第263話 名付けの儀を行う!
マシロが退院してきた。
元気な赤ちゃん二人も一緒である!
「ほうほうほう、これがお主の赤子か。魔力を感じる。二人とも才能があるな」
社長が早速勘づいて、ウチの子たちを見に来た。
赤ちゃん二人はまだぎゅっと目を閉じており、目を開けるまでは時がかかりそうなのだった。
「あーかわいい。かわいすぎるッス。うちの子かわいすぎ?」
「分かる。小さい。軽い。抱っこしてもなんかじっとしている」
大変あたたかい。
社長に抱っこさせるのは、首が据わってからね。
魔導書たちはカラフリーから、赤ちゃんの扱い方レクチャーを受けていたらしく。
『いい子でちゅねー。おー、才能に満ち溢れてまちゅねー』
フロータが赤ちゃんをプカプカ浮かばせている!
あれはあやしてるうちに入るのか?
「赤ちゃんが来たと聞きまして!」
シノも来た!
なお、人見知りの座天使さんは引きこもっているらしい。
赤ちゃん相手に人見知りを!
「さて、我が家に社長とシノさんが来たので、そろそろ名付け会議を行うが……」
「まだ名付けておらんかったのか」
社長が呆れた。
「実は候補が多すぎて……。あと、魔法的な意味をもたせると名前が力を持つとか色々」
「ありますねえ!」
シノがうんうん頷く。
当たり障りのない名前がいいだろうなあ、ということになり、それでは何がいいのかという話で大いに盛り上がった。
途中で社長がピザを取り、コーラも合わせて四人でああでもない、こうでもない、と会議が進む。
「ああ~! 楽しいッス~!! 人生でこんな楽しいことがあるのかってくらい楽しいッス~!! 生きててよかったあー!!」
マシロがなんか天を仰いで感動している。
議題は自分が産んだ赤ちゃんの名前だからな。
「我が見たところ、男の方は海の魔導書との相性がいいようだな。そして女の方は炎の魔導書との相性がいい」
『わ、私は!?』
フロータがガーン!とショックを受けたようだった。
「フロータはスパイスと相性が良すぎる」
『あっ、そうでしたか!! それは仕方ないなあー。いやー、仕方ないなあー』
「ってことで、では無数の候補の中にあった、マシロの考えたホムラ、がこの子の名前でいいのではないか」
「ええですねー!」
『ん今この瞬間にぃ、俺と赤ちゃんのリンクが結ばれた感覚がぁあるぅー!』
命名によって魔法的な力を得ること、あるある。
頼むぞイグナイト!
「じゃあこっちは海だから……無数の候補から取り上げるならこれか。ミナトだ」
『あぁ~。なんか繋がりが深くなりましたよぉ~。あれ? 歴代最高のマッチングですよこれぇ? 100%中の250%だ~!』
そりゃあ、自意識が生まれる前の段階で結びついているからな。
さて、こんな風に魔導書にマッチした名前をつけたのは……。
「では……子育てへの積極的な協力を頼むぞ……!」
『ん任せろぉ!』
『お任せですよぉ!』
こういう理由である!!
魔導書たちは基本的に念動力が使えるため、抱っこしたりおしめを替えたり、ミルクを作ったりなどができる。
つまり夜間でも安心なのだ!
「魔導書と繋がりをもたせることで、魔導書に赤ちゃんを育成する責任感を持たせる……! 前代未聞ですわこれ」
シノが驚き半分、呆れ半分だ。
こうして、ホムラとミナトと名前が決まり、後から出てきたホムラのほうがお姉ちゃんということになった。
出生届も済ませた所で、マシロ両親がやってくる!
二人とも終始ニコニコであり、赤ちゃんを見てはニコニコ、名前を聞いてはニコニコ。
「あんな機嫌の良いお父さんとお母さん、久々に見たッス」
「孫はあれだな。自分の人生が無条件肯定されたようなもんだって聞くからな。だから嬉しくて嬉しくて堪らないんだろうな。あ、そうか。親父が妙に浮かれてたのはそれか」
俺もここで、山梨にいる父が孫の誕生を聞いて、いつにない反応をしたのを思い出すのだった。
あの人も嬉しかったんだな。
しゃあない、会わせてやるか。
俺は赤ちゃんたちの動画を撮り、説明を付け加え、父と同居しているいとこ夫婦のスマホに送ったのだった。
これを見て、しばらくは孫の誕生を喜んでくれ。
こっちに来るようなら連絡をしてくれよな。
バタバタしながらも、この9月は赤ちゃんを中心とした生活になった。
配信の方は半月ほどお休みをもらい、諸々の手続きをしたり、赤ちゃん育成と魔導書のシフトのすり合わせをしたり……。
そうこうしている間に、世の中は動いているもので、アメリカに建立された解放の女神像……。
カリフォルニアを色欲の大罪から救った、きら星はづきを象った像が動き出し、メカはづきとなって日本に襲来。
はづきちゃんの学園祭に参加してお祭り騒ぎだったとか、そういう話を聞いた。
なんであの人は面白そうなイベントばかり引き起こすんだ。
「そう言えばあまりの忙しさに、力の魔導書のことをすっかり忘れている……」
『パワードですか? あいつ、マリンナが集めてる情報によると、世直しとか言って中央アジアで暴れててテロリスト扱いされてるみたいですねえ』
「何をやってるんだ……?」
『力の魔女が完全に乗っ取られてることだけは確かですね! これ、絶対パワードの趣味ですもん』
なるほど……。
とりあえずしばらくは、パワードがこっちまでやって来て戦いになる……なんてことはなさそうなのだった。
当分は育児に専念できそうだぞ!
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