第335話 激突!八咫烏チーム!
「来たぞ! 八咫烏チームだ!」
警戒の声を出したら、すぐに気づかれてパラパラとBB弾が飛んでくる。
なんという察知力だ。
やっぱり彼らは最強のチームだな……。
あれ?
スレイヤーさんがいない。
もしや……。
あの人、リアルバトルだと生身で吶喊していくことに慣れているので、自分が弾丸で撃たれたら死ぬ脆弱な人類だと仮定して遊ぶサバゲーは苦手かもしれない!
あえてでかいアバターになってるチャラちゃんが見事に生き残ってるしなあ。
「GOGOGOGOGO!」
八咫烏の号令を受けて、チームがワーッと動き出す。
いや、チャラちゃんとカモちゃんの二人だけだ!
まずい!
あと一人いるぞ!
「後ろ!」
エミナちゃんが素早く背後に射撃した。
「ちぃっ!」
二丁拳銃にコート姿の男が、素早く身を隠した。
斑鳩だ!
あの男が遊撃隊で動き回ってるぞ!
「あれやべーなー! 正面からチームが、背後から遊撃が来るの最悪だぞー!」
スパイスチームをいつの間にか挟撃する形になっているのか!
「エミナちゃんは後方注意お願い! 少しでも物音がしたり姿が見えたらぶっ放して!」
「分かりました! 思ったよりもスリリングなゲームなんですね……」
「だけど命は掛かってないからね! 安全で楽しい遊びだよー」
「だよなあ。人類の発明だと思うぜー」
イラちゃんとキャッキャはしゃぎつつ、
遮蔽を使ってヤタさんとの競り合いをするのだぞ。
膠着状態!
斑鳩は完全マークしているので、何もさせない。
こうなると、サバゲー巧者のヤタさんとしては別働隊を動かして状況を動かそうとするだろう!
スパイスも同じ気持ちだね!
「ほんじゃあ、スパイスがいってきま~す」
「おー! がんばれー!」
「任せました! くうーっ、これがゲームでなければ何度かやられていますよ」
「そりゃあその斑鳩とか言う男、イラが認めた人類十強の一人だからねー。なんで日本に七人が集まってんだかわかんねーけど」
気になる話するなー!
でもスパイスは移動するぞー!
音を立てずに極めて低い姿勢で駆け抜ける!
小さいことはいいことだーっ!
ショウゴ状態のスパイスだったら、大きすぎて当たってただろうからなあ。
おっ、向こうも木々の上を黒いコート姿が駆け抜けていく!
ヤタさんも自ら動いたな!
「やっぱり君が来たか、スパイスちゃん!!」
「はっはっはー! ここは最強が遊撃要員になるのが最適解でしょ!」
「僕と同じ考えとは参ったなあ! ちなみに、他のチームは僕らが蹴散らしたから、完全にこの場は一騎打ちだぞ!」
「うおー、あっちー!」
※『スパイスちゃんVS八咫烏!!』おさかな『水温が上がってくる熱さですねこれは!!』たぬき『あまりの熱量に俺の袋も八畳敷になる』ランプ『しまっとけしまっとけ!!』マルチョウ『事実、これは今回のサバゲーで頂点を決める対決になるだろうな。チーム戦も重要だが、個人スキルが飛び抜けている二人だ』ザブトン『小さいほうが勝つ』
高所という地の利を得たヤタさんに対して、スパイスは茂みの中を連続で駆け抜けたり側転したり。
当たり判定を小さくしながら動き続けるぞ!
「くおおおおっ! 狙いづらい! こんなに動き回る相手初めてだよ!」
「ヤタさん棒立ちだぞー! 狙うぞ狙うぞ!」
「動き回ってるよ!? 銃口が僕を常に捉えてるんだけど!? 強いなー!!」
お互いが銃口を突きつけ合っての高速移動合戦なのだ!
遮蔽という概念がない!
避ければいいのだー!!
徐々にスパイスと八咫烏の距離は近づき、ついには5mくらいの距離で電動ガンを向け合いながらのクロスコンバットだ!
うおー!
当たらない!
当てられない!
※『弾が当たらない!』『こんなのがサバゲーにいたら悪夢だろw』『つええええ』『これはサバゲーとは言えないのでは……?』
一人疑義を呈した人がいて、その通りでした!
スパイスとヤタさんで至近距離でやり合っているうちに、イラちゃんがチャラちゃんを仕留め、エミナちゃんが斑鳩を打ち倒す大金星を挙げ……。
「お兄様! お覚悟ー!!」
「えっ!?」
突然聞こえたエミナちゃんの叫びに、完全にフリーズする八咫烏!
わはは!
うちの隠し玉が炸裂だー!!
バラバラとぶっ放した弾が八咫烏にぺちぺち当たった。
「ウグワーッ! やられたー!!」
残るはイカルガエンターテイメントの麻雀陰陽師、カモちゃんだけ!
彼って凄く慎重で、倒れたチャラちゃんを盾にしながらイラちゃんと撃ち合ってるんだよな。
「ヒャッハー! 俺を盾に!? ファンキー過ぎるぜーっ!!」
「いやあ、すみませんねえ、先輩をこんな風に使って。このゲーム麻雀禁止なんで」
「なんでもありにしたらやべーのばっかり集まってるからなあ……」
チャラちゃんイラちゃんと牽制しあいながら雑談するなんて余裕だなあー!
スパイスがそっちに向かうぞ!
というところで……。
「ウグワーッ!? 伏兵!? イラをやるとはー!」
イラちゃんがやられた!?
伏兵ということはつまり……。
「俺だーっ!!」
地面をスライディングしながらスレイヤーさん登場!!
うおお、ここからはスパイス&エミナちゃんと、スレイヤーさん&カモちゃんのコンビ戦だぞ!
脱落したと見せかけて、スレイヤーさんはこのチャンスを伺っていたのか!
八咫烏チーム、エミナちゃんによる不意打ちお兄様呼ばわりが無かったら危なかった!
なお、ヤタさんのコメント欄では※『リアル妹!?』『八咫烏妹がいたの!?』『あのフリーズは本物だw』とか盛り上がっているのだ。
話題ができましたねえ!
そんな最中……。
一人、こっちにフラフラ歩きながらモデルガンをぶっ放すのがいるのだ!
生き残り?
スパイスはバラバラと弾を撃つのだけど……。
そいつは当たってるのにやられた宣言をしない。
ゾ、ゾンビだー!
最悪のマナー破りだぞ!
「スレイヤーさん、これは」
「ああ。一時休戦してゾンビ退治だな!」
お読みいただきありがとうございます。
面白い、先が気になる、など感じられましたら、下の星を増やして応援などしていただけると大変励みになります。




