第257話 きら星はづきの帰還と、マシロの赤ちゃん
日本でスパイスたちがわちゃわちゃやっているうちに、きら星はづきは中国を救ってしまった。
あの、見渡す限りダンジョンに覆われた地獄になっていた中国を!
一夏で救った!?
とんでもないことだ。
記者会見が生放送でやっていたので、これを見ることにした。
相変わらず、英雄然としたオーラとは無縁だな……。
で、はづきちゃんの横にラテン系の男が二人いて、賑やかにBGMを奏でている。
なんだなんだ。
『マスター、この二人はラテンアメリカからヨーロッパで活躍する配信者、ホセ&パンチョです』
「フロッピーは詳しいなあ。なるほどなるほど、強力な配信者の助けも得て中国を解放したわけだ」
4つの省しか残っておらず、これから復興するにしても以前の中国とは全く異なる政体にならざるを得ないと言われている。
今までは、秘密主義をやりすぎた結果、自国でダンジョンを抑え込もうとして失敗。
国そのものを乗っ取られるところまで行っていたからなあ。
どこもかしこも、一つ間違えればそういうことになりかねない時代だ。
怖いもんだ。
「ショウゴさんが難しい顔をしながらあたしのお腹をさわさわしている……」
「大きくなったなーと思って。どんな感じ?」
「むっふっふー、ずっと秘密にしてたッスけど、実は……」
「実は?」
「双子ッス!!」
「な、な、なんだってー!!」
俺は座ったまま飛び上がった。
いや、魔女として日々暮らしているのと、ジムで体を鍛えているので、座ったままジャンプするくらいならばできるようになっているわけなのだが。
双子!?
俺とマシロの子どもは双子なのか!!
「ショウゴさんずーっと忙しかったし、勇者パーティの子たちを鍛えてたから心配させてもなーと思って。魔導書のみんなにだけ話して秘密にしてたッス」
「なにぃーっ」
魔導書たちを見ると、彼らは顔もないのにニヤニヤしているのが分かる。
『ぐふふふふ、実はずーっと秘密にしていたのですよー』
『ん二人もいればぁ! 英才教育のしがいもあるぅ!』
『男の子と女の子の二卵性双生児でやんすよね、奥方』
「そうそう! これからこっちも大忙しッスよー!」
『きゃー! 一気に魔女の子どもが二人増えるなんて、前代未聞ですぅ!』
『魔女の数は少ないだけあって、双子が継承することになる機会はゼロだったざんすからね!』
『お兄様、お姉様がたが賑やかになってきました』
「フロッピーはどう? 嬉しいとかびっくりしたとか分かる?」
俺が問うと、進化しまくった我が家のAフォンはふわふわ浮きながら、くりんと傾いた。
首を傾げる動作みたいだ。
『嬉しい、かもです』
感情というものが芽生えている~!
かくして、我が家はお祝いと成った。
マシロの両親にも伝え、一応うちの父親にも連絡しておいた。
無口な父親の鼻息が荒くなったのが分かった。
仕方ないなあ、生まれたら会わせてやるかあ……。
抱っこさせてもいい。
魔導書たちはと言うと、ついに赤ちゃん情報が解禁になったということで、家の中を飛び交いながらいかなる英才教育を行うかという論を戦わせている。
『やっぱりですねー、私としては男子こそ魔女としての才能があるという論を持って御子息を徹底的に強化し……』
『ん俺はぁ、娘の方につくかなぁ! それぞれで属性を分けて覚えてもらう方が良さげだぁ。混乱しちまうからなぁ!』
『あっしとカラフリーは後からでいいでやんすねえ』
『うんうん、ミーは焦らないざんす。自分のめんどくささが分かってるざんすからねー。フヒョヒョヒョヒョ』
『あー、迷っちゃいますぅ! どっちにしようかなぁ』
まあ、赤ちゃんが生まれて物心つくまでは、英才教育はお預けであろう。
ここに力の魔導書パワードが加わり、さらに我が家は賑やかになる予定だ。
「すると……あれか。フロータとイグナイトとマリンナは子どもたち方面に行き、メンタリスとカラフリーが俺のところに残る方針」
『そうなるでやんすね。あっしらを扱うには精神的な成熟性が必要になるでやんすよ。特にあっしなんか、本来なら超一級の危険指定魔導書でやんすからねえ』
「こんなに人格者なのにな」
『使い手に悪意があったらいくらでも悪用できるからでやんすねえ。ま、悪用するような脆弱な精神の人間は、だんだんあっしに精神を蝕まれて狂気に陥るんでやんすけど』
『ミーも同じざんすねー。メンタリスとは兄弟みたいなものざんす! ちなみに、ミーは全ての魔導書の中で最後に書かれているざんす! 他の六冊を参考に、全てを併せ持った魔導書として書かれたざんすよ! そしたらミーのパッパは狂っちゃったざんす! キャパを超越してたざんすね。結果的にミーは万能だけど、全ての魔導書に専門分野では勝てないくらいで収まったざんす』
「ははーん、理論値では全てで専門分野に匹敵できるはずだった?」
『いやあ、もともと無理な理論だったざんすね。お陰でミーはおのれの限界を知り、汎用魔法の断片を大量に集めることで便利屋路線に特化していく決心をしたざんす』
「魔導書に歴史ありだなあー」
俺は大変感心してしまった。
なお、書かれた順番で行くと、
1・力の魔導書パワード
2・精神の魔導書メンタリス
3・炎の魔導書イグナイト
4・風と氷の魔導書スノーホワイト
5・海の魔導書マリンナ
6・色彩の魔導書カラフリー
フロータは誰が書いたのか、いつ書かれたのが判別していない。
ある時突然、その世界のその時代に出現したのだという。
『いやー、私の書き手は誰なんでしょうねー! ま、そんなことどうでもいいんですけど! むぐぐ、このままではそれっぽさで、マリンナに英才教育の立場を奪われてしまいますよー! 良い策は無いものか……』
わいわい騒ぐ魔導書たちを見上げながら、マシロはうんうん頷いた。
「この分なら、子育てはかなり楽させてもらえそうッス!!」
うちの奥さんはしっかりしているのだ。
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