第345話 情報収集の後、出国!
あっという間になんか予定が決まってしまった。
スパイス、アメリカへ!!
メカはづきのお招きを受けてですね。
アメリカではどんな感じでやってるかの視察に行くことになったのだ。
なお!
同行者がいます!
『いやあー、当時の私ははづきと一心同体だったので、単身でアメリカに行くのは始めてなんですよね』
「ベルっち!」
そう、きら星はづきから分離した暴食の大罪、ベルゼブブだ。
今ははづき家で普通に暮らしているらしく、娘が留学に行っても娘の同位体が家にいるから、はづき家のお父さんも心穏やかに暮らしてるんだそうだ。
そんなことあるんだ。
なお、ベルゼブブはAギルドの要職にもついているので、これは日本のAギルドがアメリカのAギルド的な組織を視察に行くという活動でもある。
うんうん、仕事だね。
旅費は全てAギルドから出るからね。
出るお金で乗れるのはエコノミーだったので、スパイスとベルゼブブで余計にお金を払ってビジネスクラスにランクアップさせる……!
一度ゆったり空間を知ってしまうと、もう戻れないのだ!!
『おやー? 飛行機の中でもお仕事ですか』
「そういうベルっちさんは早速機内食ですか」
『えへへ、暴食なもんで』
もぐもぐと洋食を平らげていくベルゼブブ。
おかわりまでしていた。
本日は、ベルゼブブのためにかなり多めに機内食が運び込まれているようだから安心だ。
「さて、俺はお仕事お仕事……と」
通路を挟んだお隣で、食事に邁進する暴食の大罪。
俺は持ち込んだ端末で、カチャカチャとキーボードをいじっているのだ。
静音タイプ、本当に助かる。
今回、旅に同行する魔導書はいつもの三冊+一冊。
フロータ、メンタリス、パワード。
そしてスノーホワイトだ。
スノーホワイト的には里帰りでもあるな。
あっちで、カンザス方面からウィンディと、友人で色欲の大罪であるクシーも合流する予定。
アメリカではずっとスパイス状態だろうなこれは!
機内は貴重なショウゴのままでいられる空間だ。
流石に幼女一人でビジネスクラスはよろしくないからね。
あっ、西欧で大きい被害が出てる!!
スパイスが作った、対魔女包囲網に参加していなかったので、情報共有が受けられなかったのだ。
アネットの分身はあいつの匙加減次第で全然強さが変わるからね。
舐めて掛かったところを、それなりのランクの配信者とエクソシストが全滅させられたらしい。
これは文字通りの意味での全滅。
洒落にならない。
今、西欧各国のエクソシスト協会はわあわあと紛糾しているようだ。
国と宗派の壁を乗り越えて、一つになれるか~?
仲が悪い国々はアネットにいいようにやられていて、大被害が続いているぞ。
上の方がそれなりに大人で、下の民衆もまあまあ物わかりがいい国じゃないと、対魔女包囲網への参加は難しいかも知れないな。
おっ、アフリカから何カ国かが参加の表明を!
ぜひ加盟して欲しい。
『ほんと真面目ですよねー。配信している時のスパイスちゃんはあんなに楽しそうで天真爛漫って感じなのに』
「まあそれはね。大人の姿の俺は社長でもありますし」
『はづきの兄を見てて思いますけど、社長業と配信を両立って本当、人間業じゃないですよねえ……』
中華の機内食をパクパク平らげるベルゼブブなのだった。
きら星はづきの中から現れた彼女だが、自認は魔王。
それ故に、血が繋がっていても斑鳩を兄だとは認識していないらしい。
『まあ、お父さんとお母さんはそれそのものですけど』
「そっちは別腹なんだ……」
『悪魔的にも父母は特別なんですよ』
「なるほどなー」
『存在としては私は聖書側なんだけど、信教は仏教なんですよねー』
「うわっ、どうなるんだそれ」
あまりにも興味深い話だったけど、あまり喋ると周りに迷惑だ。
これは向こうに到着してから詳しく聞こうということになった。
そう言えば、インドの大罪は聖書側の存在だけど信教はヒンドゥー教だし、英国のルシフェル議員はアングリカン・チャーチ(カトリックとプロテスタントの中道)だし、アメリカのクシーはプロテスタント。
ポリネシアのビディはカトリックだったような。
うーむ!!
イラちゃんはどうなんだろう?
あの人の場合は無宗教な気がするなあ。
あえて言うなら、VR教とか。
スパイスも仏教だなあ。
えっ、ベルゼブブは浄土宗なの?
魔王が南無阿弥陀仏唱えるのはかなり新しいかも知れない。
こうして情報収集と、対魔女包囲網の管理についてわちゃわちゃと作業をし……。
それでも時間がたっぷりできるのが日本からアメリカへの航路だ。
ゆっくり寝るとするか。
アイマスクを使い、俺は夢の世界へと旅立つことにしたのだった。
普段リラックスしている時は、夢のことは覚えていないんだが……。
魔女というのは、意識すると夢の中で重要な活動が行われることがある。
俺はスパイスの姿で、周囲に七冊の魔導書が集まっている。
現実では遠く離れていても、夢の中ならその距離はゼロになるわけか。
『主様、やつの気配ですよ』
「夢の中なら通じちゃうかあ」
『あっしがジャミングしてるでやんすからね。気づかれてないでやんす』
薄暗い夢の空間の中で、遥かに離れた場所に紫色の輝きがある。
魔女アネットだ。
彼女は今、起きているらしい。
きっと、良からぬことを企んでいるんだろう。
まあスパイスが見たところ……。
彼女ってばあまりにも慎重すぎて、石橋を叩いて渡るために本来の目的を忘れちゃってるんじゃないかと思うんだけど。
何がやりたいんだ、あいつ?
紫の輝きはふわふわと浮かびつつ、時折明滅する。
だけどスパイスは、そこに確固たる意志みたいなのをいまいち感じないのだった。
あいつ、目的もなく、なんとなく世界を破壊しようとしてるんじゃないか……?
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