第237話 きさま! みているな!?
人造ダンジョンに潜ってみたのだ!
どれどれー?
ほうほうほう、これは式神なんかを使った疑似モンスターがひしめいているねえ。
さぞや準備するの大変だったことでしょう。
そうしたらコメント欄で有識者がいて、
※『呪符を使う用のバイトを雇って、短期間で大量生産したらしいです』
「ええーっ!? そんなことできるのーっ!? ふむふむ、はづきちゃんが一般化した技術かあ。そういう呪詛を一般化していいのかなあ。ま、いいかあ」
準備にはちゃんとした陰陽師が必要らしいし。
スパイスは、とりあえず楽しく人造ダンジョン攻略をさせてもらうのだ。
イグナイト、メンタリス、マリンナを浮かべて……。
『マスター、これは注意した方がいいざんすよ』
「およ? どうしたのカラフリー。フロータも出てこないけど」
『うーん、見られてる感覚があるんですよねえ。リスナーじゃなくって、もっともっと上の方からやばーい視線を感じる~』
「ええーっ! それってつまり」
魔王か。
そいつが配信を見てるわけね。
で、自分に抗ってくるチームを研究してる可能性が?
嫌だねー、慢心しない魔王は!
『カラフリーと相談して決めたんですけどね! ちょっとうちのリスナー以外を騙しましょう!』
「だますー?」
なお、表向きはメンタリスがアバターを使って上手いこと取り繕い、スパイスがトークをしながら配信しているようになっている。
いつの間にかスパイスの喋りをエミュレートできるようになっていたのだ!
『私が協力してます、マスター』
「なるほど! フロッピーが記録したスパイスのデータ使ってんのかー! おっしゃ、それじゃあ会議だぞ。どうするどうする?」
『表に出ている三冊をまず、メインとして示すざんすよ。フロータが有名ざんすけど、そこはフロータと口調が似ているマリンナにお願いするざんす。色もちょっと濃いだけだし』
『聞こえてますよぉー! 私とフロータはぜんぜん違うじゃないですかぁー! でも、主様を守るためなら仕方ないですねえ』
協力ありがたーい!
『そこでですね、カラフリーがより下位の魔導書の真似をします』
「ほうほう!」
『ミーたち七冊の魔導書と比較すると、まあまあ意志っぽいのがある下位の魔導書や、断章が本になった的な魔導書はかなりランクが落ちるざんす。魔王からするとそれらは脅威にもならないざんすね』
「なるほどー! つまり、人間からすると凄いけど、魔王からすると大したことないなーってのを装って、こっちの戦力を誤魔化すわけね!」
『そうざんす! この視線を感じたのは今回が初めてざんす。つまり、魔王は普段、こっちの配信を見ていないざんす! ここでそれっぽい嘘で騙すことで、魔王にこちらの戦力を誤認させるざんすよ。みんな、一度固定観念ができると、わざわざそれを壊すために行動しなくなるざんすからね。特に、そこに疑いが生まれていないうちはそんなもんざんす』
「オッケーオッケー! じゃあ、それで騙していこう!」
この話は、リスナーにも副音声でお届けしています!
お肉どもは結託し、スパイスの企みに乗ってくれることになった。
それで、こんな会議をやってたら、ダンジョン踏破が遅れちゃってるじゃーん!
大急ぎで行くぞ!
「アクアスパーイス! うおー! ダンジョンの中を押し流していくぞー!!」
タイダルウェイブで一掃しながら、ダンジョンを駆け抜けていく。
なんとか十人以内に入れるかな、入れるかな……と走っていたら……。
『マスター、本配信をチェックしていますが、これならぴったり十位で突破できるペースです。ギリギリである方が、より相手の油断を誘えるかと』
「おっしゃ、それでいこー!」
ペース配分に気を使いながら、イグナイト、メンタリス、マリンナを程よく使い……。
さらに、カラフリーが演じている下位の魔導書を使う仕草をする。
いやあ、持ってて良かった色彩の魔導書!
それっぽい魔法がどんどん使えるぞ。
なお、フロータも姿を見せないながら、マリンナを隠れ蓑にして浮遊の魔法を使ったりする。
あくまで、レビテーションやフロートレベルの魔法に見せかけるくらいの感覚で……。
「でも、魔王ってスパイスが直接やり合うわけ? こんなに誤魔化す必要ある?」
『ああ、それはですね。魔王が肉体を奪ったあいつを騙すためですよ』
スパイスの疑問に、フロータが答えてくれた。
あいつとは、フロータの昔の持ち主か。
魔王を召喚して、姿を奪われた最も古き魔女。
それが配信を見てると?
フロータ、これは魔王を倒した先にやって来る、スパイス的な最終決戦を見据えているな……?
どこまで見えてるんだ。
ということで!
ダンジョンを蹂躙しながらペースを注意しつつ突破!
ピッタリ十位だー!
大歓声の中飛び出したスパイスが、
「おお~。ギリギリ間に合っちゃったねえー。スパイスは運がいいかも!」
謙虚な事を言うと、大いに周囲は盛り上がった。
うんうん、日本人は謙虚な実力者を愛するからねえ。
ははーん、一番目がスーダンのタリサちゃん、二番目がユーシャちゃんで、シェリーちゃんもホワイトナイトさんもヤタさんもいるじゃーん。
あっ、チャラちゃんは狙い通り、ヤタさんを打ち上げて脱落したのね。
美味しいなあ!
まあ、チャラちゃんは忙しいからねえ。
ここで一次審査が終了。
次は最終選考だぞー。
こんなドリームチームみたいな十人を、半分に絞るだってー!?
お読みいただきありがとうございます。
面白い、先が気になる、など感じられましたら、下の星を増やして応援などしていただけると大変励みになります。




