表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TSして魔法少女になった俺は、ダンジョンをカワイく攻略配信する~ダンジョン配信は今、カワイイの時代へ~  作者: あけちともあき
魔女の子どもは双子編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

279/373

第279話 年末に親父が来たのだ

 父が訪ねてくるという連絡があったので、俺は八王子駅まで迎えに行った。

 めったに行動範囲から外に出ない人だから、絶対に迷うだろという確信があったのだ。


 案の定、父は改札前でまごまごしている。


「おーい、こっちだこっち」


「お、おお」


 前も来た事あるだろうに、すっかり忘れているな。

 遠出することそのものが苦手な人なので、仕方ないと言えば仕方ないが。

 それがどうして、年末という込み合う時期に来るのか。

 いや、農家関係の仕事が一通り終わったからだろうな。


 父は灰色のコートを着て、落ち着かなげにキョロキョロしている。


「や、やけに人が多いな」


「甲府だって年末は人が多いだろ? それよりもちょっと多いくらいだよ」


「そ、そうか」


 口下手な人なので、それで静かになる。

 俺は父を連れて乗り換え。

 自宅に向かうのだった。


 そうすると、驚くことに普段は無口な父が口を開くではないか。


「どうなんだ? 子どもは元気か?」


「ああ、元気だ。すくすく育ってるぞ」


「そうか」


 おっ、笑っている。

 なんだその嬉しそうな顔は。

 俺が結婚した時にしか見たこと無いやつだぞ。


 この人も丸くなったなあ。

 というか、昔から感情表現が苦手なのかも知れない。


 何より……。

 この昔かたぎで口下手な男が、魔法少女になる可能性があったということを考えると……なんとも不思議な気持ちになる。


 なお、父は割と若い頃に俺が生まれているので、実はまだギリギリ還暦前だ。

 従妹のしおいが来たときは、父が双子の孫ができた話を農協の仲間に自慢していたと聞かされた。

 そんなコミュニケーション能力があったのか!!


 父を連れて、最寄り駅に到着する。

 我が家は人を泊められるスペースが無いのと、マンションが人外魔境みたいなものなんで、別に宿を取ってもらっている。

 そこに行くまでは、家でゆっくりしてもらいたい。


「ほう、それがショウゴの父親か」


「あっ、社長! お疲れ様です」


「うむ。なるほど、この素質あってこそのショウゴか。納得したぞ。だが長期の滞在は勧められんな。目覚めてしまう可能性がある」


 それだけ言って社長は自宅に戻っていった。

 なんて不穏なことを言うんだ!

 何に目覚めるというのだ!


 エレベーターに乗り、最上階へ。

 人間が住めるフロアは最上階しかないからね。


 6つの部屋があるフロアなので、あと三組は住めるはずだ。


 扉を開けると、マシロが待っていた。


「お義父さん、遠路はるばる、ようこそお越しくださいました!」


 ペコっと礼をするうちの奥さん。

 うーむ!

 いつものざっくばらんな感じとは別人のようだ!


「あ、ああ。ショウゴが世話になっています」


 親父もかしこまって会釈した。

 手土産などを渡してくる。

 ほうとうですか。


 そう言えばこっちに住んでから、全く食べる機会がなくなったなあ。

 そしてついに、うちのちびたちに対面する親父。


「おお……おおおおお……!」


 なんか感動しているな!?


「触ってもいいかい?」


「いいぞ」


 そーっと赤ちゃんズの手に触れて、親父がなんとも言えぬ顔になった。

 あれは嬉しすぎてどう表現したらいいか分からない顔だな、きっと。


 うちのちびたちは、まだ人見知りをしたりする年齢ではないため、新しく登場した人間をじっと見ている。

 おっ、ホムラが手を伸ばして、親父の指を掴んだ。

 双子の姉はなんか、積極的に接触してくるんだよな。


 で、ミナトはじーっと見るだけ。

 赤ちゃんのうちから個性が分かれてきている。


「子育ては大丈夫か? 大変じゃないか? 俺ができることがあったら、何でも言ってくれ」


「おう。今のところは大丈夫だ。ありがとうな」


「ありがとうございます、お義父さん」


「ああ。ああ」


 こんな父親を見るのは初めてだぞ!!

 なんか浮ついてるじゃないか。


 ホムラとミナトを交互に抱っこさせてやり、写真を撮る。

 そして親父のスマホに送ったら、


「2つ並べて壁紙にしたりできないか?」


「なるほど、その手があったか……。ちょっと待っててくれ」


 俺はPCで画像を組み合わせ、一枚にした。

 上にホムラを抱っこした親父。

 下にミナトを抱っこした親父。


 そんな壁紙を見て、親父がもうゆるゆるな表情になる。

 あんた、そんな顔できたのかあ。


「お義父さん嬉しそうッスね。あたしもなんか嬉しいッス」


「よっぽど孫ができたのが嬉しかったらしい。シオイと同居してるのになあ」


「ショウゴさんの子供だから、また特別なんじゃないッスか? 今度はこっちから遊びに行きましょうよ」


「うーん、行くかあ……」


「んもー。なんでそんなに腰が重いんスかあ!」


 マシロにお尻をぺちぺち叩かれてしまった!

 こうして親父は我が家で、夕食まで付き合ってからホテルに向かった。


 無論、俺が送っていった。


「また来ていいか?」


「おう、もちろん。むしろ、マシロが実家を見に行きたいって言ってるから、もうちょっとちびたちが大きくなったら一緒に行くよ」


「おお! そ、そうか! だったら連絡してくれ」


「分かった。じゃあ電話番号を交換しておくか……」


 なんと、親父と連絡先を交換しあうのはこれが初めてである!!

 実は今まで、シオイを中継にしていたのだ。


 母親が死んだ時に、色々わだかまりができて距離が生まれてしまった俺と親父だが、俺も親になったし親父も祖父になったし、そろそろ歩み寄るべきなんだろうな。


「じゃあ、また明日な親父。明日はちびたちのベビーカー押してもらうからな」


「おう! 任せろ!」


 やたら力強く応える父なのだった。

お読みいただきありがとうございます。

面白い、先が気になる、など感じられましたら、下の星を増やして応援などしていただけると大変励みになります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
泣ける…自分は娘の子を見る事ができるだろうか。 ショウゴは親孝行者だ。
な、なるほど。 素質があるが「フツー」すぎて、変な力向きではないと。
昔かたぎで口下手な親父さんは魔法少女になってたら… スパイスちゃんと真逆のクールなミステリアス美少女になってたんですよ、多分
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ