第269話 新たな魔法少女の誕生だ! いいのか?
木霊議員が、お孫さんのために魔法少女になりたい!
その意気やよし! ということでスパイスは受け入れることにしたのだった。
んもー!
魔法少女経験者が一瞬理解できなくなるような話をぶっこむの、やめなよー。
「スパイス一人だと初めてのことで色々難しいので、ここは魔導書と社長の手を借りましょう!」
「社長と言うと……ライブダンジョンのコーラルくんだね? 歴は浅くとも、その実力は冒険配信者で頂点に位置する彼女が協力してくれるならば心強い」
よくご存知で。
本物のドラゴン、しかもレッサードラゴンとかエルダードラゴンとかエンシェントドラゴンとかじゃなく、多分その上にいるやつだからね!
星渡りの竜とか言ってたから、スペースドラゴンとでも言いましょうか。
チープになったな。
「えーと、社長は確か今日は……」
「いるぞ」
ニュッと顔を出す社長。
「いた!」
「後ろにいるのは木霊議員だな? 全て聞いていたぞ。このマンション全ての事が我の耳に届く故な」
「なにぃ」
それじゃああれもこれも、全部社長に丸聞こえだったわけか。
そしてシノの家で発される迷宮省の重要な話とか、座天使くおんさんが配信したり、オフの時にぶつぶつ言ってるであろう内容も全て!
そりゃあ家にいても飽きないはずだ。
さらに新しい住人を入れる事を計画しているらしく……。
「魔法少女か……。ふーむ、スパイスのパターンが極めて特殊だっただけで、本来男は魔導書の力を受け止めることはできぬぞ」
社長の応接間……マンション内の拡張された空洞に浮かぶ、十畳ほどのスペースに通されたスパイスと木霊議員。
今後について話し合うのだった。
ここで、便利屋カラフリーと、なんかよく分からんことには強いフロータがサッと飛び出してくる。
『普通、素質がない人間が魔導書を扱うと全く相手にされないか、半端な才能なら食われてしまうざんすね。で、かなりの実力があっても足りないと、やっぱり乗っ取られてしまうざんすよ! ミーたちにはそんなつもりは無いざんすけどねえ』
『そうですねー。私も使いこなせた主様が歴代でもあんまりいませんでしたし! ここ最近、先代と今の主様で続いているのはミラクルなんですよ! ということで、魔法少女になりたくても魔導書を使うのは無理ですね! 普通にアバター被るのがいいのではありませんか? ……と言いたいところですけど』
むっふっふ、と笑う魔導書二冊なのだった。
その考えを察して、社長も「なるほどな」などと笑う。
なんだなんだ!
『主様、今まで断章を多く回収して来ましたが、バージョンが古いというか、弱い方の断章は無くても良くなっているんですよ。上位互換されるので』
「ほほーん、そんなことがあるんだなあ」
「どういうことだね……!?」
完全に話に置いていかれている議員!
「ここからは専門的な話ですからねー」
社長とカラフリーとフロータで、今持ってる使わない断章を取り出して組み合わせ始めた。
ああでもない、こうでもない、と議論が白熱する。
『基本は下位魔法詰め合わせでいいと思うんですけど、メインが探知魔法だとしょぼくないですか?』
『いやいや、戦闘に特化した配信者は多いざんす。あえて議員が変身するならニッチに対応した方が美味しいざんすよ』
「うむ、我もそう思うなー。どうせ配信者として主に戦うことはあるまい。だがいざという時に活躍するなら、地味な探知や調査系魔法を中心にするのがいい」
おっ、方針が固まってきたようだぞ。
「派手さがないスタイルになりそうで、わし不安なんだが」
「派手なのは本職に任せといてくださいよー」
「そうか……そうだな……」
断章がばさばさーっと積み上げられて、これまでこんなにたくさんの断章を集めたんだなあと感心する。
どうやら、魔導書の断章は初歩的なものなら自然発生するらしく。
意思を持つまではいかなくても、簡易魔導書を組み立てることができるそうだ。
こうして小一時間ほどして……。
『完成ですよー! これぞ新時代の魔導書! まあ下位魔法しか入ってないんですけど、これくらいでいいんじゃないでしょうか!』
『うんうん、これなら操られることがないざんすね! 世界一安全な魔導書が完成したざんすよ! あ、メタモルフォーゼが入ってるんで変身もできるざんすからね』
「この魔導書に名付けるなら……まあ、探知の魔導書であろうな」
「そのまんまだったかー」
『私の後輩にはならないんですか? 残念』
スパイスにくっついてきた、最新の魔導書化したAフォン、フロッピーが残念がっている。
多分、百年くらい熟成すると意志が芽生えるんじゃないかな。
世にも珍しい、初心者向け魔導書として。
「わし、魔法少女になれるの?」
「なれるなれる。魔法少女名決める? っていうか木霊議員の名前通りでよくない? 魔法少女エコーって」
「なるほど。探知の魔法がメインなのだろ? だったら、音の反響で物を探すイメージではいいだろうな……ふむ、ふむふむ」
よし、決定!
あとは魔法少女としての姿だ!
「わしはモノトーンの渋い色合いが好きなんだが……」
「何気にスパイスと被ってるねー」
「孫娘もこれが好きで」
ははーん。
気持ちは分かる。
だけど、ジェネリックスパイスみたいなのはよくないなー。
『差し色を入れるざんす。グレーと、装飾パーツにゴールドを使うざんすよ。これで明らかに違う感じになるざんす』
『いいですねー!! では衣装の形はドレスではなく、和装ベースの魔法少女に……。和服ミニスカート……』
「おおー!!」
「わし、どうなってしまうんだ……!!」
ドキドキする木霊議員なのだった!
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