第238話 最終選考開始なのだ
スーダンから来たタリサちゃんは、体や弾丸に精霊をまとわせて身体能力を上げたり、攻撃力を向上するスタイルなのね。
鳥の精霊をまとって飛翔したり、豹の精霊をまとって高速移動したり、ヘビの精霊をまとって周囲に溶け込んだり。
明るい感じの衣装とも相まって、陽のオーラがとっても強い子だ。
うんうん、おじさんはいいんじゃないかと思うなー。
全ての配信者の中で、最速でダンジョンを抜けてきたわけだし。
実力だって超一流!
見事に演舞みたいなのを終えたタリサちゃんに、ワーッと拍手が降り注ぐ。
タリサちゃん満足げですなー。
「ここっていいところだわー……! 気持ちいい~!」
大歓声の中で恍惚としているタリサちゃんに、審査員席にいる人が声を掛けてきた。
「なるほど、納得です。強いなー。あの、今度うちとコラボしましょう」
あーっ!
あの人は、なうファンタジーを擁するげんファン株式会社のCEO、大学時代に会社を立ち上げ、今は業界トップクラスの規模にまで育て上げた若き天才社長、クーカイさんだ!
「ホント!? なうファンタジーはタリサも知ってます! ぜひぜひー!!」
ファンからは親しみを込めてカイくんと呼ばれている人だね。
タリサちゃん、なうファンタジーとコラボしたりもするの?
八咫烏さんと一緒に配信する日も来るかも知れない。
ちなみに彼女の登録者数は二百四十万人!!
アフリカ最高レベルの配信者だった!
そして次はユーシャちゃん。
「ど、どうもー! ユーシャ・ブレイバーです! ええと、わたしはこれです! 現代魔法と専用のドローンで……」
『ユーシャちゃん急ぐのです! これが本番だったらモンスターは待ってくれないのです!』
「わ、分かってるよーアフームたん!」
白いもこもこになったドローンと会話してる!
コンビを組むことに成功したかー。
これにはスパイス、後方腕組みだね。
『ユーシャさんに名付けられたみたいですねあれ。名付けは強いですよー! 魔のものであったドローンを、ユーシャさんの眷属として定義づけましたからね! お陰で属性も反転したようです。あれは完全に味方ですねー』
後方腕組みフロータ。
解説してくれるねー。
「なるほどなー。おっ、コンビ攻撃つえー」
ユーシャちゃんの攻撃、当たると標的を爆発させるし、アフームたんが放つ氷の魔法みたいなのが敵を束縛したりする。
ヒロイックだなあー。
「あれは受ける。スパイスには分かるね」
『ん期待の新星だなぁ。やっぱり攻撃は派手なのがいぃ』
イグナイトもそうだそうだと言っております。
武器がゴボウセイバーとはづきちゃんリスペクトかつ、五芒星と掛けたダブルミーニングだったりと、遊び心も満点。
いいんじゃないでしょうかいいんじゃないでしょうか。
そしてそして、三番手はケンタウロスと男の子のコンビ。
遊牧民出身のモンゴル人な彼はモリトン、野性的なケンタウロスの青年はゼルガー。
モリトンの弓による射撃と、ゼルガーの槍を使った突進のコンビネーションなのだ。
乗っているかと思ったら二人に分離し、かと思ったらまた人馬一体。
強いぞこれはー!
『分かりやすいシンプルな強さでやんすね。魔の力に頼らない配信者としてはトップクラスでやんすねー。二人の相性が実力を何倍にも引き上げてるでやんすよ』
「うんうん。そして男子二人の関係性にも萌えるやつだねえ」
スパイス、分かっちゃいました。
ベテランの配信者さん二人を挟んで、次にシェリーちゃん。
彼女の戦い方は、契約したモンスターをカードに封印し、これを状況に応じて解き放つやつ。
召喚魔法みたいなものだね。
さらにカードを使う順番でコンボが発生し、モンスターが合体強化されたりもするんだって。
さすが、イギリス最強の配信者だ!
ホワイトナイトさんは、白とゴールドのネイキッドバイクがアバターを纏い、SFバイクやエアバイクにも変形。
これを乗りこなしながらのランスによるチャージとか、ランスに内蔵された火砲での射撃だね。
最新の竜騎兵じゃん!
かっけー!
で、ヤタさんはコートの力で飛び回りながらラーフで標的を連続破壊。
接近したやつは、ラーフに仕込んであったブレード(安全なやつ)で真っ二つにしたりしていた。
一番シンプルかも知れない。
でも、手加減してるのが分かるなあー!
彼の所属する企業のクーカイCEOは満足げ。
八咫烏LOVEみたいに描かれているウチワを振り回している。
おちゃめな社長だ!!
そしてエルフの人が安定した精霊魔法の技を見せて、最後はスパイスだ。
「ま、おじさんとしてはね、若い子たちに花を持たせながらいぶし銀の技を……なんて謙虚に行くわけ無いだろこのやろー!」
ぴょーんと飛び出したスパイス!
「えー、じゃあスパイスはこれまでコツコツ集めてきた魔導書の力をですねー」
イグナイト、メンタリス、マリンナ!
あとはカラフリーが擬態して、全部別物みたいに見せかけた、フェイク魔導書軍団!!
これがスパイスの周りをくるくる回るデモンストレーションで、会場が沸く。
「あっ、これはスパイスがやってるんじゃなくて、魔導書それぞれの意思があって自らの力で浮いてるからね。じゃあみんな、自律攻撃!」
『とりあえずミーが十種類攻撃しておくざんすよ』
『ん俺は手加減しとくかぁ』
『カラフリーに指示されるの腹が立ちますねぇ!』
『あっしは視覚的には地味なんで、何もしないでおくでやんすよ。ふぃー、楽ちん』
フロータはカバンの中でのんびりしているぞ。
「……は、配信者というのはここまで凄いことになっているのか……!?」
「あのあの、スパイスちゃんは魔女の子孫で、世界に散逸した魔導書を集めているという設定で」
おっ、腰を抜かさんばかりになっている、陰陽師の審査員にはづきちゃんが説明してくれている。
そうそう、設定だよ設定~。
「設定などではないだろうあれは! 世界でも至宝と呼ばれる次元の魔導書が三冊! それに準ずる次元の物が五冊! 己の意思を持つほどの魔導書がさらに十六冊……! しかも現代魔法ではない、古代魔法だ! あれは現代最強の魔法使いと言って差し支えない……!」
ウワーッ!
スパイスの設定盛るのやめてくれないですかねー!?
「カラフリー、やり過ぎ、やり過ぎ!!」
『フヒョヒョヒョヒョー! こんなの、イグナイトやマリンナやスノーホワイトの魔法の1%にも及ばないような真似事ざんすよ? 原典抜きの魔法使いはまだまだざんすねー!』
まあ、今魔法界で最強の位置にいるのは配信者だと、スパイスも思うなあ。
実戦の回数と、同接による強化が半端ないもん。
その後、スパイスは適当にでっちあげたそれっぽい説明をしたら、会場がまたどよめいたのだった。
スパイス、またなんかしちゃいました?
というかもう、何が凄いのか基準がわかんねえー!!
感覚がインフレしてそれに慣れてしまったー!!
混乱していたら、いつの間にか勇者パーティというユニットの選考が始まっていた。
どうやら若いメンバーで固めるつもりだったようで……。
前衛のタリサちゃん、センターのユーシャちゃん、遊撃のモリトン&ゼルガー、後衛のシェリーちゃん、そしておじさんのスパイス。
「はいはーい! 社会人経験豊富なおじさんが色々教えてあげるからねー」
言っては見たが、なぜスパイスが若者たちの中に……?
解せぬ。
なお、落ちたと思われた年長組は、サポートチーム……裏勇者パーティみたいな感じで活躍することになった。
あっちはあっちで人気が出そうだねえ。
「ふむ……僕が強すぎたのがいけなかったようだね……」
「はっはっは、我々はベテランとして若者のサポートに回ろう」
ホワイトナイトとヤタさんが肩を組んで笑っているぞ。
コメント欄がすごい速度で流れている。
顔が良いのでリスナーを狂わせるんだから、手加減してあげなさい……!
こうして……。
スパイスの新生活がスタートするのだった!
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