第356話 アメリカラストは空中戦!
アネットの分身は、磁力みたいなのを発して金属を召喚し、これを纏ったでかいゴーレムになったり。
あるいはヤバい色にギラギラ輝く槍を何本も召喚して、こっちに撃ち出してきたり。
睨みつけることで、相手に爆発する効果を押し付ける謎の魔法を使ってきたりだね。
うーん、分身と言えど恐るべき大魔女。
一つ一つの攻撃が、並みの配信者なら一発で戦闘不能配信引退になるレベルの洒落にならないやつだ!
でかいゴーレムが振り回す腕から、鉄骨や鎖が伸びて空間を埋め尽くす!
だけど、これはメカはづきが受け止めた。
腕から出る引力光線で、物理攻撃全てをホールドしている!
『ステイツの平和を守る、ガーディアンズの出撃です。正義の鉄槌を受けるがいいでしょう。かーっ』
あっ、口から猛烈な火炎を吐いた!
炎にあぶられて、ゴーレム化した分身が『ウグワーッ!!』と叫んでいるぞ。
で、槍を撃ち出してくる方は、ダークチャイルドが真っ黒な炎を呼び出して防いでいる。
『どうやらこれは、放射線の類を物理化したものだぞ。地上でこれだけのものを作り出すには、火山地帯などに繋がりを持つ他ない。吾輩が見るに、この魔女の拠点は地上にはないぞ』
おおーっ!
戦いながら相手を分析する!
ダークチャイルド、クレバー。
多分、これが彼の戦闘スタイルなんだろう。
で、その間にベルゼブブが蝿の眷属を呼び出して、超音速で相手にぶつける攻撃を行う。
『蝿程度の質量でも、この速度だと立派に弾丸なんだよね。まあ、私はバーチャルゴボウを超える純度のゴボウを持つと自分がダメージ受けるから、オリジナルより攻撃力が劣るのは勘弁していただいて……』
あれが噂のバーチャルゴボウ!?
なんか電子っぽい見た目のポリゴンなゴボウで、分身をぽかぽか叩く。
『ウグワーッ!!』
分身には通じてる通じてる。
さて、スパイスは相手を爆発させる睨み攻撃をしてくるやつが相手だ!
『三冊で対抗するわよぉー!』
『ふっふっふ! 楽勝です!』
『あっしの精神魔法がどこまで通じるでやんすかねえ……』
メンタリスだけ不安げだ!
『お姉様、お兄様、私が他の皆様の中級までの魔法ならエミュレート可能です』
『『『おおー!!』』』
フロッピーの申告に、どよめく魔導書たち!
今、爆破睨みを避けまくってるんだから後にしてくれないかな?
「視線の先に一定時間留まっていると爆発するっぽいねこれ。動き続けないといけないのストレス~!! 決めポーズできないじゃん!」
『そうは言いながらも主様、的確に回避し続けているようですねえ!』
「考えながら回避してるんだよね! 目線が追ってくる動きってあるから、これを避けたり、わざと交差するように移動したりして! うおー!」
『魔法を自律発動します。パワードお姉様、力を貸して下さい』
『分かったわよぉフロッピーちゃん! うおぉぉぉーっ!! 受け取れぇーっ!!』
『スプリットファイアボール生成。射出します。ウォーターガン生成。放射します。プリズムビーム発射』
スパイスの真横に浮かんだフロッピーから、次々と魔法が放たれる!
そのままだと分身に通じるかどうか怪しい威力だけど、それがパワードで強化されるから十分な威力だ!
『ウグワーッ!!』
次々に魔法攻撃を喰らい、分身は睨み攻撃をする余裕がなくなってきているようだ。
「いいぞいいぞフロッピー! 万能の魔導書化しつつある」
『器用貧乏の魔導書です』
「地力を上げていこうねえ! おらーっ! とどめだーっ!! パワードマフラー!!」
『あらーっ! アタシの力をそのまま用いるのー!? ピーキーな使い方ねーっ!』
パワードの金色のマフラーで分身に接触し、そこから……。
「パワード・ショック!!」
精神魔法のショックを叩き込む!
いっちばん基本的な魔法で、精神に衝撃を与えるだけのもの。
いわゆる、ホラー映画でびっくりさせられるようなああいうやつ。
ジャンプスケアって言うんだっけ?
それをパワードでひたすら威力を拡大したやつなので、単純明快にして誰にでも通じる!
『ウグワーッ!?』
分身は絶叫しながら吹き飛んだ!
自分の力が暴走したんだね!
それを~!
「パワードフライト! フロッピー、炎召喚よろ!」
『コールファイア! マスターの体に纏わせます』
「おっしゃー! 突撃! スパイス・ファイアバード!」
実際に当たるとこっちもダメージが大きそうなので、超威力にパワーアップさせた炎だけを相手に叩きつける!
ショックの余波で防御できない分身が、これをもろに食らった。
『ウグワーッ!?』
燃え上がるぞ!
魔法抵抗どころではないところに、パワードマフラーでぶん殴りながら……。
「ラピッドフォール! 超高速で落っこちろおらーっ!!」
猛烈な勢いで分身が加速。
燃えながら地面に叩きつけられ、クレーターになったのだった。
もちろん、相手は跡形もない。
「よーっし! 配信なしでここまでやれるなら上出来でしょ」
『やりますねー主様! 限られた魔導書とフロッピーちゃんを応用して、分身レベルなら全然いけますね!』
『あっしら魔導書、冊数を揃えることで力が上がるでやんすからねー』
『マスターは、肉体を直接強化した方がいいわね! 今度、アタシを纏う練習しましょ!』
「アクションスパイスモードを常時できるようになるやつ!? そうか、そろそろスパイスも地力を上げねば……」
うーんと唸る後ろで、メカはづきとベルっちが背中合わせで回転しながら、二体の分身にビームと蝿の嵐みたいなのを連続衝突させて倒すところだった。
ダークチャイルドは黒い炎で、分身の動きを止めているね!
『スパイス。吾輩の方でもあの魔女の居所を突き止めておくぞ』
「ほんと!? よろしくー!!」
いつまでもアネットが追尾してくる状況、端的に最悪だからね!
決着の時が迫る……いや、迫らせる!
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