第260話 ぶっ倒せ、大魔将!
コンサート会場で、空に向かって一直線に光の束みたいなのがぶち上がった。
なんか宇宙まですごいパワーが飛んでいった?
はづきちゃんと魔王が丸ごとぶっ飛んだな?
これは、決戦が佳境だねえ!
こちらでもジーヤと配信者軍団との激闘が続いているのだけど、流石にカイワレ一人では攻撃を受けきれない。
というか、配信者って基本的に自己顕示欲が天元突破してる人ばかりだから、ガンガン前に出て来て攻撃を食らってリタイヤしていくわけだ!
倒れた配信者は、外側で待機している陰陽師や魔法使い、仙人たちが外に運んでしまうのだけど、何人か死んでいるかもしれないなこれ!
カイワレの後ろに隠れてろーってのは、目立ちたがりやにとっては酷だしなあ。
「スパイス、こっちの頭数が多いから、統制が取りきれてないかも!」
シェリーも防御結界みたいなのを呼び出しながら、こっちに連絡を取っている。
彼女が攻撃に回れないのは、他の配信者を守るためだからなあ。
「仕方ないねー。犠牲者は出したくないけど……! どんどん前に出て、自分の命をベットしてるからこそ配信者って強いんだし」
彼らを止めることはできないな。
ごめんね……!!
なんとか生き残ってくれー!
で、ここに集まっているのは配信者でも上澄みなんだけど、その上澄みの中でも本人が素で強い人、あるいは立ち回りが上手い人だけが残ってるみたいな?
気がつくと、勇者パーティにサポートパーティ、あとチャラちゃんにホセとパンチョしか残っていなかった。
ドワーフたちは「ウグワー!ダメじゃー!」「チャラウェイあとは任せたー!」と撤退した。賢い!
思いを託されて、チャラちゃんも「ヒャッハー!」と燃え上がる!
『ぐははははは!! あれだけいた人間どもが随分減ったものだ! この程度か!? この程度か人間!』
哄笑するジーヤ。
スパイスも不敵に笑うぞ。
「いーや、やっとここから動きやすくなったとこだよ! スパイスの魔法陣は完成したし、本番行くぞー!!」
『魔法陣? 人間の作る魔法陣が、このわしに通用するわけが……』
「挨拶代わりの~!! 深淵より来たりし力よ! スパイスに手を貸してねー!! 魔力代替魔法陣発動! いっけー! スパイラル・ボルテックス!!」
突如、ジーヤの足元に巨大な渦潮が発生する。
上手いこと前衛で走り回ってるタリサとゼルガーを回避してっと。
『ぬおっ!? ぬおおおおおおおっ!?』
ジーヤの巨体がボルテックスに飲み込まれ始める。
超水圧でぐちゃぐちゃに圧縮するぞ!
前のスパイスなら、一度使うだけで魔力切れでぶっ倒れた魔法だ。
だけど、魔力代替魔法陣を作ったので連発可能なのだ!
『パワードがいればこれは解決するでやんすよ。あいつの根源は力そのものでやんすからね』
『そうざんす! パワードは無限魔力貯蔵庫ざんすよー!』
「うおーっ! 早く手に入れたーい!! あっ、ジーヤがスパイラル・ボルテックスを破った! フレイヤより全然格上なんだなあ! やばいなああいつ!」
なお、こんなのと空中戦をずっとやっている八咫烏と斑鳩は頭おかしいと思う!
あの二人、カイワレガードが届かないところにいるんで、自力でジーヤの魔法攻撃を相殺しながら攻め続けてるからね!
そんな八咫烏からの連絡!
「スパイスちゃん、これやばいねー!! こいつ攻撃する端から回復してる! どうりで攻めきれないはずだ!」
「おおーっ、こんな状況でも解説ありがとー! よっしゃ、速攻で魔導書会議ー!! どうする?」
『こういうのは専門は……フロータざんす!』
『ふっふっふー、私の出番ですねえ』
「おっし、メタモルフォーゼ! スパイスフロータモード! それでどうするの?」
『勝手にダメージが回復するってありえませんからね。何か消費してるはずです。でもあいつ消耗してる感じしなくないですか? だったら外から回復のリソースを得てるってことですよ。カラフリー分析して!』
『おっけーざんす!! あー、こりゃ分かりやすいざんすねー! こいつ、魔王と直結してるざんす! 魔王の分身みたいなものだったざんすねえ!』
「なるほどー! ということは……フロータで次元をぶった切る!!」
『正解です主様!』
「魔力代替魔法陣!! おっおっ、新しい魔法が閃いてくる~!!」
『主様の中に私の次の魔法が解放されましたねー。うんうん、何よりです! ちなみにここから上は魔導書だけだと使えませんからね!』
「そうなの!? それじゃあやっちゃおう!!」
前線では、ジーヤの猛攻にみんな守り一辺倒。
仮に攻められても、ジーヤの回復能力に追いつかない!
なのでー!
ジーヤの回復能力を封印しまあす!!
「お肉どもー!! 詠唱を募集! テーマ! 次元切断!!」
※『余計な部位をカット!』『空間掌握!』マルチョウ『夢はここで終わりだ!』おさかな『魔力の呼吸を止めてやる!』
「魔力の呼吸を止めてやる! お前の夢はここで終わり! 余計な次元をカットして、空間……掌握!! ディメンジョンフィールド!!」
スパイスが伸ばした手のひらの中に、戦場全てが収まるイメージ!
ぐっと握り込んでいく。
うおー、凄い抵抗だ!!
だがー!!
ぎゅっとやる!!
周辺の空間の色合いが変化していった。
紫とピンクが混じり合う感じになり……視認! 空から繋がるぶっとい魔力の糸!
これが魔王との繋がりだあ!!
「ディメンジョン……カット!!」
そこで、スパイスは次元を丸く切り取った!
この戦場と外の世界を切り離したわけだ。
つまり、魔王の魔力はここまで届かなくなる。
『なっ!? マロングラーセ様の魔力を感じられぬ! な、何をした! 人間貴様、何をしたーっ!? おのれおのれおのれ、許さぬぞおおおおお!!』
とジーヤは怒りはするものの、スパイスまで届かせられる攻撃なんか、やる暇あるわけないだろ!
タリサとゼルガーとモリトンが、ホセ&パンチョが、ホワイトナイトとサポートパーティの面々がジーヤへ連続攻撃だ!
もう回復任せにして攻撃特化なんかさせないからなー!!
『うごごごごご!! うごおおおお!! 傷が塞がらぬ! 我が力が、限定されていく……!!』
「やっといけるわ! ドローカード! アイアンクラブ召喚! サポートカードジャイアントグロースで巨大化! セットしておいたアーティファクト・アイアンモンガーの効果で拘束力強化を選択! 掴めーっ!!」
もがーっ!!と出現したでっかい鉄の蟹が更に大きくなり、ジーヤをぎゅっと拘束した!
『ぬわーっ!? な、なんだこれはーっ!!』
「攻めと守りで意識が中途半端になってるのよ! いけーっ、ユーシャ!」
「うん!! ゴボウセイバー!!」
これまでに見たことがないくらい大きくなったゴボウセイバーが、振りかぶられる。
とどめの一撃だ!
これに合わせて、八咫烏と斑鳩も飛来する。
「ジャッジメントスラーッシュ!!」
『ウグワーッ!!』
「射撃射撃射撃! こっそり斬撃!」
『ウグワーッ!!』
ヤタさんなんで技名無いの!
「デッドエンドシューッ!!」
『ウグワーッ!!』
斑鳩はちゃんと技名作ってて偉いね!
普段社長業やってるのにちゃんと鍛えてたの、本当に偉い。
かくして、ジーヤがぶっ倒れた!
それと同時に、なんか空から巨大な触手みたいなのが降ってきて、地球がゴゴゴゴッとめちゃくちゃ揺れる!
おいおいおいおい!
地球を押してるの!?
と思ったら、水平線の彼方から光が押し寄せてきて、触手がそれに巻き込まれてピチューンと消えた。
再び、ゴゴゴゴゴゴゴと揺れる地球。
なんだなんだなんだ!
「勝ったっぽい?」
シェリーが呟いた。
多分それだ。
きら星はづきが魔王をやっつけて、そんでもって魔王が押し出した地球を押してもとに戻した。
訳が分からないけど、そうとしか説明できない。
そんなスパイスの視界の端では、八咫烏と斑鳩にとどめを刺され、ジーヤが滅びていくところだった。
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