第341話 対決・分身アネット!
オフ会という名のリアルイベントを成功のうちに終え、さらに盛り上がりを見せるスパイスなのだ!
昨今では配信者イベントに爆破予告する輩がいるんだけど、これは高度に発展した現代魔法や陰陽術によって逆探知し、本人をあぶり出して豚箱にぶち込むシステムが確立している。
スパイスの時も爆破予告あったねー。
無敵の人が毎度やるんで、こういうのは慣れたものだけど。
ってことで、その逆恨みした無敵の人が尖兵化したやつと戦っていますよ!
「おらぁ! パワード・ファイアボール! 連打ーっ!!」
『ウグワーッ!! お、俺は遊んで金稼ぎする配信者相手に道徳マウントを取って気持ちよくなりたかっただけだったのにーっ!! ちょっと爆破予告を病院とか保育園とかの近隣施設にしたくらいでこんなひどいーっ!!』
ひっでえ断末魔をあげながら、炎に焼き尽くされる尖兵なのだった。
いやあ、因果応報でしょう。
『んん~! 久々に外で戦うとぉ! スッキリするぜぇ!!』
「イグナイトもストレス解消した? 我が家のちびたちもとうとうハイハイするレベルになって来たし、これからも見守りよろしくね!」
『ん任せられたぁ! 俺の新しいマスターも、ミナトもすくすく育ってるぜぇ!』
本日は、マリンナとカラフリーが子どもたち担当。
スパイスは五冊ほど引き連れて外に出ていたのだ。
そこで、スパイス名指しで襲撃してきた尖兵を一蹴したと!
『主様、本当に強くなりましたよねー! あれ、ちょっとしたデーモンくらいの強さはありましたけど、かる~くやっつけましたもん!』
「攻撃がパターンだからね! スパイスだけを狙ってきてくれるならむしろイージー!」
スパイスの姿のまま、ちょっと注目されながら町中を歩く。
本日はですね、合同会社スパイシーの代表として営業に出てきているのだ。
やっぱり顔を直接出さないとね。
以前案件をくれていた、PC関連器具の会社に挨拶。
アポは取ってあるので、お菓子を差し出してから担当者と談笑するのだ!
「スパイスさんは最近、さらに活躍されているようで」
「いやあー、世界情勢がヤバくなるほど、配信者は活動場所が増えますから! きら星はづきさんが引退されて、彼女が受け持ってたゲキヤバ案件みたいなのは、やっぱりスパイスたち上位登録者数の配信者が担当しますし」
「ですねえ。では応援代わりに、弊社の案件を一つ受けていただければ……」
「ややや、ありがとうございますー! それでこちらからも、メールした通り企画書がありまして」
「添付されていたものの完全版ですか? ぜひ拝見したいです!」
「黒胡椒スパイスカラーでプリントつきボックスのPC企画で……」
「おお……変身モードも入れれば七色展開……!!」
デスクトップPCのガワを簡単に入れ替えできるようにし、プリント付きパネルを日替わりでやれるように……というファンアイテムPCなのだ!
ゲーミングだから上位モデルは30万円台、安いほうが20万円くらい……。
なお、オマケでスパイス壁紙が七枚ついてくるぞ!
「今までで一番高額なグッズになりそう」
「なりますねこれは。では企画書をお預かりします。必ず承認を取り付け、企画を始動させて見せますよ!」
担当者さんと固い握手を交わしたのだった!
なお、直後にサササッと部長さんらしき人が来て、スパイスと名刺交換をした。
そしてスパイスの名刺を見て驚く。
代表取締役社長だからね!!
まさか人生の中で、社長になることがあるとは思ってもいなかった。
電車で帰りつつ、うちのマンションは社長が二人住んでいる……などと考える。
スパイスモードなのは、いつ襲撃されてもいいようにだ!
今回は、ある程度人が少ない駅まで行ったら実験しようと思っているのだ。
ということで、中央線から先の少し人が少ない駅に到着!
スパイスに注目する野次馬の人たちに手を振りながら……。
「フライト! メンタリス、ジャミングよろー! ちょっと今日はあいつの感度を試して行こうか!」
『任せるでやんす!』
『久々のフライトですよー! どの出力までが感知してくるかのチェックです!』
『フロータの魔力量は多いでやんすからねー。ジャミングでも隠しきれないでやんすよ! いきなり全力はやめるでやんす!』
『分かってるわよ! そんじゃあ……微速前進!』
微速って言うけど時速200kmは出てる!
ビュンっと飛んだけど、どうかな?
『マスター、周辺に魔力の気配なしです。前回記録した魔女の魔力と照合なし』
「おっけおっけ! じゃあ、時速400km!!」
加速ーっ!
これでも反応なし!
さらに倍だー!
富士山が見えてきたぞ!!
『マスター、反応です!! 魔女が食いつきました!』
「おっしゃー! かるーく一戦してから最大規模のジャミング! 撤退するぞー!」
スパイスの言葉が終わるか終わらないかのうちに、眼の前に金髪のギャルっぽいのが現れた。
衣装がオシャレなパンツルックになってる!
「やーっと見つけた!! ってか、ウチの本体が眠ってるところを狙うとかやるじゃん! 分身で追っかけるのがやっとだったわ! 戦ってるうちに本体来るから、安心してて!」
「安心できねー! というか分身かあ! じゃあやっつけるか! うおー! パワード! そしてフロータ! イグナイトー!!」
パワードを使ってて分かったのは、こいつは他の魔導書をミキシングできるということだ。
どっちかのフォームがメインになるけど、もう片方のフォームの象徴みたいな装備が体のどこかに出る。
今回は、ノーマルスパイスに金色のマフラー。
そして赤いグローブとブーツ!
「あんたって直接攻撃タイプ? そっか、魔導書は事象そのものを操るから、婉曲な魔力操作での変換が必要ないもんねえ! ま、いまのウチも必要ないんだけど!!」
黒く塗られた分身アネットのネイルから、真っ黒な炎がほとばしる!
これを、スパイスはグローブから放った炎で受け止めた!
「おっ!? パワード付きなら押し切れるじゃん!!」
「やっべ! こいつ、想定してたより全然パワーがでかいわ……!!」
初手でスパイスが逃げたから、油断してたな!!
分身アネットの黒い炎攻撃と、スパイスのパワーアップ炎魔法!
富士山の前でぶつかり合うぞ!
何合かやりあって分身アネットの強さを把握した。
ちょっと強い魔将くらい!
尖兵よりは全然上だけど、アネットは配信者の実力レベルを測りかねてるっぽいな。
「決めるぞイグナイトー!!」
『おうよぉ!! 最・焼結!!』
スパイスの全身が、イグナイトモードに入れ替わる!
ゴールドのマフラーが炎のよう揺れる!
「やっば!!」
慌てて後退しようとする分身アネットだが、スパイスはフロータも使っていることを忘れたかー!
一瞬で追い付いて、真っ赤なグローブハンドが分身アネットの首をホールドした!
「スパイス~! スパイラルバーントルネード!!」
炎の嵐が猛烈な螺旋を描いて発生するのだ!
「ウグワーッ!? 本体! 本体! こいつ相手の分身レベルぶち上げて!! こいつやべーから!」
それだけ告げて、分身が燃え尽きた。
うーん!
分身アネットというのがいるのか。
情報端末の役割を果たしてるみたいだけど……。
「メンタリス、どう?」
『情報発信の半分は抑えたでやんすね。主がつえーっていう情報だけ向こうに行ったと思うでやんす。情報戦でやんすよー』
スパイスがアネットの情報を掴み、向こうがスパイスの情報を掴む!
その他に、世界中でアネットと遭遇した配信者とも接触して、情報集めしたいなあ。
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