第303話 追え! パワード包囲網!?
「えー、札幌でご協力いただいてる配信者の皆さんにご連絡でーす! 出ました! パワードが出ました!」
今回札幌に来るに当たって、またぎちゃん以外にも現地の配信者の人に協力してもらっているのだ!
Aギルドの力だなー!
そういうわけで、ザッコにじゃがバターの撮った動画を貼り付ける。
『あっ、ここマクドナル平岸店が見えた! ここですここ!』『こっちのルートだと……市内の中心に向ってる?』『自分らも出ます!』
「ありがとー! 無理しないでねー!」
『またぎ、すでに出発してまーす!』
「頼れるー!!」
町中なので本物の猟銃は使えないということで、配信をつけながらのスポンジライフルで戦う方針らしい。
現地に詳しくないスパイスのために、またぎさんと現地協力者の皆さんがパワードと交戦し、場所を教えてくれるのだ!
ありがたーい!!
さて、スパイスは夜間外出しますよー、とホテル側に伝えてあるので、このまま出発しても問題なし。
「はい、申告いただいていますね。いってらっしゃいませ」
受付のお姉さんはスパイスを見ても、至極冷静な対応だった。
いや、なんか唇の端がヒクヒクしている!
スパイスが去った後、隣りにいた同僚と「マジでスパイスちゃんなんだけど!」みたいな事を言っているのが見えたぞ!
お肉どもなのか……!?
どこにでもいるなあ。
こうしてスパイス、イグナイトとスノーホワイトを使って防寒しながら出撃!
ふわりと舞い上がれば、人も車も邪魔にはならない。
吹雪の中だから視界だけはむちゃくちゃ悪いけど!
※『うおおお視界ゼロ!!』『スパイスちゃんのお尻だけが見える~』
「フロッピーに風が当たらないようにしてたら、ポジションがそこだったんだよね! 大丈夫、見られてもいいパンツです!」
※『助かる~』ザブトン『外は寒くても心がホットになりますな』特上カルビ『このロリコンどもめー』
実際、フロッピーはちょっと離れてスパイスを撮影する必要がある関係上、吹雪の被害が心配なんだよね。
配信者本人と一体化し、ちょっとやそっとでは壊れなくなっていると聞いたことはあるけど。
「スパイスはフロッピーには過保護だからね!」
『マスターの心遣いを感じます』
『あら、フロッピーちゃんがぴょこぴょこ動いてますよ。愛されてますねえー』
『ん俺達でフロッピーを守るぞぉ!』
うおーっと声を合わせる魔導書たち。
兄姉からの濃厚な愛じゃん。
そこに、先行していた配信者のみんなから連絡!
『いやーきついっす!!』『力こそパワーみたいな人ですね!?』『うわーっ、マントを回転させてBB弾防いでる!』
『スパイスさーん!! 豊陵公園まで誘い込みました! ですけどこの人……魔導書? 物凄く強くって! ダンジョンのデーモンよりも全然つよーい!!』
「だよねー!! ヤバいやつだからあんま深追いしないでね! フロッピー、豊陵公園検索!」
『すでに完了していますマスター。お姉様に方向を連絡しました』
『はいはい了解しましたよーっ!! フライトの方向を修正!』
「うおー! オートパイロットー!!」
※『フロータにはそんな機能が!?』『うおおまさにパワード包囲網だ!』『魔導書と配信者の絆が!』
「そんな感じー! じゃがバターもありがとうね! 家に帰ってゆっくり配信見て!」
※じゃがバター『はい!!』
こうして豊陵公園に到着!
台形の形をした公園だねえ。
あーっ、いかーん!
配信者の皆さんが倒されてる!
深追いするなと言ったのにー!
『オホホホホ! アタシに挑戦してくるからどんなものかと思ったら! まだまだ鍛えたりないわねえ! だーけーどー! アタシってばそいつの伸びしろが分かるのね! みんな喜んで! みんなみんな、伸びしろのカタマリよぉー!! また強くなってア・タ・シ・に再挑戦してきてねン!』
※『うわーっ!!』『声が可愛いけど、言葉の内容が!!』『濃いなあー!!』
「濃いねー!! 凄いのが出てきたなあ。あれがパワード?」
『何も変わってないわねえあれ。そうそう、あれがパワードよ』
金のマフラーに、灰色のマントを纏った幼女が、オネエ語を喋りながら勝ち誇っている!
「おーいパワードー!! お前が探してるのはスパイスだろー! ここだぞ、ここにいるぞー!!」
『あーら!! 誰かと思ったら、あなたなのね!!』
スパイスを見上げたパワード。
金髪で目の色も金色で、なんか吹雪を圧するくらいにギラギラ輝いている。
ヤバいやつってのがすぐ分かる。
「みんなー! スパイスが到着しましたー! あとはやりますので撤退をお願いしまーす!」
「はーい!」「了解です! いてて……」「でも加減してくれたよな」「ヒグマ相手だと容赦なかったのに」
「うう、自信喪失です……!! 世界は広い!!」
またぎさんがガックリしている!
「相手が悪すぎただけだからねー! 気にしないでねー! あれといい勝負できるの、ヤタさんとかスレイヤーさんくらいだからね!」
『そうよー! 野生動物って伸びしろが薄いじゃない? だからアタシはその場で処しちゃうの! でも人間はそこからグーンと伸びるでしょ? 強くなってえー! そしてアタシに挑戦して来てー!! 強い人、だーいすき! ラブラブ! チュッチュッ』
「濃いなー!!」
スパイスが公園に降り立つと、パワードと一対一になった。
「ところでパワード、核になってる力の魔女はどうなったの?」
『あらいい質問ね! あいつってばアタシを騙していいように使おうとしたから、キュキュッとまとめて魔力の結晶にしてあげたわ! この姿はあいつのものを借りてるけど、力の魔女? そんなふうに名乗ってたやつはもういないわねえ』
仇、死んでた!!
いやあ、薄々分かってたけど、衝撃的だなあ。
魔導書を奪っていった連中、誰一人としてまともな死に方してないじゃん。
魔導書、本当に相性が大事なんだな……。
『それじゃあ、始めましょっか? アタシ、すっごく楽しみにしてたんだから!』
「よっしゃー! 七冊目! 力の魔導書パワード! いざ尋常に勝負だぞー!」
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