第286話 やって来ましたポリネシア!
「海がいつまでも続くネー」
クシーが窓に張り付いてそんな事を言っている。
実は彼女、飛行機に乗るのが初めてなんだそうで。
「そりゃあステイツの外は全部海だもん。ちょっとだけジャパンとかヨーロッパがあるだけヨ」
「ウィンディが誤解を招くような話をしてるー!」
現在もちょこちょこ配信中。
なので、スパイスの姿で機内をちょこちょこ歩いているのだ。
うーん、ビジネスクラスが大罪勢貸し切りになっているー。
マシロとうちの子たち以外は、大罪と魔法少女しかいないぞ。
なんだこの空間は。
※『なんだこの空間』『濃すぎるw』『ここにいるメンツで魔王だって倒せそうだ』『そもそも大罪勢はそれぞれが魔王で』
うんうん、リスナーもなんと言っていいか分からないようだ。
だが、とても楽しんでもらえているのは分かる。
赤ちゃんを除くとこの中で最年少なのに、一番センシティブな見た目のクシーと、年長組だけど一番幼く見えるイラちゃん、スパイス組とか。
ウィンディはなんだかんだで、スパイスよりもほんのちょびっとだけ大人っぽく見えるんだよね。
幼女と少女の狭間だ。
そして年齢不詳のうぉっちもん!
本来センシティブな姿だけど、今は服を着てるベルゼブブ!
このメンバーでわちゃわちゃしながらお送りしております!
アテンダントさんも気を使って、動線をこっちに合わせてくれる。
すみませんねえ。
「いえいえ! スパイスちゃんにイラちゃんと、私がよく知ってる配信者さんがいてびっくりしました! いつも世界の安全を守ってくれてありがとうございます」
感謝されてしまった。
どうやらアテンダントさんのご家族がダンジョン禍に遭った時、スパイスが助けてたみたいなんだよね。
なるほどなー。
たくさんダンジョンを踏破したからなあ。
『あのー、ミーはお腹へったんだけどー』
『あっ、私も常にお腹へってます』
おっと、クシーとベルゼブブが機内食を要求している!
乗っている人数がそこまで多くないので、余裕はあるらしい。
アテンダントさんたちがニコニコしながら、すぐに準備してくれた。
おっ、中華だ。
クシーとベルゼブブがもりもりとご飯を食べている。
クシーは一食目だけど、ベルっちはこれ四食目くらいだよねえ。
『いやー、私は暴食なので』
「自覚的~! でもコントロールできてるの凄いねえ」
『暴食成分は五割くらいはづきの方に流れてるからねえ。配信終わったらさらにわがままボディになっちゃうって言って、はづき今から走り込みしたりしてダイエットしてるし』
「ここではづきっちの裏話が聞けると思わなかったなあ」
※『気にしてたんだw』『何気にこの配信、すごい情報がポロポロ出てくるのでは』『うぉっちもんが目をギラギラさせながらAパッドにメモしてるぞ!』
「その辺詳しく聞いてもいいのだ? あ、報酬はだしますのだ」
まとめ動画のプロ!!
強欲の大罪が暴食の大罪にインタビューするという不思議な光景になってしまった。
クシーはクシーで、色欲を振りまく対象もいないので、食後の眠気にやられてぐうぐう寝ている。
「クシーってたくさん食べて寝て、そこで生まれるお肉は全部胸とお尻に行くんだって。羨ましい~」
「ウィンディはお腹周りに行くの?」
「そうデスネー」
ウィンディが悲しそうに頷いた。
人間と大罪の差だなあ。
こんな風に、楽しい空の旅は長いようで一瞬。
あっという間にフランス領ポリネシアです!
真っ青な海の中に、緑の島が三つくらい並んで浮かんでいる。
クシーがバッと目覚めて、窓に張り付いた。
『海きれー! 泳ぎたーい!! ミー、泳げないけど』
泳げないんだ!?
「じゃあ後で教えてあげよう」
『ほんと!? スパイス頼りになるー! イラも泳げないらしいからー』
「そうだったの!?」
「いやー、実はね。イラはこう、炎属性だからねー。水は苦手でねー」
これは教えるのがめんどくさくて泳げないって言ってるだけの可能性もあるな……。
さて、どんどんポリネシアが近づくと、島の細かな風景も見えてくる。
海に浮かぶ船やヨット。
おっ、街がある!
さんさんと降り注ぐ日差しに照らされて、なんだかワクワクしてくるね。
その中にある、ファアア国際空港に着陸!
なかなか大きな空港で、既に何機もの飛行機が停まっていた。
タラップ車がワーッとやって来て、昇降口になる。
ファーストクラスの人たちが降りた後、スパイスたちも降りるのだ!
「ちなみにイラちゃん、ビディさんとの合流はどこで?」
既にショウゴに戻った俺。
隣には赤いコートの男になったイラちゃんがいる。
『彼女なら、家族ぐるみで迎えに来ているはずだよー。横断幕作ってくるって言っていたから、すぐに分かるんじゃないかな』
そんなイラちゃんをじーっとマシロが見ている。
「イラちゃんって、元の姿に戻ったときの方が声にエフェクトが掛かるんスね」
『イラは、イラに変身してるときの方が人間に近いからねえ』
深く突っ込まないぞ!
友人同士の間で無用な詮索は厳禁だ。
ボディチェックにパスポートのチェックをし。
なんと全大罪勢がストレートにパスして出てきた。
『書類的に、イラたちは極めて正当な方法で来てるからね。それに外国でやらかした経歴も一切なし。国籍も正規のもの! 残当よ』
「渋い男性の声でイラちゃんの口調なのは凄いインパクトだな……」
『変身したら口調が変わるスパイスちゃんの使い分けが凄いんだって』
さてさて!
外に出てくると、その横断幕はすぐ目に入った。
イエローとグリーンに、ヘビのイラストがついた横断幕があり、そこに日本語と英語の手書き文字で、「ようこそ!! タイザイゼイ、ゴイッコウサマ!」みたいなのが書かれていたのだ。
おおーっ、現地のファミリーが満面の笑顔で迎えてくれている!
片方で横断幕を支えているのは、ウェーブした髪を長く伸ばした、小麦色の肌の女の子だった。
「ヨウコソー! 待ってたよー!!」
インヴィディア・レヴィアタン。
ビディちゃんとの邂逅なのだ!
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