第329話 次の魔法使い?に会いに行くぞ
卒業式と終業式が終わると、学校というのはガラーンとして静かになってしまう。
当直の先生が持ち回りでいるけど、それも少人数だもんね。
あとは部活をやってる子がちらほら。
そんな学校に、女子高生姿でまたまたスパイスがやって来ました!
本日も校長室直行。
「待っていましたよ、スパイスさん」
「はーい! 各地に尖兵が出現してて、やばーい感じですねえ」
「ええ。スパイスさんたちが対策を練って、配信を通じて流してくださるお陰で助かっています。あとは私たち自身が他の魔法使いにも連絡を取るだけですね。幸い、異種族たちは協力的です。彼らがいるだけで、あの魔女への対応がやりやすくなっていますし」
ほんとにね!
エルフ族なんか全員で、対アネットシフトを組んでくれてる。
しかもその中には実力派の配信者もちょこちょこいるんで、ちゃんとカウンターになり得ているのだ。
スパイスが今回、シヅルさんと向かうのは……。
そういうアネットへのカウンターとなる別の魔法使いのところ。
対最も古き魔女ネットワークを拡張していかなくちゃね。
またも鏡が出現し、これを使って移動!
「ところでシヅルさんって、この学校に住んでるの?」
「ええ。ここは魔女の工房でもあり、愛しき生徒たちの学び舎でもあります。私自身のプライベート空間は、敷地の外れに作ってあるのですよ」
平屋のちょっと広めな家が、木々に囲まれて存在しているらしい。
今度見てみたいなー。
さあ、鏡の中を抜けていくと……。
はい、林の中ー!
「ねえシヅルさん」
「はい?」
「この国の魔法使いは、林の中や山の中に住んでる?」
「ええ、その通りです。山というのは、人界とは隔絶した場所ですからね。幽世にも近いのです。今回は四国に来ていますね」
「一瞬で四国に!!」
『これはですねー、各地に決まった魔力のルートがあって、それに乗って移動した形ですね。うーん、これほど正確で高度な移動の魔法……。やりますねえ!』
フロータが大変感心している!
つまり、霊道と言われるもの……大陸では龍脈と呼ばれるそれが、各地には走っている。
この太いものを辿って行くと、各地に設置された魔法使いの拠点に到着するわけだ。
「みんなダンジョン関連は静観してた?」
「ええ。注目されるのをよしとしない方々ですから。最近の同接数で強くなるダンジョンという仕組みに違和感を覚えて、手を出しかねていたようですね」
「なるほどー!」
つまり、みんなちょっと引きこもりとかだったわけだ。
それは現代のシステムに合わないよねえ。
林の中を歩いていく。
獣道しかない。
ちょっと移動すると岩場になっていて、その上をぴょんぴょん飛び跳ねて進んでいくことになる。
スパイスはいいけど、シヅルさん大丈夫? と思ったら、彼女はふわ~っと浮かんで優雅に着地したりしていた。
魔女~!!
「ふふふ、私は全身に魔法が掛かっていますから」
「さっすが! 魔女っぽー! スパイスなんか、シヅルさんと比べたらゲーミング魔女だからねえ」
「最新の魔女というのものはそういうものなのかもですね。ああ、後輩ができたのでしたよね」
木霊議員が変身する、魔法少女エコーね!
スパイスの古参ファンである女の子が引き継ぐこと確定している。
「時代は変わるものですよ。世界に現れたダンジョンが、人と魔法との関わり方を大きく変えました。……と。どうやらこの魔域の主が現れたようです」
いつの間にか、眼の前に闇が広がっていた。
で、その中に沢山の目が光っていてこっちを見ている。
ひときわ高いところにある目が、スパイスとシヅルさんを交互に見た。
『誰かと思えばシヅルか。人から生まれた若き妖人が、わしに何の用かな?』
シヅルさんを若い呼ばわりする!
「お久しぶりです、隠神刑部殿」
『二代目じゃがな……』
隠神刑部!
愛媛の松山城を由来とする、八百八狸の大将じゃん!
実在してたのか……。
いや、こんな世界なんだから実在してて当たり前だ。
「ちなみにスパイスさん。化け狸は狸ではありませんよ。今の異種族の皆さんがやってくるよりも前に、この世界に住み着いた異なる世界の人々です。その姿が、人と獣を合わせた形をしていたということですね」
『先祖からすれば、この世界の人間が我らから獣の力を取り除いた姿であるということになるがな。おっ、そこにいるのはさらに若き妖人か。ほほー、男が女の皮を被っておる。面妖な……』
「化け狸に面妖って言われたぞ!」
ここで、狸の一匹がサササッと隠神刑部に駆け寄って、
『大将、ご存じないのですか!? 彼女は黒胡椒スパイスちゃんですよ』
「あっ、もしやお肉ども……」
『はっ! 名もなきお肉どもとしていつも応援しております!』
ネットに精通してる狸いたー!
どこにでもいるな、お肉ども!!
ここで、スパイスから隠神刑部にプレゼンだぞ!
「ヤバい魔女がいまして、名前を呼ぶと飛んできて攻撃してくる……」
『厄介じゃのう。じゃが、巷では我ら妖怪のような者たちが当たり前の顔をして人間に混ざっているそうではないか。わしの眷属も愛媛から全国に広がっていっておるぞ』
なお、狸で世代交代に成功したのは隠神刑部のところだけだったらしく。
他は土地開発に負けて解散したりしたそうだ。
『良かろう。我ら八百八狸がお主に協力を約束するぞ。眷属が惚れ込んでおる妖人ならば間違いあるまい……』
そういう基準!
どこにでもいるお肉どもに助けられたなあ。
なお、狸たちの姿は最後まで闇に紛れて見えなかった。
本当に狸の姿してる……?
謎に包まれているのだ!
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