第358話 包囲網完成したぞ!
ついにアネット包囲網が完成した!
これ、基本的にVRロビーに降りてきてそこで直接お喋りして連絡を行うっていうスタイルなんだよね。
アーカイブがそのまま記録になる。
文書ベースのやり取りではなく、しかもアバターを纏って行われる通信なのでアネットには対応しきれない。
彼女が理解できる科学文明のやり方では追いつけないようにしてるんだよね。
これに、全世界の魔女包囲網に協賛する機関が全員乗っかってくる。
つまり、世界中の構成員がVR空間に集まり、みんなそれぞれの趣味のアバターを被ってぺちゃくちゃお喋りしていることになる!
『いやー、すげえ世界になったもんだよなー』
「イラちゃんじゃん。また授乳カフェから出てきた」
『やめらんないね。なお、カフェでお相手してくれる人の性別を詮索するのはタブーだぞ』
「奥深い世界だ。でもイラちゃんも色々動いてくれてるじゃん」
『そりゃねー、イラはほら、ベテランだから闇の世界で顔も効くからねー』
「スパイスも日本だと裏の世界で顔が効くようになってしまった」
『あー、この国の妖怪たちねー。術師もスパイスちゃんの担当でしょ。やるねー』
お互いに健闘を称え合っていたら、各国の連絡員がわいわい集まってきた。
『あっ、黎明の魔術師団の者です! こっちでアネットの分身に発信機を取り付け成功しまして、アジトの一つを解明しました! ついさっきです!』
『大英帝国騎士団です。アジトへ突入開始しています』
「おおーっ! 動きが早い!」
VR空間でのやり取りとリアルタイムで連続して、現実が動いていく。
英国ではブラックナイトとホワイトナイトの二大配信者が参加し、アネット討伐が始まってるらしい。
こっちは謎の女子大生が魔女の軍勢を壊滅させたので、かなり手薄になったらしい。
アネットはこのアジトを放棄するつもりだった可能性もあるけど、人類側の反撃で拠点を奪われるっていう精神ダメージを与えておかないとね!
ロビーに大画面が展開され、各国の連絡員たちと一緒にわあわあ騒ぎながら配信を見る。
うおー!
いけいけ大英帝国騎士団!
なお、拠点がある場所がアイルランドだったので現地の激しい抗議があったらしいんだけど……。
間にルシファー議員が入って素早くとりなしたらしい。
そんなわけで、白黒二色の改造バイクが突っ走る!
二人とも、機銃が内蔵されたランスを使って戦うスタイルなんだよね。
ブラックナイトはホワイトナイトのお姉さんで、黒いライダースーツのセクシー美女。
ランスと大型拳銃を武器に戦うぞ。
黒いバイクに様々なサイバー機器を搭載していて、最新のVR技術を現代魔法の応用で実体化させて行使する。
ホワイトナイトは対魔王の勇者パーティオーディションにもいたね!
英国の八咫烏みたいな男で、スパイスが知る限りあらゆる騎士っぽい武器のエキスパートなのだ。
金髪碧眼のスラッとした白人男性で、凄く絵になる男だぞ。
もう尖兵とか分身はネタ切れというか、全く出てこない。
どこかの女子大生が凄くいい仕事をしてるな。
出現するのは、アネットが召喚したらしいモンスターたちだ。
こいつらがもがーっと暴れるのを、英国騎士団が仕留めていく。
アジトは岸壁に作られた古城みたいな見た目だったんだけど、その中はダンジョンになっていたようだ。
無限に続く石畳の上を爆走するバイク!
飛びかかってくるガーゴイルの群れ!
これを貫き、薙ぎ払うランス!
騎士団の人たちも銃を使って攻撃しているのだ。
武器は全部聖別されているようです。
そして最後に登場する、アジトのボス!
めちゃくちゃパワーアップしたっぽい分身だ!
「うおー! いけいけー! やれー!」
思わず応援してしまうのだ!
この様子は全国で配信されてるらしいので、世界中のコメントが流れている。
魔女アネット、完全にパブリックエネミーとして認識されつつある。
脅威として広まるとパワーアップしてしまうから、そうなる前に全世界からワーッと押し寄せてすり潰して、やっつけてしまおうという作戦!
これがついに実を結んだわけだねー。
スパイスが種まきをし、アネットもなんか全世界に喧嘩売っちゃってたので、世界中がやる気になった。
魔王を相手にして、一つになりやすくなっていた世界を前に!
やっちゃったねえアネットくん……。
『スパイスちゃん、全部仕組んでた?』
「八割くらい仕組んでたね。スパイス一人で相手するのって洒落にならないし、家族を狙われたらヤバいじゃん。だから、全世界からアネットが狙われる方向に持っていこうと思ってたんだけど、そしたらあいつが勝手に世界に喧嘩売ったから」
『持ってんねー! コツコツ長い戦いになりそうだったとこが一瞬で終わったでしょ』
「終わったねー。後は決戦だけど、世界中で追い立てられるとこっちに来ると思うんだよね。そこで仕留めるよ! あるいは……そうせざるを得ない状況に持ってく!」
うおーっとイラちゃんと盛り上がるスパイスなのだった。
実際、アネットみたいな愉快犯は世界的にもとても迷惑なので、こういう包囲網は重要らしかった。
それに、お陰で各国の思惑を超えて、連絡し合うシステムができたしね。
あえてVR空間を通して雑談で連絡するという非効率性が、盗聴やハッキングを難しくしているわけだ。
世の中、効率よりも冗長性の時代ですよ!
「ってことで、対アネット戦最終幕、行ってみますかー!」
お読みいただきありがとうございます。
面白い、先が気になる、など感じられましたら、下の星を増やして応援などしていただけると大変励みになります。
 




