第253話 海辺をパチャパチャではなく、不正路連携訓練なのだ
水辺をパチャパチャします!!
これは不正路みたいな制限された場所でのコンビネーションを磨く訓練だね。
「あはははは! 海つっめたーい! きもちいー!!」
「待て待てー! そーれ!」
「きゃーっ」
タリサとモリトンが海に来たカップルみたいな遊び方してる!!
あの二人、海がなかったり海に行くのが困難な地域出身だからねえ。
そしてビーチバレーでなんか親交が深まったみたいだ。
いいぞいいぞ。
おじさんは若人がわちゃわちゃしている光景も好きなのだ。
「まあこんな訓練でもいっかー」
「スパイス、そのセクシーな姿で元の口調なのかなりギャップが凄いわよ」
※『かわいい喋り方の大人スパイスちゃんかわいい』『そのままでいてくれ……いや幼女にも戻ってほしい』『ビーチバレーが終わったので元通りになっていいのでは?』
おっと、そうだった!
「メタモルフォーゼ! アクアスパイス!」
元のスク水スパイスに戻ったぞ!
コメント欄ではお肉どもが複雑な心境を書き込んでいる。
煩悩にまみれておる!
さてさて、不正路訓練なんだが、こういう制限のある環境で、肉体を使ってどれだけ動けるかというですね。
スパイスがこの間思いついたやつです。
「魔王戦が終わってからも、ここで身につけた技術はきっと生きることでしょう! そんじゃあスパイスの真似をしてみて! うおー! 水面をちょっと走る!」
※『スパイスちゃんが水上を!!』『アクアスパイスの能力じゃないの!?』『なんだこの幼女』
ふふふ、これはスパイスの体の小ささと軽さ、そして圧倒的身体能力の組み合わせが生み出す奇跡!
……ってことは他のメンバー無理じゃん!
「オーノー」
カイワレが水にばしゃーん!と落ちてあっぷあっぷしてる!
泳げないんかい!
「スパイスさん、実はこのメンバー、私とゼルガーさん以外は全員金槌らしくて」
「なんだってー!! 言われてみればそうかあ……」
学校で水泳を習うのは日本くらいだもんねえ。
最近は習わないところも増えてきたらしいけど。
タリサとモリトンは、さらに泳ぐチャンスすら一生で一度も無いような地域の人達なんで。
「予定を変更しまーす」
水を操ってカイワレを持ち上げると、カイワレが口からピューッと水を吐いた。
コミックみたいなアクションをするなあ!
なお、全くダメージは無いらしい。
「それじゃあ、スパイスが攻撃するので水に足をつけたまま回避してねー。攻撃って言っても危なくないように水の塊を飛ばすだけだけど! なお、一人では回避しづらい感じで死角から来るので、チームプレイが大事! はい、タリサとモリトン!」
「よーっし、頑張ろうモリトン!」
「うん、やろうタリサ!」
すっかり仲良しだなあー。
二人の配信は大丈夫?
荒れない?
おっ、案の定、勇者パーティ公式チャンネルで荒れているぞ!
モリトンくんにガチ恋し始めていた女性リスナーが叫んでいる模様。
逆にタリサには応援する声が多い。
魔性の男、モリトンくんだったかー。
アンチが活動し始める前に、イカルガエンターテイメントの伝手で対策を立てておこうっと。
いやあ、おちおち配信者同士で恋愛もできないこんな世の中じゃ。
「ってことで発射発射発射!!」
「うわーっ! 避けて避けて避けて!」
「タリサ、後ろ! そして横! 上! 下!」
「はい! こっちも! はいはいはい! あっ、モリトン後ろーっ! ねりゃー!!」
タリサがモリトンを抱きしめて、くるくる回りながら水の弾丸を回避した!
やるぅー!
なお、水着という布一枚越しにタリサに強烈にハグされたモリトンは、真っ赤になっていたのだが!
モリトンの圧倒的に広い視界があらゆる攻撃を捉え、彼の指示でタリサが回避。
モリトンが間に合わないところは、タリサが彼を引っ張って回避させる。
いいコンビだなー!
浜辺ではゼルガーも満足げに腕組みしている。
「相棒が女の子とコンビになってて、どういう気持ち?」
「あいつはコミュニケーションが苦手でな。だが動物となら気持ちを交わすことができた。俺が来て、あいつの持っていた才能は開花した。あいつはその力で、もっと社会と関わっていっていいはずなんだ。純粋に嬉しいよ」
男前~!!
なお、ユーシャとシェリーはスパイスの攻撃を、普通に能力を使って回避したよ!
いかんでしょ。
まあ、この人たちの場合は魔法や勇者としての力が本体みたいなところがあるから。
で、ゼルガーとカイワレは……。
「アーウチ! アウチアウチアーウチ!!」
ぶんぶん振り回されるカイワレーッ!
これで水の弾丸を全て防ぐゼルガー。
この男、一人でもめちゃくちゃ強いなー!
今まで見てきた異種族の中でもトップかも知れない。
ケンタウロスがこの巨体で、全方向からの水砲撃を全部回避するの凄い。
「やるなあゼルガー」
「なぁに。スパイスが手加減をしてくれているのは良く分かる。お前が本気になれば、俺も本気にならざるを得ないさ」
「底知れねー! なんかワクワクしてきたぞ」
※『スパイスちゃんの中の小学生男子が目覚める!!』『やっぱりこのおじさん幼女は俺達と同類かも知れぬ』『ゼルガーそんな強いの!?』
なんか自分にリミッター課してるんじゃないかな?
ケンタウロスの中に突然生まれた、英雄みたいな存在だと見た!
こうして訓練は終わり……。
タリサとモリトンはかなり仲良しになり。
ユーシャとシェリーのコンビネーションも向上。
カイワレは盾としての運用が最適で、しかもこっちから敵に当てに行くのもかなりイケることが分かった!
「ファオ! スパイス! 僕の扱い方がちょっと他のメンバーと違わないかい!? まあ、それだけ頼れるってことか! じゃあいいよ! HAHAHAHAHA!」
前向きな男~!!
こうして海水浴場編は終わり!
そろそろ魔王側も幹部クラスを繰り出してきそうな予感がするぞー。
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