第241話 ようやく最後のメンバーが来るらしい
さてさて、勇者パーティとしての活動が始まり、スパイスの配信にもピリッとスパイスがですね、加わりましてね。
本日も、リスナーたちが勇者パーティのメンバーのことをワイワイ話し合っている。
ハッシュタグで勇者パーティとある配信では、参加してるメンバーの話題解禁だからね。
女子が多いので、そのことで持ちきりな男子リスナーたち。
モリトン&ゼルガーペアの関係性について話し合う女子リスナーたち。
いいねいいね、盛り上がってるねー。
これ、パーティ間の関係性でリスナーを引き付けて、人気にするという狙いもあるんじゃないか。
「おっ、みんなー! ついに我が勇者パーティ最後のメンバーが到着したぞー。アメリカからの来日だね。はるばるようこそー」
現在、勇者パーティを乗せたバスが空港に向かってます!
で、その足で魔王によると思われる事件が起こった場所に向かうわけ。
勢揃いでの実戦は初だ。
楽しみだなー。
空港に到着すると、ロビーでヒョロっとしたTシャツの青年がキョロキョロしていた。
あれだあれ。
キャプテン・カイワレだ。
「おーいおーい」
スパイスが真っ先に声を掛けると、彼はこちらに気づき、パッと表情を明るくした。
「オー! オデムカエ、アリガトゴザイマース! スパイスガール! あとリーダー!」
「あとって言われた!」
「久しぶりに会うんでしょー? 忘れてたりしたんじゃない?」
スパイスが言うと、ここまで同行していたはづきちゃんが「なんたることー」と嘆いた。
なお、カイワレはヒョロっとしていて、ヒーローものの派手なシャツにジーンズ姿。
どう見ても強そうではない。
タリサとシェリーとゼルガーが、「ほんとに大丈夫?」って顔をしたぞ!
気持ちは分かるー。
でもこの世界、見た目じゃないからね。
そこはスパイスが証明してるのだ!
ってことでみんなで乗り込み……。
「えー、バーガーショップがいきなりダンジョン化したそうです。さっきまで普通に営業してたけど、バイトの金髪の子が出てった途端に」
「あっ、そのバイト、魔王だ!」
タリサ鋭い!
ありうるねー。
色々な陰謀を巡らすために、魔王自らがアルバイトを……。
※『魔王が普通の女の子づらして紛れ込んでるの!?』『こっわ』『営業中のバーガーショップをダンジョンにするとか、もうなんでもありじゃん』
「今のダンジョン化現象を引き起こした張本人だからねー。なんでもありでしょ」
それだけ恐ろしい存在ってこと。
ちなみにバスの後部で、カイワレが早速着替え始めた。
シャツを脱いでジーンズを脱いでパンツだけになり、緑色の全身タイツを身につける。
「ちょっとー! 女子がいるんだからいきなり裸にならないでよ!」
「うわー、真っ白! 日焼けしてない!」
シェリーが抗議し、タリサがカイワレのなまっちろさを指摘する!
女子からの反応はあれだね!
今一つだね!
「うーん私はカイワレさんから謎の凄みを感じます」
「おっ、ユーシャちゃん相手を見た目で判断しない!」
「だってはづきちゃんも、スパイスさんも可愛いのにすっごく強いじゃないですか。弱そうな見た目って弱い理由にならないんですよね」
真実~!
その後、バイザー付きヘルメットになり、マントを装着したカイワレ。
やはり弱そう!
これについてタリサがやいのやいの言い、シェリーがユーシャちゃんと同じ結論に達し、なんか口論みたいになってきたぞー! という辺り。
スパイスは二人を見つめながら、若いなーと目を細めた。
「若いねー。争え争えガキ~」
※『ガキって言ってるw!』『おじさんのよくないところ出たぞw!』『でもまあスパイスちゃんからすると若者しかいないもんな』
なお、キャプテン・カイワレは二十代前半なので、比較的大人の側だぞ!
「いいねいいね! 最初のヒーローチームはこうやって不仲なものさ! だけど、戦いを通じて友情を育めばいい! 時にぶつかり合い、理解し合って高め合う! グーッド!」
「うおー、何を言われても全く気にしない! 前向きな精神性はまさにヒーローって感じだね」
「サンキュースパイスガール! 僕はまさにヒーローメンタルだね! HAHAHAHAHA!」
いいねいいねー!
今度ご飯おごってあげよう。
ということで到着したバーガーショップ。
肉切り包丁を振り回す、塊ビーフパティの魔将がお出迎えだった。
これに当たる勇者パーティ。
どうやら魔王肝いりの魔将だったらしく、タリサの攻撃が通じない。
『フレッシュミート! チョップミート、ホットプレート、バーンバーンバーン! ビーフパティ~!!』
「なにこいつ!? ばらばらになるくらい撃ち込んでも通じてない……あっ、まずい……!」
タリサが焦って距離を詰めすぎたところに、ビーフパティが攻撃を振り下ろす!
危機的状況!
今回は見学かなーと思ってたスパイスも、速攻で魔法を編み出して割り込む準備をしたところだった。
だけど、それよりも早くその男が攻撃の前に立ちふさがった。
キャプテン・カイワレだ!
「HAHAHAHAHA! こんなこともあろうかとー!」
足の裏からバネが飛び出した、ホッピングシューズの加速力!
で、肉切り包丁でターンと殴られて「ウグワーッ!」と吹っ飛び、そのまま立ち上がって無傷のまま「レッツファイッ!」とまた飛びかかってくる!
「うおー! なんだなんだあのタフネスー!!」
『主様、この時代には何人か意味のわからないつわものがいますが、あれもその一人ですね!』
「フロータが認めるほどの!?」
『あれ多分、スパイラルとかリバース効かないですよ!』
『ん今の俺たちの魔法ではぁ、ダメージを与えられないタイプの男だぁ』
『精神はそうでもないっぽいので、あっしなら無力化できるでやんすけどねえ』
あー、ドランクは効きそう!
でもドランクしか効かなそう!
「これは本格的に、今回スパイスは見学かなー。あ、怪我したらカラフリーの力で回復できるけど……。カイワレはいらなそうだなあー。あのもやしボーイつよーい」
すっかり観戦モードになり、はづきちゃんもカイワレからもらったアメリカのスナックをもりもり食べているのだった。
カイワレはついに肉切り包丁を己の耐久力で金属疲労によって破断させ、ビーフパティは己の刃で真っ二つ。
彼はとても印象的な日本デビューを飾ったのだった!
なお、戦いの解説を的確にやってくれたモリトンくんと、サポートに回っていたユーシャちゃんとシェリーもいい仕事するねー。
「うぐーっ! タリサはもっと強くなるしかー!!」
がんばるのだ若人ー!
まあ、まだダンジョン化は解けてないし、後半戦でタリサは巻き返してくれるでしょう!
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