第304話 いざバトルだパワード!
『そんじゃあ、この邪魔な吹雪をどうかしちゃいましょっか? はぁ~、よいやさーっ!!』
※『あっ! 幼女が四股踏んでる!!』『と思ったら光の柱が空に向かってぶっ飛んでいった!』『空が! 空が……!!』
「あ、月が出た!? ってか、雲が吹き散らされたんだけど」
『でたらめなパワーですねー! これがパワードですよ! ま、地上では加減すると思いますけどー』
雪の公園で月光が降り注ぐ中、降り立つスパイスと相対するパワード。
『ん~! やっぱり相手がよく見える状況じゃなくっちゃ面白くないわよねえ! アタシ、ぶっ倒す相手の顔ははっきり見えないと嫌なタチなの! 行くわよぉ! パワーショット!!』
「うおーっ! 拳の形の光が飛んできた!」
慌てて回避するスパイス!
なんだ今の魔法!?
ヒグマを一撃で倒したやつか!
『ん力を込めて正拳突きしただけだぁ! だがぁ、パワーが凝縮するとエネルギーが生じるから光って見えるぅ! 威力はトラックが衝突した程度だぞぉ!』
「それでもやばいでしょー。軽く放った飛び道具すら、下手すると戦車をひっくり返すような威力なのはぶっ壊れだってー。フロッピー、呪文再生! イグナイトスパイスのぉーっ!! 連続ファイアボール!!」
『かしこまりましたマスター。録音した呪文を再生し、ファイアボールを連射します』
フロータから流れる、多重の呪文!
彼女の周囲に無数のファイアボールが出現し、それがパワードに降り注いだ。
爆炎で相手の姿が見えなくなる。
※『やったか!?』『いかんでしょ』『こーれはフラグ』
「スパイスもそう思うなー。明らかにパワード、今までの相手と格が違うでしょ」
『オホホホホホ! 楽しいわねえー!! やっぱり攻撃はこうでなくっちゃねえ!』
なんとファイアボールを防ぐことすらせずに、爆発の中を悠然と歩いてくるパワード!
当たってるんだよね。
当たってるけど無傷なだけ。
「どういうことですかイグナイトさん」
『んパワー負けだぁ』
「なーるほどね」
冗談じゃないぞあいつ!
『次はアタシの番よぉーっ! そぉいっ! パワースナップ!!』
パワードが思いっきり、手のひらを打ち合わせた。
そこから発生する衝撃波!
周囲で見ていた配信者の皆さんが、「うわーだめだー!」となぎ倒される!
みなさーん!!
なお、スパイスは素早くノーマルモードに代わり、スパイラルでこれを受け流しているぞ!
おっ、スパイラルを使うと全く負荷なくクリアできるな。
『でしょー。パワードと真っ向からやり合うなら私ですからねえ』
「でも色々試してはみたいでしょ。おっしゃいくぞメンタリス!」
『中の人がいないならあっしの魔法は通じないでやんすよ!』
「ええーっ!? じゃあマリンナ&スノーホワイト! えーと、モードはラビットスパイス!」
『ほらほらぁ! のんびりしてたら潰しちゃうわよぉ! ドーン!!』
「うおーっ!! 豪快な浴びせ蹴り!! 地面にクレーターができてるってー!!」
素早く飛び下がりながら、変身するスパイス!
バニーの姿からの、周囲を氷で覆い尽くす環境操作だ。
しかもマリンナの水流攻撃が次々に氷の柱に変化し、パワードの行動半径を狭めていく……。
『狭くなんないのよねえこれが!! うらぁっ!!』
パワードの拳が! 肘が! 蹴りが!
氷の柱や小型の氷山を、豆腐でも殴ってるみたいに粉砕していく!
あー、こりゃダメだ!
完全な環境操作を力ずくでねじ伏せてくる!
「いやあ、噂に違わぬパワード! でも環境攻撃を無効化してる間はこっちに攻撃できないねえ」
「スパイスさんがニヤッと笑った!」
衝撃波を逃れたまたぎさん、いい目をしているねー。
環境無効化に勤しむパワード目掛けて……。
「ラビットストラーイク!!」
横っ面にキック!
『うおーっ!!』
一瞬よろけるパワードに、さらに風の後押しを受けながら連続キック! キック! キック! そしてサマーソルト!
というフィニッシュのところで!
『見切ったわよぉーっ!!』
「うわーっ! 足を掴まれるやつ!! お約束!」
『地面に叩きつけるからねーッ! これくらいで死ぬんじゃないわよーっ! おらぁっ!!』
「死ぬんでツルッと抜けまーす! ブライトスパイス! ヌルヌル魔法!!」
ぬるりんっ!!
抜け出て、パワードの眼の前に着地するスパイスなのだ!
『マスター、よくぞこのマニアックな魔法を把握してたざんすねーっ!? ミーも使い所無いかなーと思ったのに』
「何もかも応用でしょー!」
『うほーっ! アタシ、やすやすと逃げられるの初めてだわ!? アンタ、相当タイマンでのバトルやり込んでるでしょ? 強いわねー!!』
姿勢を立て直すパワードなのだが、その隙は見逃さないぞ!
「おりゃーっ! カラフルビーム!」
『ウグワーッ!?』
あっ、これは効いた!
シンプルに魔力をぶっつける攻撃だからね!
『なんのーっ!』
腕で防いでくるところに……。
『回転! カラフル光輪!!』
循環するブライトスパイスのビームを、回転ノコギリの刃にして撃ち出すぞ!
なお、ダメージを与えるまでは行かない。
どんだけ頑丈なんだ!?
だが、この回転でパワードの防御する腕が弾かれる!
「隙を作ったぞーっ!!」
『やるわねーっ! たのしーっ!!』
パワードが満面の笑みだ!
うほー、やべー!
スパイスはここでアクアスパイスにチェンジ!
「ぶっこめ! 真っ向からメイルシュトローム!!」
『マスター、魔力集積アプリをすでに展開しています。ですが消費量過多な魔法の使用は一回が限度です!』
「了解ーっ!! 横向きにぶっ放すメイルシュトロームで、パワードを飲み込むのだーっ!!」
『これがあんたの切り札!? いいじゃない! だったらアタシも切り札出すわよーっ!! そぉーいっ!!』
腕を跳ね上げられていたパワードは、力ずくで両手を戻してくる。
さらに片足を大きく振り上げて、
『パワーレイド!!』
いきなり謎の力で加速!
光り輝く飛び膝蹴りと、肘打ちがメイルシュトロームに炸裂する!
大渦潮のパワーを、点の力で穿って潰す!
メイルシュトロームが霧散したぞー!
マジかー!!
※『強い、圧倒的に強い』マルチョウ『まさに、力だ! 力によって真っ向から押すだけではなく、点の力、面の力を活用しながらスパイスちゃんの魔法を打ち消してるんだ』『歴代の魔女でダントツに強くない?』『というかここ最近で、ここまで苦戦するスパイスちゃん初なんだけど』
「だよねー! パワード、想像はしてたけどそれよりもずっと強いぞ! バケモンだこいつー!」
『んこと力で押し合うにはぁ! パワードとやりあえる魔導書は一冊しかないぃ!』
『そうでやんすねえ。こいつ迷いが全く無いので、精神攻撃が通じないでやんすよ。あっしの天敵でやんすが、逆に言うと迷いのない魔導書なら戦えるでやんす!』
『もう任せるしかないでしょ~。やっちゃえ~!』
『細かいところのフォローはするざんすが、決め手を持ってるのはただ一冊ざんす!』
『腹立つわー!! だけどしゃあないでしょー! 本気出しなさいよね! ほらみんな! 魔力を! フロータに!』
『んいいぜぇ!』
『やるでやんすよー!』
『いいですともぉ~!』
『ミーのパワーを使うざんす~!』
『うおーーーーーーーーーーーーーーーー!! 魔力が溢れて来ますよーっ! やりますよやりますよやりますよーっ! オラァパワード! 久々に殴り合いですよーっ!!』
光り輝くフロータ!
「こ、これはーっ!?」
スパイスの姿が基本モードに戻る!
だけど、周囲を飛び回る五冊の魔導書が光り輝いているではないか。
『決めちゃうわよぉーっ!! パワード……ダーンク!!』
ジャンプからの拳打ち下ろし!
パワードの一撃は、隕石直撃みたいな威力なことでしょう!
だがーっ!
『ははははは!! 力にはまた別の力で対抗ですよーっ!!』
スパイスの頭上で、フロータが宣言した!
かざしたスパイスの手が、白黒の光に包まれる。
それが、パワードの一撃をふんわりと受け止めた。
『なんとーっ!? パワーが……ずらされるっ!!』
次の瞬間、バビューンっ!と空に向かってぶっ飛ぶパワードなのだ。
自分の力で自分が吹っ飛んだ?
※『スパイスちゃんの姿が……』『変わった……!』ランプ『基本は同じなんだけど、黒いリボンであちこちデコられてる!』
白黒のエプロンドレスの背中に、大きな黒いリボン!
手首には真っ白な袖口だけがあり、そこにも黒くて大きなリボンが!
靴にもリボンがついてるし、スカートには可愛いリボンがたくさんだ!
このリボン、よく見ると∞の形になってない?
シルエットから確認するに、頭の上にもリボンがあるみたい。
「これはどうやら……インフィニティ・スパイスとでも名乗るしか無いようだねー!」
スパイス、最終フォーム登場かー!?
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