第321話 有識者と対応会議だぞ
タリサと別れて、フロータが作り出したポータルから異世界へ!
この魔法はフロータが最近編み出したので、魔法の傾向が最も古き魔女に知られていないのだ!
『これちょっと、私の魔法の出力方法を変えていかないとですねえ! カラフリーに相談してコンバートする魔法を一枚噛ませますか』
「そんなことできるの?」
異世界ならば、フライトでビュンビュン飛べる。
ここは我が家に繋がっている異世界で、そういう縁がなければたどり着けない場所だからだ。
安心、安全。
いや、危険に満ちてはいるんだけど!
ってことで、異世界を通って我が家に帰還したぞ。
「マシロ聞いてよー!」
「おっおっ、なんスかなんスか」
ノー残業で帰ってきてて、ミナトを抱っこしながらくるくる回っていたうちの奥さん。
いきなりスパイスが帰ってきたので、びっくりしたようだ。
「ついにスパイス的なラスボス、最も古き魔女が接触してきてさ。アネットって名前出してるんだけど」
『おーっ! マスター、その名前には発したものを捕捉する魔法が込められてるざんすねえ! ま、ミーが今即座にシャットアウトしたざんすが! なーるほど、相当厄介なやつざんすねー。あらゆる行動に、二重三重に仕掛けを施してくる系の魔女ざんす』
「カラフリー詳しいな! 頼れる~!」
他の魔導書もわいわい出てきて、今後の対策じゃー! と盛り上がり始めた。
スパイスからショウゴに戻り、俺はホムラを抱っこする。
おー、ポカポカあたたかい。
「あぶぶばあー」
「ほうほう、そうかそうか」
赤ちゃんと会話などしている俺である。
マシロは「ふーむ」と唸りながら俺の周りをくるくる歩き、パッと立ち止まった。
「古き魔女に相談がいいッス!」
「それだ!!」
ナイスアイデア!!
俺はすぐさま、頼れる大先輩に連絡を取ったのだった。
翌日のこと。
会うための準備を即座に行ってくれた古き魔女。
俺はスパイスになり、三鷹にある例の女子校にやって来たのだった。
ここで、古き魔女は校長先生をやっているからね。
「なんか学生さんたちがみんなであちこち掃除してるねえ」
『どうやら、卒業生は感謝の気持を込めて学校を大清掃する習慣があるらしいでやんすよ。みんな楽しげに掃除してるでやんす。こんな晴れ晴れとした精神に満ちた場所、なかなかないでやんすよ……!!』
「メンタリスが衝撃を受けてる! よし、じゃあ今回はメンタリスにフォローお願いしようかな」
「お任せでやんす~。あっ、ちなみにちょっと向こうで掃除してるのはきら星はづきさんでやんすね」
「うわーっ! 思わぬ超大物が!」
彼女の学校だし、卒業間近だもんなあ。
女子高生の姿に変身しているスパイスは気づかれないようにそろーっと動く。
まあ、彼女って敵対しない相手には鈍感だからね……!
何の問題もなく学校に入ることができたのだった。
そして向かったのは校長室。
ノックをすると、扉がひとりでに開いた。
奥には、上品な老婦人がいる。
「どうもー! こんちゃー」
「こんにちは、スパイスさん。ついに事態の大本と遭遇したようですね」
「そうなんですよー」
背後で扉が閉まった。
これからの時間、訪問者はやって来ないようにしているみたいだ。
来客用の席に腰掛けると、壁際に掛かっていた額縁の中から執事みたいな人が現れ、お茶とお菓子を出してくれた。
これはどうもどうも。
『これが状況の映像でやんす。あっしがフロッピーちゃんと協力して、サッとあの場で撮影しておいたでやんすよ。こう言うこともあろうかと思ってでやんすねえ』
「流石ですね。七冊の中で最も慎重であると言われる魔導書メンタリス」
そうだったのか!
確かに、あまり出しゃばってこないし裏でコツコツ仕事をして、ここぞというところで出てくるみたいな感じかも。
「最も古き魔女……。名乗りましたか。この名乗りそのものが罠と考えていいでしょうね。ですが、対策を取られることも想定済みでしょう。彼女が力を得て表舞台に出てきた今の事態は、私達、魔法を使うものにとっても脅威です」
古き魔女がかなり真剣な目をして映像を見ている。
「この映像をネットを通して、私の同胞に回してもいいですか? 彼女はインターネットに介入する魔法はまだ持っていないはずです。その痕跡はありませんから」
『もちろん。好きにして欲しいでやんす』
「ありがとうございます。では……」
『私が映像を見やすいように加工しますので、そちらを転送します』
フロッピーが出てきて、メンタリスと繋がって作業を始めた。
便利~!
そして、執事の人がパソコンをいじり、これを古き魔女のネットワークみたいなのに流しているではないか。
「さて、これは私も、消え去っていくロートル的な自認でのんびりするわけにはいかなくなりましたね」
ふう、とため息をついた古き魔女は、横にあった書籍の棚を開いた。
紫外線よけのガラスで封をされていたそこに、古びた本が収まっている。
彼女はそれを取り出すと、スパイスの前で開いた。
本は小物入れになっている。
中には、紫に輝く宝石のペンダント。
「私も動きましょう」
「えーっ、古き魔女もついに!?」
「百年に渡り、この国を支えてきた魔女として、見過ごすわけには行きませんからね」
ペンダントを身に着けた後、古き魔女が「限定解除」と呟いた。
そうすると!
彼女の姿が一瞬シルエット表示に!
小柄なおばあちゃんが、スラリと背筋の伸びた女の人になる!
紫の古風な欧風ルックに身を包んだ、若々しい女性がそこには立っていたのだ!
「東亜の魔女シヅル。久々の本番と参りましょう。スパイスさん、これは魔法の世界における緊急事態。私とともに協力者の元を巡りましょう」
「うおー! やりましょー!」
凄まじい事態になってきたぞ!
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