第310話 どんどん試してみよう
薄暗く、ジメジメとしてカビ臭い和風ダンジョンの中を……。
『フゥーッ!! アガってきたわねーっ!! 明らかにヒグマより強い奴らの気配しかしないわーっ! アタシ、こういう環境大好きよぉーっ! マスターいいセンスしてるわねーっ!』
『ふっふっふー。主様はこのダンジョンを管理してた人みたいな、後ろ暗そうな人とも大人の接し方ができるのが強みですからねー。大体社会の闇の方がヤバいダンジョンがあってアツいんですよー!』
『サイッコーじゃなーい!! アタシ、今のマスターのところに来て良かったかもーっ!!』
※『すげえ怖いダンジョンのはずなのに、輝くスパイスちゃんと、とにかく明るい魔導書たちのおかげで全く怖くないんじゃが』『パワードとフロータが相互にテンションを高めていっている!!』ランプ『こりゃあ祭りだあ!』マルチョウ『普通はこういうダンジョン、配信の画面から呪いがリスナーに降り掛かったりするのだろうが、出現するなりスパイスちゃんによって完膚なきまでに滅ぼされるから全くそういうのがない』
そうそう!
ちょこちょこあるんだけど、ダンジョンそのものが配信を通して悪さをするのがいるんだよね。
これを防ぐ方法は簡単。
推しの配信者のアクスタやグッズを祀っておくこと。
今の時代、グッズは聖遺物みたいなもんだからね!
まあ、今回は呪ごと粉砕して行ってるけど。
「ってことで来たぞ来たぞ! 今度はワチャワチャと、人の口と歯がついたネズミが叫びながら溢れ出てくる~!!」
※『おええええ』『最悪すぎる』『地獄のASMR!!』
「ってことでまた、パワードの新しい力を試しまーす! アクションスパイスぅ~……!!」
『魔法のイメージを送るわよぉー!! アタシの魔法、基本的に肉体を使うからマスターにはピッタリねえ!』
「バッチリ! おりゃあー!! パワーハリケーン改め……螺旋台風脚!」
飛び上がったスパイスが逆立ちしながら、くるくる回転して空を飛ぶぞ!
蹴り足が金色に輝いていて、広範囲をフォローしている!
その範囲に飛び込んできた人間ネズミが、つぎつぎに『チュグワーッ!!』『チュグワーッ!?』と消し飛ばされていく。
もうね、スパイスが移動する通路がまるごと、怨霊・デーモン殲滅領域になる魔法だね!
純粋な力を振り回す感じがパワードの魔法。
だから、あとは使い手がどう体現するかだけ。
スパイスにはぴったりだ!
バリバリ回転しながら、人間ネズミを次々消し飛ばす。
勝手に飛びかかってくるから、余すことなく全滅してくれるね。
「楽ちーん! よし、終わり!」
スタッと立ち上がるスパイスなのだ。
勢い余って、通路もかなり破壊してしまった。
風通しが良くなったので、部屋を突き抜けて進んでいくぞ。
おっと、各部屋で隔離されていたゾンビっぽい女中さんが次々にやって来るぞ。
中には、オカメとか翁のお面を被った上位種みたいなのも。
お経っぽい文言で空間が満たされる~!!
「フロッピー! ミュージックスタート! フリー音楽でお願い!」
『了解ですマスター。普段の待機音楽を流します』
のどかでポップな感じの音楽が流れ始める。
このミュージックに合わせて、スパイスが光を纏いながらパンチ、キック、波動撃!
怨霊たちの『ウグワーッ』という断末魔も音楽で上書きされているので、大変コミカルな絵面になる。
※『サクサク倒されていくぞw』『この動画見ながら作業ができるな』『一気にホラーみが消えた』『やっぱ音って大事なのね』『それにしても、このフォームのスパイスちゃんは動くなー』
「ここで一通り片付けたからお喋りターイム。えーとね、パワードの本来の力を使っていくと超広範囲攻撃になるから、色々危なそうなんだよね。あとは、魔力そのものを大量に吐き出してなんでもかんでも代用するスタイルだから、単体だと使用者の身体能力に頼る感じ? これは合わない魔女は絶対に合わないだろうねー」
マリンナとは全く別の意味で、使用者を選ぶ魔導書だと思う。
インドア派や遠距離攻撃派だと絶対にマッチしないやつ。
それってほぼ全ての魔女じゃない?
『マスター、ちまちまやってるだけじゃ、ちょっと飽きてこない? そろそろ……大技行っちゃってもいいんじゃなーい?』
「やっぱり魔法じゃなくて技だった!!」
『アタシの生まれた理由がもともとは無限に魔力を供給することだもの! そんじゃあ、いっくわよー!! 魔力全開!』
「うおーっ!? なんかいきなりパワーが満ち溢れた気がする! えーと、お肉どもに分かりやすく説明するなら、ゲームで言う超必殺技ゲージみたいなのがいきなりマックスになった感じ?」
※『説明が分かりやすい』『だけどビジュがもっと分かりやすいよ!』『スパイスちゃんの髪が金色になって、マフラーが巨大化してなびいてる!』
「な、なるほどー!! なんかもう、力がすごいことになってるんで、一度ぶっぱなしまーす! 波動撃……フルバースト!!」
両手の間に輝きが集まり、スパイスよりも大きな光の弾になる。
これをぉ~!!
ぶっ放す!!
ダンジョンをピカピカに照らしながら吹っ飛んでいく光弾は、途中に出てきた怨霊たちを『ウグワーッ!?』と巻き込みながら見渡す限りを平地に変えた。
うほー、素晴らしい見通し!!
どこまでも続く古びた和風家屋が、全体的に開放されてしまった感じだねー!
※『スパイスちゃん、こんなに壊しちゃっていいの!?』『ダンジョンは踏破したら元通りになるから大丈夫でしょ!』『元の世界にガワを被せたみたいなもんだもんな!』
「そうそう! それに、これでこのダンジョンのボスまでが分かりやすくなったでしょー」
上も下もスッキリしたダンジョンの先には、ぐねぐねと蠢く巨大なムカデみたいなのがいる。
あっ、ムカデの先端に能面がくっついてて、それが血の涙を流してるじゃあないか。
こいつが外に飛び出して、家主を殺した怨霊かな?
『あれは大技試すのに最高の相手ねー!! マスターと一緒だと、こうやってダンジョンに行けるのね! サイコーじゃない! もっと暴れたいわあ!!』
テンションがさらに上がるパワードなのだった!
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