第294話 自由に観光していくのだ
さてさて、ダンジョン配信もやってしまったことで、ここからの数日は完全なフリータイムということになった。
俺はマシロと赤ちゃんズを連れ、ベルベテール展望台にやってきた。
もうね、展望台以外、雄大な大自然しかない島!!
無論、海際には町もある。
そこを抜けて、山の中に分け入っていくのだ。
ニワトリがやけにいたな……。
野生化してるっぽい。
俺が赤ちゃんたちを浮かせながら移動しているので、他の観光客の人がめちゃめちゃびっくりしたりしていた。
「日本で冒険配信者をしています。だから魔法が使えるんですよ」
「オー! そうだったんだね! きら星ハヅキによろしくね!」
日本の配信者と言えば!
世界を救ったきら星はづきなのだ。
どこでも名前が通じてしまうな。
お陰で共通の話題になり、コミュニケーションを取りやすい。
「ショウゴさんがあっという間に、外国の人とのやり取りをマスターしてる……!」
「フフフ、楽をできる手段を見つけるのは得意なのだ」
外国人の夫婦と挨拶しながら一緒に歩いたりなどする。
我が家の赤ちゃんたちは、日本とまるで気候が違う地域に来ても全く気にしていないようで、宙に浮かびながらぐうぐう寝ているのだった。
静かで助かる。
何かあっても、魔導書たちがワーッと集まってきてお世話してくれる。
うちの夫婦の子育てはかなりイージーになっている気がするぞ!
そして、展望台から素晴らしい景色を楽しむ。
スパイスに変身すれば、空を飛びながらいつでも見放題なんだが、マシロはそうはいかない。
高いところからの絶景に感激して、写真をぱしゃぱしゃ撮っているではないか。
「あー堪能したッス」
「ずっとファインダー越しにしか見てないんだから、ここからは自分の目で見てみてはどうだろう」
「ハッ! い、言われてみれば……」
我に返ったマシロは、そこからは自らの目でこの絶景を堪能することに決めたようだった。
記録はいくらでも残せるが、自分フィルターを通して得た記憶は意識しないと作っていけないものだからな。
その後下山し、モーレアドルフィンセンターに行くなどした。
イルカと触れ合えるぞ。
なお、イルカを担当している職員がマンマーとマーメイドだったりした。
「ここにも異種族の採用枠が……」
「あっ! あなたスパイスさんですね? この魔力の気配は同胞から伝え聞いております」
マンマーが丁寧に会釈してきた。
「あ、これはどうも。マンマーのネットワークは凄いなあ……」
「ハハハ、我々、首から下が人間なので、人間が使えるガジェットは全て扱えるんですよ。ワイヤレスイヤホンもいけます」
「ちょっと羨ましいんですよねー。私達はほら、耳がヒレなんで」
マーメイドのお姉さんに羨ましがられるマンマー!
見たこと無い光景だ。
そしてイルカと触れ合ったりしたのだが、どう考えてもマンマーとマーメイドのほうが刺激が強い。
異種族が出てきた世界で、イルカと触れ合う希少性は薄れているのではないか……なんて俺は思ったのだが……。
案外、海外の観光客にはイルカは受けているのだった。
分からん。
「普通の人からすると、半分人間の方が珍しさが薄れるんじゃないッスかね? いや、あたしから見ても異種族の方たちの方が目立ってる気がするッスけど」
「正常性バイアスかも知れないな……!」
それはそうと、イルカとは接しておいた。
マリンナも近くにやって来る。
「マリンナ、イルカは頭がいいというけど、魔導書を使って魔法を使えるレベルなのか?」
『いえ? ただの動物ですから無理ですよぉ?』
バッサリ行った!!
海を司る魔導書が、イルカの知性はそのレベルには全然到達してないと判断したなあ。
なお、マリンナ的には……。
『タコの寿命があと十倍あったら魔法使えると思いますよ~』
だそうだ。
タコの方が評価が高いのか。
結局、魚類の形に最適化してしまうと、自由になる四肢の欠落から魔法を使用できるように知性が発達しないんだそうだ。
ほー!
つまり、様々な異世界のどこかには、無数の腕を持つ触手マンみたいなのがいて、そういうのが究極に魔法を扱える可能性があると……。
『まあ、腕が多くても制御できる魔法には限界がありますし、そういう種族は魔力を根こそぎ使い切って滅びてますですけど~!』
あっはっはーと笑うマリンナなのだった。
知ってる口調だよねそれ!?
どうやら彼女がやって来た異世界では、そんな事があったらしい。
案外、人間から六肢人類くらいまでが魔法を使うにはちょうどいいのかも知れない。
こうして観光が終わり、元の島に戻って来ると、大罪諸氏はボラボラ島で海のアクティビティを堪能していたとの話を聞いた。
いいねー。
いつかこっちに来た時には、そっちにも行ってみよう。
その頃には、我が家のおちびたちは走り回るくらいにはなっていることだろうな。
『さて! フリーな一日がこうして終わったことで、明日には解散となるわけだけど』
イラちゃんがおじさんモードで総括に入った。
今回の集まりの主催だからねえ。
『みんな、ザッコの交換はしたかな? いつでもVRで会えるから、連絡は取り合おうな』
うおーい、と了解の返事を口にする一同。
なお、ここでウィンディはようやく我が家の赤ちゃんズに触れる機会を得たようで……。(飛行機の中では、おしゃべりに夢中で触っていなかったらしい)
「こんなにちっちゃいのに、もう魔導書の継承を!? すっごーい!」
とか言ってちびたちのほっぺを突いているのだった。
「私にも子どもが出来たら、やっぱりスノーホワイトを継承する感じかな……。うーん、魔導書がたくさんあるスパイスが羨ましい」
『あら! 私のキャパを舐めないでほしいわ! 一冊で親子三代くらい担当してみせるわよ!!』
スノーホワイトが頼もしいことを言っている!
だが、魔導書の能力的には可能なんだろうなあ。
ということで、ポリネシアの旅はこれで終わり。
何事もなく、今回のイベントは幕を閉じるのであった……。
『主様、パワードが北海道に上陸したみたいですよ!』
「な、なんだってー!?」
いや、最後にフロータがぶっこんで来たぞ!!
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