第273話 冬の赤ちゃん散歩
冬になったと思う。
もう12月だもんなあ。
毎日が忙しくて、時間が一瞬で過ぎる。
我が家の双子も、ついに生後三ヶ月になった。
双子用赤ちゃんベビーカーを展開し、いざお散歩!
「んー、最近は2日に一回くらいしか外に出ないッスからねえー」
「魔導書が手伝ってくれても、育児はいくらでもやることあるもんなあ」
とりあえず最近は、ホムラもミナトも抱っこされたがる素振りを見せるようになったので、一日に数回抱っこしている。
日々大きく、むちむちと育っていく我が子よー!
そんな可愛い子たちをお散歩に連れて行くわけだ。
赤ちゃん用の冬装備を身につけさせて……。
おお、もこもこしてる。
「うちのコかわいすぎ……!?」
ハッとするマシロ。
親バカになっちゃう気持ち、分かるよなあ。
『では、あっしは留守番しているでやんす~! 何かあったら連絡するでやんすよー』
画面の前で、迷宮省の新長官就任式のアーカイブを見ているメンタリス。
そうそう、就任式で、たくさんの職員を前にした木霊長官が凄いことをやったのだ。
なんと、メタモルフォーゼして魔法少女エコーになったのである!
職員一同、唖然。
『このように、わしは冒険配信者の立場というものを身を以て体験してみた! 訓練を積み、魔法も魔導書の補助があれば使えるようになっている! 我ら迷宮省は国民に寄り添い、冒険配信者と手を取り合い、日々の平和を守っていくものである! これを再度、皆の心に刻みつけて欲しい!』
とか言うのを、銀髪和装ミニスカ幼女が宣言するので、職員の人たちがポカーンとして聞いていた。
で、我に返ってワーッと拍手する。
こんなん拍手するしか無い。
世間でも大いに話題になった。
ベテラン議員が身を以て冒険配信者をリスペクト!
とかネットニュースでは好意的に描かれていた。
それからそれから……。
「おっ、ギルドの相談役からLUINEが来てる」
「相談役って、はづきちゃんの分身って言う?」
「そう。現役、地球産の魔王」
マンションのエレベーターの中でチェックしておく。
魔王ベルゼブブが、ギルドの入れる物件でいいのが見つかったという情報を送ってきてくれている。
今まで、都内のレンタル事務所使ってたからねー。
まだ関東圏と東北なら仙台、中部なら名古屋、関西なら神戸、九州なら福岡にしか事務所がないので、これを各県一つになるまで広げていきたい……!
というのがAギルド全県構想。
その本部である東京事務所がレンタル事務所で、ビルの一室じゃちょっとねえ、という話になっていたのだ。
これをベルゼブブが解決!
『はづきが攻略したダンジョンがキレイに形残ってるから、ここを使おうー』
丁寧に写真が添付されている。
マメな魔王だ。
半分はきら星はづきだもんなあ。
なお、近く、イラちゃんやアメリカから新色欲の大罪を招いて一緒に遊ぶらしい。
なにそれ面白そう。
そんなこんなでエレベーターを出て、寒風が吹く外界へ。
うちの赤ちゃんズは寒さにハッとした後、ベビーカーの中にぎゅっと身を潜めた。
もこもこしてても、顔に風が当たるもんなあ。
だが、外の空気に触れることは大事!
ベビーカーを押しながら、クリスマス飾りなどが目立ち始めてきた町中を歩き回る。
我が家は駅からほど近いから、すぐに駅前商店街に到着するのだ。
ここ、商業施設が潰れて商店街が残ったという稀有な場所なんだよな。
「あっ、ガードマスクさんのパン屋さん」
「いいね、パン買っていこう」
そういうことになった。
ベビーカーを押して入店する。
ガードマスクの中の人がパンを補充しており、
「いらっしゃい」
と笑顔を見せた。
まだスパイスの正体たるショウゴを、彼には知らせていないからね……!
ガードマスクがチラチラ赤ちゃんを見ている。
ホムラがガードマスクを見て、ポカーンと口をあけた。
ガードマスクも口が開く。
つられちゃうよな。
その間にマシロがトングをカチカチさせながらパンを威嚇。
かなりの量のパンを買うことになった。
冷凍して、オーブンレンジで焼き直して食べるか。
お会計して立ち去る時、ガードマスクが赤ちゃんたちに小さく手を振っていた。
もうすぐ、うちのちびたちも手を振り返せるようになるかもなあ。
商店街を外れ、一駅分歩いて行こうという話になる。
パンは双子ベビーカーの収納スペースにイン!
大きなベビーカーだからこそ、様々な機能が搭載されているのだ。
二人で交互にベビーカーを担当しつつ、冬の町中を堪能する。
「ショウゴさんもあたしも、ずーっと家の中ッスからねえ」
「ああ。仕事がどうしてもな……。異世界部屋にルームランナーを導入しておいて正解だった」
そう!
我が家にルームランナーが追加された!
異世界との扉代わりに使っていた部屋を、ご家庭ジムとしても使うことにしたのだ。
一部屋遊ばせておくのは勿体ないからね。
あ、しかしうちのちびたちが大きくなったら、子供部屋も用意しないとな……。
そこは社長に相談してみよう。
何か大胆な増改築をやってくれる可能性がある。
ということで、日々ルームランナーで交代交代で走り、運動不足を解消する夫婦なのだ!
なんだかんだで俺は、Aギルドの仕事がまだまだあってね……!
正職員に引き継ぎをしているから、もうすぐ楽になるとは思うんだけど……。
というところで、公園に到着!
そうしたら、見覚えのある顔がいた。
地元の高校生で結成された配信者グループ、シェイクストライカーズの地元出身組だ。
リーダー格のレッドな女の子と、クールな黒帽子の男の子。
もうすぐ高校卒業という頃合いだろうが、なんか二人でいい雰囲気になりながらベンチに座っているではないか……。
これは……スパイスになってちょっと顔を出したい……。
「あたしはちょっとゆっくりするから、ショウゴさんは好きなことしていいッスよ!」
「ほんと? ではお言葉に甘えて……」
スパイスに変身して、若者たちに話しかけてみるのだ!
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