第298話 ダンジョンに幼女バニー現る!!
魔王が倒されたと言っても、ダンジョンが無くなったわけではない……。
今日もまた、手つかずのまま放置された家並みの奥で、新たなダンジョンが産声を上げていた……。
「ってことでこんちゃー! まずはいつものスパイスで行くぞー!」
※『こんちゃー!』『楽しみ!』ランプ『あのシルエットは……』ザブトン『拙者、ドキがムネムネして参りましたぞ』マルチョウ『落ち着け、まだ盛り上がる段階ではない』
お肉どもがざわついているな……。
スパイスの変身を楽しみにしているらしい。
その前に、ダンジョンの解説を!
「昔作られた家で、道路に面してない古い家は法律上改築ができないんだよねー。だから古びていって、こうやって放置されてダンジョンになったりがよくあるの。ちなみにダンジョン化したあとは、合法的に解体できるようになるという法の抜け穴があってね」
つまり!
手放したい物件がダンジョン化すると、国のお金で解体してくれるというわけなのだ!
解体業者も現代魔法を使えるようになってて、昔よりもスムーズな作業を実現してるらしいしね。
※『ほえー豆知識』おさかな『つまり海底にある難破船も……』
「日本の領海なら、難破船もダンジョン化したら解体対象になるねー」
※おさかな『魚たちのためにもダンジョン化しないように管理せねば……!』
おおっ!
おさかな熱いなー!
「……と焦らした所で、本番行ってみよう! うおー! ダンジョン突入だぞ! そして頼むぞスノーホワイト!」
『ほんっと仕方ないわねー! 今だけ特別なんだからね!?』
※『エッ!? ツンデレ系魔導書!?』『ウィンディと一緒だった時は強気なお姉さん系だったのに!』『そうか、スパイスちゃんと一緒だとこんなことに……!!』『これがNTR……!』
ウィンディみたいな反応してるやつがいるな!!
「あくまで一時的に借りてるだけだからねー! スパイスが抱えている超大型案件が終わるまでのレンタルです! それじゃあ、変身だ! メタモルフォーゼ!」
『凍結!』
なんか変身の掛け声っぽいのが出てきた!
次の瞬間、スパイスの体を緑の風が吹き抜ける!
エプロンドレスが、光り輝いて緑のバニースーツに変わったぞ!
さらに足元から、頭上から、輝く雪が吹き出してくる!
これがスパイスに触れると、ウサギ耳や襟と蝶ネクタイ、尻尾に袖にブーツになった!
「完成! ラビットスパイス!」
※『うおおおおおおおおおお』『うおおおおおお』『かわいいいいいいいいいい』『なんたることだ』ランプ『こりゃあ偉いことですぞ偉いことですぞ』ザブトン『拙者昇天』マルチョウ『確かに今まで、いそうでいなかったバニールック……!!』特上カルビ『ああ~、なでなでしたい~!』
お肉どもには大好評じゃん!
コメントが止まらない!
『うわーっ! なにこれ!? もりもり力が湧いてくるんだけど!?』
「そうだぞー。これが同接のパワーってやつだぞー! さて、ダンジョンの中に踏み込みますと……。雰囲気がある廃屋ダンジョンだねー」
崩れかけた廊下がどこまでも続いている。
部屋と廊下を仕切る扉はどれもこれも壊れていて、いつそこからモンスターが飛び出してきてもおかしくない。
「普段の配信なら、迎撃の準備をしながら移動するんだけど……。なんとラビットスパイスは新しいやり方で対応ができるのです! うおー! アイスロード!!」
廊下が一瞬で凍りつき、スパイスがその上に乗るとツルーっと滑り出した。
『もがーっ!! もがっ!? がーっ』
横から飛び出してきたのは、ブリッジ状態の怨霊!
だけどアイスロードに引っかかって、つるつるつるっと滑る。
そのままスーッとスパイスの前を横切って別の部屋に流れていった。
※『何たる間抜けさw』『怨霊って滑るんだ!?』マルチョウ『魔法の氷だから滑るんだろうな……』
「はい、後ろから追撃! ウインドブラスト!」
『ウグワーッ!!』
※『見えない所で倒されるのあり!?』『怨霊に見せ場を与えない!』『バニールックなのにらしい見せ場がないぞw!』『いつもより優雅まであるw』
「いつ風と氷のフォームだからって激しく動き回るって言った? ウィンディは自分が飛び回るスタイル! スパイスは新たなスタイルを模索中だぞー! 氷や風で周辺環境を作り、敵をコントロールしつつスパイス自身はこう、優雅にくるくる回る~」
※『ああ~、バニースパイスちゃんがくるくる回るんじゃ~!』『場を完全にコントロールしている!!』『属性フォームってストレートなイメージだったけど、変化球で来たなあ』
「スパイスが色々な魔導書のフォームを経験したからこそだろうねー。なんか新しいやり方を模索できるようになった! おっと、次のお客さんをご案内!」
設置型ダイヤモンドダストで、飛んできた怨霊を迎撃!
カチコチに凍りながら、『ウグワーッ!?』と落下する怨霊。
これを風でビューンと滑らせ、壁にぶつけて粉々にした。
「ラビットスパイスは、環境支配型魔法少女で行く!! なお、魔法って面白くって使い手が持っているイメージで、同じ魔法でも全然効果が変わるからね! あ、ちなみに……」
いよいよ登場したダンジョンボス。
二階からバタバタ音を立てて降りてきた、上下逆さまで頭がぐるぐる回転している女の人!
出現と同時に、スパイスの氷魔法が炸裂した!
「アイシクルバインド!」
『ウグワーッ!?』
※『敵を拘束した!?』『あれだ!』『あれが来るぞ!!』
スパイスは風を纏って飛び上がる!
まあ天井の高さの限界があるから、程々の高さね。
そして真横に向かって、風をまといながら突進!!
「ラビット~!! ストラーイク!!」
氷で蹴り足を強化しながらの、ミサイルキック!
『ウグワーッ!!』
さらにふっ飛ばした怨霊にキックを連打!
キックのステップだ!
そして最後にサマーソルトキックをかまして、ピョーンと回転。
床にスタッと着地した。
遠く離れたところまで吹っ飛んだ怨霊が、ドカーン! と爆発する。
※『決まったー!!』『風と氷の魔法少女はやっぱこれよ』『ウィンディのと違って多段式になってた!』
「やっぱね、アレンジしていかないとね!」
ということで、配信は大好評のうちに終わるのだった。
ダンジョン化も解け、廃屋は近く解体されることに。
なお、この配信をウィンディがアーカイブで見たそうで、『今度真似してみる!』との連絡がザッコでやって来たのだった。
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