第327話 魔女の尖兵 VS もみじスパイラル!?
久々のコラボ!
高校を卒業し、家政大への進学を控えた鹿野もみじちゃんと連絡が取れたのだ!
ってことで~!
「もみじスパイラルでーす!」
「どうもどうもだぜー!」
「久しぶりコラボでーす!」
スパイス!
イラちゃん!
もみじちゃん!
前年度の配信者界最カワトップ3がまた揃ったぞ!
※『きたああああああ』『もみじスパイラルだぁぁぁぁ!!』ザブトン『ありがてえ……ほんとありがてえ……』ランプ『心が安らかになるコラボですなあ』
今回のコラボは、なんとゆったりと街歩きを楽しもうというものです!
冒険配信者はこれからの時代、ダンジョン配信だけではいかんだろうという話が持ち上がっている。
というのも、魔王がいなくなったことから楽天的に考えると、そのうちダンジョンが無くなるという説が一般になっているわけだ。
そうなったら配信者はどうする?
自分のタレント性を武器にして、ダンジョンだけじゃない配信を行っていくべきではないか?
それが今、配信者界が直面している未来に向けた話ね。
「もみじちゃんとスパイスちゃんとしてはさー、どう思う? イラはまだまだダンジョンなくなんないと思うなー」
「ほえー、そうなの? うちはなんか分かんないなあ。やっぱりイラちゃんはベテランだからそういうの分かっちゃう的な?」
「そうだぞー。人類は愚かだから、基本的に諍いとか色々あるからね。ダンジョンはそういうとこから生まれてくるでしょ」
「あー、イラちゃんは詳しいからね。誰よりも長くそういうのを観察してきた人だし」
※『かわいいのが三人歩きながら重い話をしてるぞ!!』『ぽわぽわトークしないのかw』『確かにダンジョンはなくならなそう』『この間も知り合いがダンジョンに巻き込まれてたし』
「やっぱり? ダンジョンってあちこちでバンバン発生してるもんね! それが無くなるってのは楽観的すぎるかなーとスパイスも思うねー」
「シビア~」
もみじちゃんが感心しているのだ。
君はこれから社会の荒波に乗り出して現実と向き合っていくからね……!
今コラボしてるおじさん二人が、そこら辺はバンバンサポートするぞ!
「それはそうと! うち、気になるお店があるんだよねー!」
「なにぃー」
「どういう感じのお店?」
「春といえば話題の、桜のタルト! 桜の花びらをイメージしたチェリータルトでー。うちのお店でも出せないか研究中……!」
「ライバルだった!」
実家がパン屋を経営しているもみじちゃんなのだ。
では食べに行こうという話になり、三人でわいわいお店に向かった。
もちろん、配信者姿の三人なので、やたらと注目される!
「スパイスちゃんだ!」「イラちゃんじゃん!」「もみじちゃんかわいいー!!」
声の反応を見るに、もみじちゃんのファンは女子が結構多いな!?
やはりリアル女子は女子を引き付ける力を持っているのだろう……。
なお、男性ファンが一番多いのはイラちゃん!
まあね、VR空間で授乳喫茶通ってるおじさんだからね……!
とかやっていたら、イラちゃんがフッと空を見上げた。
「スパイスちゃんをつけてきたんだと思ってたけど、これは別だなー。なんか無差別にそういうのを放って実験でもしてるのかね」
「どうしたのさイラちゃん」
「あれよあれ」
「ほー」
イラちゃんが指差す先、ビルとビルの間に何か浮かんでいる。
あれはなんだー!
周囲の人々もそれに気づいて、ざわざわし始めている。
一見すると、真っ黒いローブを着た髪の長い女。
頭をだらんと垂らしていて、顔は見えない。
だけど、そいつがブツブツ言う言葉だけが耳に届いてくるのだ。
『みんなこの世界が悪い。あいつが悪い。家族が悪い。職場が悪い。全部悪い。私は悪くない。悪くない悪くない悪くない悪くない私は被害者、被害者、被害者、被害者……この世界は間違ってる、間違ってる……間違ってる! 間違った世界なら、消さなきゃ……! 私にはその力があるぅぅぅぅぅ……!!』
『あー、これはあの魔女の気配ですね』
アネットの気配!?
スパイスのカバンからひょこっと顔を出したフロータの言葉に、ちょっと身構えるぞ!
でも本人じゃないっぽいな。
「イラああいうの詳しいからね。自他境界線が曖昧なのを洗脳して、鉄砲玉に変えるやつでしょー。あれはやばいよー。今から無差別でここに魔法を撒き散らすと思うなあ」
「まずいじゃーん!」
「いけないー!」
もみじちゃんが走り出した!
「みなさーん! 逃げてー! あれは悪いやつでーす!!」
周囲に広がるどよめき!
で、もみじちゃんの声が聞こえてたらしい空の何者かは……。
『わた、私が悪い!? どうして!? 私は被害者だ! だから世界に復讐する権利がある! だから私に力が宿ったんだ! あの人が力をくれて、だから、だから……ああああああ! なんか私を悪いやつ扱いするかわいこぶってる女!! 死ねええええ!!』
もみじちゃん狙い!
何者か……アネットの尖兵は、眼の前に巨大な土色の槍を呼び出した。
それが、もみじちゃん目掛けて降り注ぐ!
「ちょーっ!!」
だが!
お前が相手にしているのは現代最高の現代魔法の使い手、もみじちゃんなのだ!
槍の前に、切れ目の入ったコッペパンが出現した。
コッペパンが展開し、その間を通過しようとした槍をパーンと挟む!
槍の勢いを封殺!
小さなホットドッグサイズに縮み、パンがポトッと落ちてきて消えた。
ここに至って、周囲の人々は空にいる尖兵が害意のある存在だと理解したらしい。
わーっと叫びながら逃げ出す。
立ち止まって写真取ってるやつは、メンタリスにフィアーの魔法を使わせて逃げさせるぞ!
『いやあー! 人類は愚かでやんすねえ!!』
「まあ、たくさん人がいればそういうのも混じってるからね! しかし、今回はダンジョン外での襲撃かー! なんかあの魔女、今までの敵と毛色が違うなあ」
「嫌だねー。使い捨ての部下に好き勝手やらせて、自分は知りませーんみたいな態度だろ? イラそういう無責任嫌いなんだよねえ」
「スパイスちゃん、イラちゃん、三人であいつをやっつけて、タルト食べよーう!」
「「おー!」」
もみじスパイラル、魔女の尖兵と対決だぞ!
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