界ツーリングはここで解散ということになった。
バックで迷宮省の人たちが魔法陣を描き、ここを拠点にしようとしている。
多分、廃墟から廃墟に移動することになるんだろうなあ。
それに、日本の乗り物が速度を出して駆け抜ければこの世界のモンスターたちに追いつかれることは早々なさそう。
「じゃあよスパイス! ここで魔法の練習して行こうぜ! 確かファイアボールが使えるようになってるはずだろ?」
「忘れてた!! 毎日忙しくってさあ……。チャラちゃんお付き合いお願い!」
「オッケー!」
チャラウェイが距離を取る。
的になってくれるつもりらしい。
難燃性のマントを装備してる。
前のフレイヤとの対決配信で、難燃性の布とかは配信において対炎として有効だという常識が広まったからね!
「難燃性だぜ!!」
こうチャラウェイが宣言するだけでかなり燃えづらくなる。
※『キャッチボールかな?』『魔法を受け止める訓練の空気じゃないのよw』『チャラウェイはお兄ちゃんだねえ』
「よっしゃー!! いっくぞー!! 炎の塊集まってぶっ飛べ! ファイアボール!!」
スパイスが掲げた指先に、うおおおお! 炎が集まってくるぞ!
で、これには核があって、それは炭なのだ。
指の先端に浮いている炭を、遠心力で投擲するイメージ!!
そうすると放物線を描いてファイアボールが飛んでいき……。
ガツーン!とチャラウェイにぶつかった。
※『ウワーッデッドボール!』『痛い痛い痛い』『熱い熱い熱い』『やったか!?』
『いや、煙が晴れてチャラウェイが……!』
「ウグワーッ! 炎は全然だけど当たるとちょっと痛いぜこれはーっ!!」
ただ、ぶつかった時点で核の炭が粉々になるので、ファイアボールも霧散する。
これ、本来なら核と同時に炎もバラけて、周辺に火を撒き散らすことになるのだ。
「ダメージは低そうかな……?」
『んファイアボールはぁ、相手が魔力を有しているほどぉ、威力を発揮するのだぁ!!』
「あ、なーるほど。チャラちゃん魔力ゼロだから」
『炭をぶっつけた程度の威力だぁ』
それは大したことないのも当たり前だ。
つまりこの魔法、一般人には全然効果が無いのだ。
炎の魔法として代表的なのに、表の歴史では語られることがなかった理由が今明らかになった!
魔女同士の喧嘩用なのね。
でも、魔力ありの相手に通じるならダンジョン配信では大活躍することだろう。
だって魔力のあるモンスターと怨霊とデーモンしか出てこないもんね。
……おっと、いかんいかん。
あまりに長い間スパイスでいたので、どんどん意識が引っ張られていっている。
「えー、そう言うわけで、今回の配信はここで終わり! 大スペクタクルだったねー! でもツーリング楽しいからリベンジするかも! それじゃあまたねー!!」
※『おつー!』『ばいばーい!!』『今回も中身の濃い配信だった』
『スパイスちゃんはダンジョン以外の外出配信も多いよねー』『これを外出配信と言っていいものかどうか』
配信終了!
魔法陣も同時に完成し、光りだした。
「この世界の魔力を使って運用します。前回の実験で得られたデータと、何箇所かで試してみたので、これで使えるはず……。えいっ!」
職員さんが魔法陣に飛び込んだ。
姿が消える。
そして別の職員のスマホに連絡が来た。
「あっ、彼は業平橋駅に到着したようです! なるほど、ある程度、異世界での移動距離と現実の移動距離がリンクしているようですね……。いや、それにしても移動距離の数倍以上は離れた場所に飛ぶことができる。この法則性が分かれば……」
難しいことを考えてるなあ。
「じゃあスパイスたちも帰りたいんだけど、ここに飛び込めばよろしい?」
「ああ、はい。帰りの電車賃は迷宮省に請求して下さい。こちら請求先です」
「あ、どうもどうも。そうだよなあ、帰りは自宅ってわけにいかないもんなー」
便利なような、不便なような……。
「それじゃ、帰りますか」
「うっす、おつかれっす!」
俺とチャラウェイで元の姿に戻り、魔法陣に踏み込む。
シノもムラカミさんに変身だ。
「では私も……」
「ムラカミさんは一度迷宮省に出頭して下さい」
「ええ……」
さらばムラカミ!!
うちに入り浸りすぎたな……。
こうして世界の壁を超え、現実世界に降り立つ俺とチャラウェイ。
「なるほど、確かに業平橋……」
「知ってます? ここってダンジョン禍がなければでけえタワーが建ってたらしいんですよ」
「あー、そうらしいですね。詳しいんですか」
「俺の先輩配信者が、ここでダンジョン化した工事現場を攻略しまして……」
そんな話をしながら、男二人、普段降りない駅にせっかく来たということで観光していくのだった。
お読みいただきありがとうございます。
面白い、先が気になる、など感じられましたら、下の星を増やして応援などしていただけると大変励みになります。




