第306話 注目を集めてしまったので撤退!
「スパイスちゃん! 流石に警察が来た!」
またぎちゃんからインシデントの連絡だ!
暴れすぎたからな……。
公園がガタガタだ。
どうしよう?
『フヒョヒョヒョ、こういうのはミーの仕事ざんすよ! 元の状態は記録してるざんすから、復元していくざんす。……雪が載った状態しかわからないざんすから、それでいいざんすよね? リペアざんす~!』
カラフリーが便利に仕事をやってくれて、どんどん元に戻っていく公園。
雪の下はどうなっているか定かではない!
『ンマー!! あんたたち久しぶりねーっ!! 隔離されてない環境で一同に会するの百年ぶりじゃなーい! あの時はシベリアで会って、お互いのマスターが相争って大爆発で終わったわよねー! 爆発オチなんてサイテー!!』
詳しい時間帯をパワードに聞いてみたら、どう考えてもツングースカ大爆発だった。
とんでもないことをしているな。
『ちなみに一人で全ての魔導書を所持したのは歴代で三人ですよー。ソロモンって名乗ってた魔法使いと、先代と、あとは今の主様ですねー』
「初代とおばあちゃんでめっちゃ離れてる気がするんだけど」
『二千年? 三千年? かなり昔ですねえー。なお、主様が世界初の魔導書七冊をフリーにした上で管理している人ですねえ。いよっ、さすが!』
フロータがよいしょしてくるぞー!
その間に、カラフリーの仕事が終わったようだった。
パワードが切り開いた雪雲も徐々に戻ってきており、また吹雪がやって来ようとしている。
雪の向こうで、パトランプが光っているな。
配信者の皆さんが説明に走っていっている。
ありがたーい!
スパイスもちょっと頭を下げてこよう。
インフィニティスパイスモードで挨拶に行ったら、現場の偉い人がお肉どもだった。
「あっ、スパイスちゃん!! ということはこれは……」
「魔導書回収作業だったんですよー。これで札幌で除雪車がひっくり返される事故は起きなくなりますからね!」
「おお、なるほど。それで、申し訳ないんですが調書を作るので協力してもらえると」
「はーい」
こうして七冊を引き連れてパトカーに乗り込むスパイス。
外にずらりと並んだ現地の配信者さんと、またぎちゃんに手を振るのだった。
「みんな、ありがとー!! あとの配信で、みんなの顔とURL付きでお礼するからねー!! ばいばーい!!」
「スパイスさんお疲れ様でしたー!! ……ああ、パトカーで連れて行かれてしまったー」
またぎちゃんが複雑そうな声色である。
まあね、最後は主催がパトカー連行だからね。
その後、調書作りに協力したスパイス。
迷宮省の夜番の方もオンラインで説明などしてくれたので、サクッと片付いたのだった。
「ご協力感謝します。公園も復元されているようで……問題は無いかと思います! 今度はもっと天候が落ち着いた時に、観光にいらしてください!」
お肉共の警察官がビシッと敬礼した。
「はーい! 遊びに来ます!」
スパイスも敬礼でお返しだ。
周りの警官の人たちが、ほっこりしている。
その後スパイスが、魔導書七冊を周囲に展開したまま飛翔して帰っていくので、ほっこりがどよめきに変わった。
「ま、魔法だーっ」「冒険配信者の世界って現実だったんだ……」
現実だぞ!
つまり、現実味を感じずに暮らせるくらいには、札幌は配信者の皆さんが頑張ってくれているということで。
安心安心。
スパイスはホテルまで帰還するのだった。
「どうもー。帰りました!」
「お帰りなさいませ。首尾は上々のようで」
「あ、受付さん配信見てたでしょ」
「フフフ……」
受付のお姉さんに怪しい笑みで送られつつ、自室へ。
さて、さっきからずっと外に出てる七冊だけど……。
『んー。まだ不完全燃焼ねー!! もっと大暴れしたいわぁー!!』
パワードが元気だなあ!
金色の魔導書がベッドの上でぴょんぴょん飛び跳ねている。
そこに挨拶に行くフロッピーなのだ。
『フロッピーと申します。パワードお姉様でしょうか、お兄様でしょうか』
『あら!! 今の時代の魔導書なのぉ!? 自分の意志がある!? あらぁーっ! あらあらあら!!』
パワードがハッとした後、フロッピーの周りをぐるぐる回る。
金色の本から足が出てきて、トコトコ歩き回るんだ!?
『意志を得た魔導書なんて千年ぶりじゃない? 昔はもっといたけど、アタシたちみたいなオリジナルと違って、擦り切れて消えたり狂って退治されたりするのよねぇ』
『あっしらは自我が確立してるんで、人間と共存できるでやんすからねー。資質がないのは狂うでやんすけど』
それは共存とは言わないなあ!
なお、七冊の中で最も人と共存しやすいのがスノーホワイトなんだそうだ。
『あたしのマスターはみんな別に狂ってなかったもの。魔法そのものも扱いやすいし、破壊的な魔法ばかりじゃないからだと思うわね!』
『ん俺の炎はぁ、権力に結びつくからなぁ。過去の所有者は権力者が多かったぁ』
『私は海だから、それ関係でしたねぇ。でもなぜかみんなおかしくなるんですけどぉ』
『ミーなんか、正気じゃないマスターの方が多いざんすよ! 情緒が安定してないとみんなおかしくなるざんす』
おお、賑やか賑やか!
わあきゃあとお喋りする魔導書たち。
なお、フロッピーからパワードへの呼びかけは、お姉様でいいらしい。
そしてパワードの自認は男性格!
んん~~!?
『ちょっとー! マスターちゃん!! アタシが暴れられるダンジョン、ちゃんと用意してよねぇー!? アタシたち七冊を揃えて、なお正気でスンッとしてられる前代未聞の人なんだから、期待しちゃうわよぉー!!』
「あーはいはい」
こ、これはまた忙しくなりそうだ!
最も古き魔女との戦いに備えて、パワードの習熟訓練もしないとだし。
ショウゴに戻った俺は、今後の計画について頭を悩ませることになるのだった。
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