第354話 カンザス到着!
どこまでも広がる農地~!!
春の種まきや、苗を植えたりが終わり。
緑が芽吹き始めた季節だ。
「緑の絨毯が広がってる!」
「でしょー。な~んにもないけど、他では見れない光景があるんだよねー。いいとこだよ、カンザス!」
ウィンディが自慢げだ。
しかし、こんな雄大な農地が広がるのんびりした風なところから、どうして色欲の大罪たるクシーが誕生したんだ……?
スパイスの素朴な疑問に、クシーが笑顔で答えてくれた。
「いい、スパイス? 何も無いっていうことは、そういうことしかやることがないってことなんだよ……」
「あー」
「こんなこと言ってるけど、クシーってネットで流れてるエッチな動画とかコレクションしてたら色欲の大罪に取り憑かれてたからね」
「ウィンディ~!!」
なんかクシーが真顔になってウィンディをポコポコ叩いている。
「あはははは、痛い痛い!」
けらけら笑うウィンディなのだった。
ははーん、耳年増色欲……!!
想像力は無限大って言いますからね。
こうして飛行機は州都トピカの空港に着陸。
なんかクシーのママが迎えに来てたので、彼女の車に乗せてもらうことになった。
「まあまあ! 日本からお友達と二人で!? まだ子供なのに!」
クシーのママはちょっと太っちょで豪快な人だった。
どうやらアバターを被って幼女化している成人男性という概念が理解できないようだ……。
まあ、気持ちは分かる。
こうしてクシーのご実家に到着。
農家さんなんだが!!
この日のために、最高の牛肉をゲットしてくれたようで、クシーパパが半日掛けてじっくりローストした至高のバーベキューをいただくことができたのだった!
クシー、四人兄妹の末っ子だったのね?
クシーの兄二人は結婚してて、奥さんと子供を連れてきて、クシーのお姉さんは彼氏とカウントダウン。
そんな田舎の一家に生まれた天才児がクシーで、飛び級で大学に入って、しかも奨学金で家には一切負担が掛かってない。
毎日クシーのママが、片道80kmの道のりをマンハッタンのカンザス州立大まで送って通学しているんだそうだ。
クシーが友だちを連れて来るということで、こんな大騒ぎになっていたのだった。
これは……陽の者一家に生まれた陰の者であるクシー、色々あったんだろうなあ!
いやあー、楽しかった。
堪能した。
クシーがずっと本名で呼ばれてて、なんか妙にもじもじしてるのが新鮮だった!
家では、色欲の大罪を継承したことは隠してるっぽい。
お姉さんに、いい男紹介するわよ、とか言われてブンブン首を横に振っていた。
「ね?」
「なるほどー。ウィンディの言った通りだー」
しばらくはこれでクシーをいじれそう。
家族の中にいると、クシーが年齢相応の子供に見えるなあ。
大人びた飛び級のセクシー天才児! って感じのイメージと大違いだ!
なお、スパイスはクシーのお兄さんたちの子供に同年代だと思われて、なんか遊びに誘われたりしたのだった!
うおー!
魔法少女の力を見せてやるぞー!!
こうして、クシーの家で一泊。
そこからクシーママの車に乗せてもらい、ウィンディの実家まで行くのだ。
「見えてきた! あそこだよー! ようこそ、リトルアップルへ!」
マンハッタン市は、ウィンディとクシーが通うカンザス州立大学のある街。
住人の大部分は州立大の関係者なんだそうで……。
ウィンディの家族も州立大の職員だとか。
インテリ一家だったかー。
で、そこに生まれた異端児である大伯母が魔女になって、勝手にカリフォルニアの方で大罪と戦って死んで、スノーホワイトがウィンディの手に渡ったと。
車から降りると、そこはウィンディのおうち。
彼女の家族に挨拶などしていると、ウィンディのママ(いかにもインテリ~って感じのスラッとした眼鏡の女性)が、
「あらいけない。スーパーセルが発生してるらしいわ。みんな家の中に入って」
と促した。
おおーっ、遠くでありえんほどでかいまん丸い雲が発生してる。
カンザスはよくああいうのが生まれるんだなあ。
ウィンディの部屋に入って、ここでようやく魔導書解禁!
『うおーっ! やっと自由ですよー!』
『いやあー、普段とは違う土地を見てると新鮮でやんすねえ。欧州より何もかもがでかい!!』
『住みよさそうでいいじゃない! 東欧からロシアを練り歩いてたけど、どこもここよりは大変そうなとこだったわよぉ!』
『そうでしょそうでしょ! カンザスはいいとこなんだから!』
スノーホワイトが自慢げだ。
すっかり、ここがおらが里になっているな。
魔女アネット対策が終われば、スノーホワイトはまたここに帰って来る予定なのだ。
今回のアメリカ行き、目的の一つにスノーホワイトがウィンディの顔を見る……みたいなのも含まれてるんだよね。
これで目的は達成!
「ちなみに、カンザスだとそんなにダンジョンが発生してないの」
「ほえー」
「近くにボウリング場ができて、それから凄く治安が良くなって」
娯楽が世界を救うパターンだ!
では、結局カンザスでは、友達の家を巡っただけになったね!
「フロータ、どんなもん?」
「あいつの気配はないですねー。っていうかアメリカ広すぎて、あの魔女も手出しがしづらいのかも知れません! 派手な都市しか襲ってなくないですか?」
「なるほどぉー」
ワンマン経営の弊害が出たか。
一人でやってるから、目が届かないところとか、そもそも知識にない土地には攻撃ができないのね。
とんでもない穴を見つけたぞ。
強大だが、極めて雑な敵かも知れない。
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