第268話 配信者協会設立会議をしまあす!!
三鷹市にあるとある名門女子高等学校の会議室。
そこで、この世界の命運を決める重大な会議が行われようとしていた!
「それでは、会議を始めまあす」
子ども用の座席に座ったスパイスが、司会進行を務めます!
「……なんで子どもがいるんだね? え? 大人? 冒険配信者というのは子どもにも変身できるのか! なんと……。ではもしや孫娘の言っていた配信者の……?」
呻いている白髪頭のおじさんは、与党の重鎮である木霊議員。
迷宮省設立の際、大京さんとともに駆け回ったお人らしく。
大京さんのプッシュを受けて本日参加することになったのだ!
「木霊さん、今日はありがとうございます」
「いやいや、大京くんからは、現代の冒険配信者界について大事な話があると言われているからね」
なお、ライブダンジョンの社長さんとげんファンのCEOクーカイさんも来ている。
スーパーバイザーにこの会議場を提供してくれた古き魔女。
彼女はニコニコしていた。
「本当に、スパイスさんがこんなに大きくなるなんて……。私はとても嬉しいです」
おばあちゃん目線だ!
そんなわけで、始まりました配信者協会設立会議。
「こちら、スパイスが作った資料でーす。プロジェクターで映し出しまーす。魔王が倒されたことで、世間一般のダンジョンに対する空気は弛緩してきています。マスコミ各社もこれに乗っかって、今は冒険配信者アンチキャンペーンをしてますねー。アワチューブとかツイッピーとかPickPockに視聴者を奪われてるんで意趣返しでしょうかね。でも、これはかなりまずい事態で」
「うむ、理解している」
木霊議員が唸った。
「わしは迷宮省の補佐もしているからな。犠牲者が拡大している情報は入ってきてるんだ。だが、人間というのは自分が安心したい情報に飛びつく。長い間のダンジョンとの戦いが終わった、というドラマに、誰もが納得したいのだ」
人間の性質みたいなものだからねえ。
「それで、配信者協会を設立するという意図は?」
「配信者個人に対する批判というか、一般市民側からの妨害行為が増えてきてますねー。今までみんな個人だったんで、これに対抗していくのが難しい人もいたと思うんですけど。これを協会にすることで組織化し、みんなで事件に当たっていこうかと」
「いいですねー、いいと思います。既に、うちとライブダンジョンさんで関係を築いてますし」
「これを拡大していく方針ですよね? 我々は営利企業ですが、その前に世界の安全を守るインフラでもあると自認していますから。その肝である配信者を守ることは急務です」
クーカイさんと社長さんからの熱いプッシュ!
大京さんはうんうん頷いている。
古き魔女も大変うれしそうだ。
「だが、配信者協会では少々ネーミングが硬すぎやしないかね?」
おっと、木霊議員から鋭いツッコミだ!
「それはなんか、硬いと馴染みづらいみたいな感じです?」
「そういうことだ。ま、わしら議員が考えたネーミングは、大体がダサいと巷にこき下ろされるものだが……例えば……君たちの使う配信用スマートフォンはAフォンと呼ばれているだろう」
「呼ばれてますねー。Aはアドベンチャラーで、冒険っていう意味ですけど」
「だったら、協会をギルドと読み替えて、Aギルド、とかな」
「おおーっ!!」
どよめく会議場。
「いいと思う!」
「いい名前じゃないか」
「いいんじゃないでしょうか」
「馴染みやすいし、他に同じ名前が存在しませんしね」
「じゃあ決まりね」
古き魔女がパチン、と手を打ち合わせた。
冒険配信者協会……Aギルド!
初代会長には、大京さんがつくことになった。
「言い出しっぺはスパイスなのにごめんねー!」
「構わんさ。俺はこういうの慣れてるからな。それに、ジェーン・ドゥやイカルガエンターテイメントからも賛同をもらっている。これはリアルタイム会議でもあったからな」
ってことで!
Aギルドへの参加は任意だけど、各冒険配信者企業の大手は全部が協賛している。
その上で、お金を出し合ってスタッフを雇用。
Aギルドは本格稼働を始めたのだった!
なお、スタートしてすぐに妨害仕掛けてくる迷惑な人への開示請求と訴訟とかがスタートしたよ!
いきなりの全方位攻撃で、数名を血祭りに。
さらに各マスコミへの注意喚起などをネット上で行うなどした。
他に、各地の企業とのタイアップでダンジョンの危険性をアピール。
瞬く間に、Aギルドはその存在感を大きくしていったのだった!
この間、わずか一ヶ月!!
実はスパイスも裏で色々手伝ったりなどしつつ、忙しく動き回っていたのだ。
配信と子育てとAギルドの仕事!
忙しい~!!
そんな最中、コーラル社長マンションを訪れる大物がいた。
木霊議員だ!!
「スパイスくん」
「はいー」
スパイスの姿でお出迎えだ。
「折り入って頼みがあるのだが、聞いてくれるか」
「どうぞどうぞ! 議員にはAギルド設立のために尽力してもらいましたし!」
この人が与党内で活動したお陰で、国のバックアップも受けられてるしね。
ジーヤと握手した首相は更迭され、その後、衆院解散。
選挙が行われ、新しくダンジョン施政に肯定的な首相が上になっている。
その追い風も合わせて、木霊議員は大いに活躍したのだ。
次の迷宮省長官のポジションも内定しているらしい。
「それでなんですか?」
「孫が、冒険配信者に憧れていてな」
「お孫さんが! 小学生でしたっけ」
「そうだ。だが、冒険配信者はそう甘いものではない。わしはよく知っている。故に、冒険配信者の厳しさを見せつけて一旦思いとどまらせようと思うのだ。淡い憧れだけで入れる世界ではない」
「うーん正しい!」
「だが、これを他人にやらせたのでは祖父としての顔が立たん。わしが冒険配信者に挑戦し、孫に世界の厳しさを教える!!」
「な、なんだってー!!」
「スパイスくん!! わしを魔法少女にしてはくれんか!!」
「な、なんだってー!!」
本当になんだってだよ!!
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