第360話 最終決戦準備!
スパイスは元社会人ですし、きちんと仕事をやってた側なので……。
事前準備というのを怠らないんですねー。
ここは我が家から行ける異世界。
アネットの目も耳も届かず、安心安全に様々な活動ができるぞ。
「これはあえての配信外なのだ。最終フォームのチェックと、対アネット戦の段取りをするぞー。もちろん、一人で敵討ちをするなんていうセンチメンタリズムはスパイスにはなぁい。協力してもらえる人全員の手を借りてぶっ倒すぞー!!」
『うおー! それでこそ主様! 目的のためなら卑怯にも徹する~!』
「そうだぞ。プライドにかまけて死んだら元も子もないぞ! まだ赤ちゃんな子どもたちとか奥さんとかいるし」
フロータと一緒に盛り上がるのだ。
『ちなみにマスター、ついに日本にもアネット本体の出没情報があります。八百八狸の皆さんが交戦し、一部領域を破壊されながらも撤退。能力の一端を掴んだようです』
「ほうほうほう。続けて続けて!」
フロッピーからの重要な報告だ!
『アネットは相手の権能を一時的にストップできます。つまり……八百八狸相手に変化の能力をストップしたわけです。これで彼らは総崩れに』
「なーるほど。それってつまり、どういうことが想定されるかな? 例えばスパイスの魔法が全て一時的にストップされる可能性……。あるね!」
『ひえーっ! 昔はそんな力なかったのに! ズルですよー!』
抗議するフロータ!
この場には全ての魔導書がやって来ており、さらにホムラとミナトも見学で来ている。
もうすぐ一歳にならんとするうちのちびたち~。
スパイスの姿を見ても、パパだときちんと理解してるみたいだね。
さっすが魔法少女の子どもたちなのだ。
そろそろ喋りそうだし、パパと発するかママと発するかをマシロと競っているところだ。
「ってことは、スパイスはその対策も立てないといけないわけだ。現場は多分フォーガイズで挑むことになる……」
『んそうだなあ。手を抜いたらぁ、こっちがあっという間にやられるぅ。最後の魔女はそういう相手だぁ』
『うちのマスターたちを父無し子にしないためにも~! 主様は頑張ってもらわないとぉ! 全力ですよぉ~!!』
『ということは基本的に、インフィニットスパイス+パワードのモードで戦うでやんすね? で、隠し玉を用意しておくと……』
『隠し玉ざんすか? 隠し玉というと……』
『ま、決まってるわよね! アネットの一番の計算外がスパイスのとこにはさいしょっからいるんだから!』
『頼りにしてるわよぉ~!! フロッピーちゃーん!』
『はい、不肖フロッピー、大役を拝命しました。実はこっそりとマスターの変身フォームも考えてて……』
おおーっとどよめく、スパイスと魔導書たち。
ではアネットを想定して、一通りやってみようという事になったのだった。
まずは六冊の力を集めて~。
インフィニットスパイス!
「おぉ~!」
「まうー!」
ホムラとミナトが大喜びして手をパチパチしている。
ははは、どうだ、パパかっこいいだろー。
いや、魔法少女的には可愛いんだけど、ここはかっこいいで行かせてもらいたい。
そしてここに~。
『アタシが加わるわけねん! うおぉーっ! 黄金の力を受け取れぇーっ!!』
パワード合流!
リボンの裏面が金色に輝く!
さらにあちこちに金のアクセサリー!
「インフィニットスパイス・オーバーロード! よっしゃー! これだー!」
スパイスの最強モードと言っていいだろう。
この形態で、基本的にはアネットと決着をつける。
だけど向こうの取っておきである、相手の権能をストップする力を使われたら……。
「本来の魔女なら打つ手無しなんだろうけどねー。ところがスパイスは違う! えーとフロッピー。フロッピーが使う魔法って分類としては……」
『はいマスター。私の使う魔法は、古い魔法に酷似した効果を発揮しますが、現代魔法として分類されます』
つまり、フロッピーは最新の魔導書であり……。
魔法ではない魔法に関する専門書ということになる。
これはアネットがカバーしていない範囲だ。
現代魔法だって、もみじちゃんのような達人がおり、とんでもない強さを発揮できることが分かっている。
アバターを通じて放つ魔法で、本来なら画面内やVR空間でのみ力を発揮するゲーム的効果。
しかし、同接による応援が力を持ち、信仰にまで高まるこの世界において現代魔法は実際の魔法として効果を現すわけだ。
一般人に使ってもそこまで高い効果はないけど、これが少しでも魔のものの方面に関わると絶大な力を発揮する!
「では変身解除ー!!」
わーっと飛び出す魔導書たちなのだった。
フロータもいなくなると、スパイスは元の姿に……なるわけなんだけど、ちょっとの間だけスパイス状態が維持されるんだよね。
光るワンピース姿みたいな、スパイスのマテリアルフォームと申しましょうか。
『参りますマスター。メタモルフォーゼ!』
フロッピーが現代魔法の発動を宣言する!
スパイスの体をアバターが包みこんだ。
それは、なんと黒いエプロンドレスのスパイスなのだ!
なるほど、黒胡椒スパイスだ!
差し色に蛍光紫や蛍光の緑が入ってる。
ちょっとゲーミングだ。
「よーし、この姿を……ゲーミングスパイスと名付ける! 取っておきの隠し玉だぞ!」
あとはこの形態が馴染むように、練習あるのみなのだ。
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