第272話 二ヶ月で爆発的成長を見せる赤ちゃん
「だーうー」
「んまー」
「めちゃくちゃ赤ちゃん語を話すようになった」
「抱っこしたら首も据わってるッスよー」
「おおーっ」
お互い、ホムラとミナトを抱っこして確認。
たっぷりおっぱいなどを飲んで育った赤ちゃんズは、どっしり重くなってきているではないか。
ぽかぽか温かいのはそのままに、ふわふわの手触りが徐々にムチムチに変わっていくところだ。
「凄い。たった二ヶ月なのに爆発的成長だ」
「ねー。うちのコたちは天才かも知れないッス」
「親はみんなそう言うんだよなー。気持ちは分かる」
特にうちのちびっこたちは、近くをプカプカ浮いてる魔導書に「あぶあうあー」とか声を掛けたりし始めてるしな。
ちょっと成長早いんじゃない?
『おぅ、なんだなんだぁー』
「ばーうー」
ホムラがバタバタしている。
手足を動かすくらいだが、それでもイグナイトに興味を持って触りたい、みたいな意志を感じる……。
「小さい生き物から人間に変わりつつある。最近忙しくて、一瞬で毎日が過ぎていくから、二人があっという間に育っているような感覚だなあ」
「ショウゴさん、Aギルドのお仕事が増えたッスもんねえ」
我が家は魔導書がいて本当に良かった。
大いに助けになってくれている。
マシロは他の双子のお母さんと比べると、苦労の量は30%未満まで減っていることだろう。
「しかし、この子達が生まれたときはまだ残暑があったのに、すっかり冬の空気になって来てしまった。11月だもんなあ」
「そうッスねえ。冬にはこの子達を連れて外にお散歩も行くと思うし、今から服を考えておかないと……」
『ははーん、そういうのはミーにお任せざんすよー! ここから何ヶ月後まで成長を予測して、ちょっと大きめサイズを提案するのも得意ざんす!』
「カラフリー、魔法以外にもそんな技能が……!」
ということで、冬に向けて色々と準備をしようということになったのだった。
双子用ベビーカーは既に買ってある。
世の中でよくあるのは、他に双子を育てたご家族がネットのフリマに出しているものを買うというパターンらしい。
確かに、双子用はニッチだし、育て終わるとかさばるしな。
だが、我が家はあえて新たに買う……!
経済を回す……!
そしてベビーカー代を経費に回す。
この辺の経理は今やマシロが担当してくれていて助かる。
「赤ちゃんのお世話以外の仕事があると、気分転換になっていいッスねー。対応力が要求される体力勝負から、こっちは決まったことをコツコツやるルーチンワークなんで」
「マシロは昔からコツコツやるの好きだったもんなあ」
「うす! その分仕事が遅いってショウゴさんに怒られたりしましたけど」
「あったあった!」
会社員時代を思い出してしまうのだった。
あのマシロと、今は夫婦になって双子を育ててるんだもんなあ。
コツコツタイプで折れないマシロは、育児にも大変向いているっぽい。
毎日が楽しそうである。
魔導書や、家族の助けもあるだろうが。
さてさて、俺は俺で、育児の傍らで仕事もバリバリこなさねばならない。
配信回数は明らかに減った。
なにせ、Aギルドが発足してから、雑務が激増したのだ!
「まあ俺はAギルドの発足人だからな……。よっしゃ、やるか!」
本日の仕事は、数名の配信者とのウェブ面談。
ダンジョンの傾向についての報告を受けたり、チームでの人間関係について相談を受けたり……。
「おりゃ、メタモルフォーゼ・スパイス!」
『いやー、偉くなるとこんなに大変になるんですねえ! 私の歴代の主様の中でも、スパイスちゃんな主様が一番社会性が高いですよ! 人間の社会ってこう言うふうに雑用を受け持ってくれる人がいて回ってるんですねえ』
フロータが感心している。
人間の世界への理解を深めていただけただろうか。
「ほうほう、ランダムに殺意が高いのが混じってると。それは啓蒙しないとねー。怖がらせる動画撮っといて! 後でチェックするから送ってね! あ、経費は専用フォームに書き込んで、レシートの写真添付してー」
協力的な配信者に、ダンジョンの恐怖を啓蒙する動画を撮影してもらったり!
これを契約しているクリエイターに依頼して、ショート動画に編集してもらったり!
30秒ほどのショート動画なら、ちょっとお説教臭い啓蒙動画でもかなり見てくれるのだ!
これはスパイスの発案ね。
次に人間関係の相談!
チームで活動している配信者だと、チームの関係が悪くなると途端に活動できなくなるし。
彼らに依存してた地域はダンジョン対策が遅れることになる。
配信者が多すぎると需要を食い合うし、任せきりになるとこういう人間関係で機能不全になるし……!
うおおお、まだ人員が足りないから、スパイスがこうやって配信者が機能不全になった地域に人を回さねば……!!
忙しいー!!
最近では配信で入ってくるお金より、Aギルドから入ってくる業務委託料の方が多いんだけど!!
『スパイスさん本当に感謝です! 八面六臂の活躍とはこのことですね! 事務力マジたけー』
Aギルドのギャルな事務員さんから感謝のお言葉をいただいた!
「もと会社員のおじさんだからね! やっててよかった、管理職! でもほんとにこれ、マシになるの? スパイスそろそろ配信したいんですけど! いや、在宅の仕事だと育児しやすいから助かりはするけどー!」
『そこはなんとかなりますねー! あたしもこうやって戦力に加わりましたし、研修受けてた連中が次々にこっち来るんで!』
スパイスたち、委託されたベテランの仕事ぶりは動画になり、若い専任スタッフを育てるための教材になっているのだ!
その教育が終わり、次々にあちこちの部署にスタッフが配属され始めている。
やっとAギルドの本格始動だ!
大京さんこと、スレイヤーVも「配信したーい!!」と叫んでいたしな!
Aギルドはギルドマスターが直々にダンジョン配信するところだぞ!
ってことで、今度はスレイヤーVとコラボして、お疲れ様ダンジョン攻略配信でもしようか……。
そんな事を考えていたら、お昼寝から目覚めたうちのコたちがほぎゃーほぎゃー言い始めるのだった。
おしめか、ミルクか……!
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