第359話 なぜスパイスはネチネチ魔女を包囲するのか!
『しかしスパイス、君は何気にひたすら策を弄し、敵をじっくり追い詰めていくスタイルだな。普段の配信スタイルは直感的に見せてはいるが』
VRに途中で合流したスレイヤーさんにそんな事を言われたのだった。
「そうだねー。もともと、石橋を叩いて渡るスタイルなんで! 後は……せっかく社会性があるので、社会の力を使って反社会的なのを叩き潰そうかなって!」
スパイスとしては、うちの祖母をやられた怒りは忘れてないんだよねー。
ってことで、魔女たちは本来の力を発揮させずに片っ端から叩き潰したりしてたわけで。
まあ、みんな半分自滅してたんだけど。
強大な力を得たアネットに関しては、でもそれってあなた個人の力ですよね? という方向性で、世界の力を借りて周りからじわじわと包囲していく方針なわけですよねー。
「やっぱりさー、こっちが不利な状態で一発逆転に賭けて戦うって非合理的じゃん? スパイスにははづきちゃんみたいな超絶パワーとか意味のわからない運命の加護とか無いわけで」
『彼女の真似は誰にもできないだろうな。唯一無二だったからこそ、この世界を救えたのだと思っている。というか、ちょこちょこ英国で活躍してた謎の女子大生って彼女だろう?』
「多分、通学の途中とかで偶然尖兵の群れに遭遇したので、『ちょっと通りますよ……あちょー』って全滅させたんだと思うなあ……」
彼女の場合、策がいらないからね!
で、そんな彼女を持ってしても策でハメる必要があった魔王がやばかったわけで。
「まあ、凡人たるスパイスはね、徹底的に策略で相手をハメてハメて、それで力を削ぎまくって対処していくわけだけどね」
そんな話をしていると、普賢真人がインしてきた。
おや?
中国のシンプルなアバターの人が一緒だ。
黒髪の丸い頭で、なんかカンフーしそうな服装の……。
『リー・ダオロンです。よろしく』
袍手をして挨拶してくる。
うおー、カンフー系配信者……。
『スパイスくん、彼の戦い方は後でアーカイブを見たほうがいい。大陸トップクラスの豪傑の一人だぞ』
「そうなの!? 楽しみにしておく!」
『おうおう。それでスパイスよ。わしがここに来たのは他でもない』
仙人系童女姿の普賢真人。
完全にその姿気に入ったね!?
ボイチェンで可愛い女の子の声になってる……。
「なになにー?」
『哪吒太子が起動したぞ! 目覚めてすぐに、マントウを肉餡につけて三十人前平らげたわい』
「うーん、キャラ通り」
『彼女のキャラクターは俺がインプットしました。普段から動画やアーカイブを編集していた技術が生きましたね』
自分の動画やアーカイブを編集するカンフー系配信者……?
妙だな……。
『彼の動画の末尾にあるNG集は面白いぞ』
スレイヤーさんから謎の情報が!!
カンフー系配信者の動画の末尾のNG集!?
とにかく、普賢真人は哪吒太子を連れて近日来日予定。
そして世界の情勢的には、英国からアネットが追い出され、カナダに集結したアメリカ配信者とガーディアンズがそこでアネットの拠点を破壊。
アフリカは各部族とか国がバラバラだったのを、一旦若い世代の最強配信者であるタリサとまだ見ぬ強力な配信者たちが力で統一。
虱潰しにアネットの拠点を潰していっているらしい。
いいぞいいぞ。
そして同時多発的にあちこちで尖兵をすり潰しているのだ。
ははははは、目が届くまい!
一度に色々な事が起きて大混乱だ。
ワンマンで何もかもできると思うなー!?
『今、スパイスさんは魔王無き世界の旗頭みたいなものですから。ぜひ我が国にも遊びに来て下さい』
リーさんに勧誘されてしまった。
じゃあ、アネットぶっ倒したら行くね!
VR空間から帰還!
スレイヤーさんに教えてもらった、リーさんのアーカイブを見て爆笑するなどした。
敵の前で並べられたテーブルが!
ハシゴが!
長椅子が!
大きな立て看板が!
全て戦闘ギミックになり、戦場になり、言うなれば古い時代のカンフーコメディ映画アクションな彼の戦いを構成している!
初めて見るタイプだ。
人間、魔法なんか使わなくても全然強いんじゃないか……!?
ちょっと魔法少女としての根幹が揺らぎそうになるスパイスなのだった!
『劇場型の配信者でやんすねえ。己の領域に相手を巻き込み、ペースを奪って勝つ。主様もこのタイプに近いでやんすよ? 相手のやりたいことをやらせないでやんしょ』
「それはそうだけど、それを魔法抜きの大道具と小道具とカンフーだけでやるのは話が違うでしょ」
ちなみに後日、イラちゃんから聞いたんだけど、リーさんは普通に人類最強十傑に入ってるそうな。
そ、そうだったのかー!!
あのカンフー映画アクション、人類最強クラスなのかあ!!
「こーれはスパイス、身の振り方を考えないとなあ。いや、魔法は使い続けるけどさ。我が子たちとか次世代の配信者に、魔法に頼り切るなよーって教えてあげないと……」
なお、イラちゃんが認めた人類十傑、分かってるだけだと……。
スレイヤーさん、ヤタさん、ライブダンジョンのDizさんに、イカルガエンタ社長の斑鳩、そしてリーさんで五人まで会ったな。
あと五人もあんなとんでもないのがいるの?
なお、イラちゃんからするとスパイスは『どっちかっつーとイラの側だから、もう人類に入れてないぜー』だそうだ。
おっと、カンフー映画配信者のアーカイブ見てたら、本題を忘れるところだった。
今のところ、アネット包囲網は順調に狭まりつつある。
結果的にアネット関係者に接触する人が増えて、その情報がスパイスに集まってくるってわけ。
近いぞ、決戦。
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