第230話 はづきっち企画番組に出るぞ
GW中は、自分の配信と企画の準備に追われて忙しい!
バタバタしている間にその日がやって来た。
魔導書五冊を引き連れて、ここはイカルガエンターテイメントビル……。
『ううーん、ライバルの気配がしますよぉ』
マリンナがなんだかやる気だ。
最近良くオンライン対戦をしているマリンナは、イカルガのスタッフであるドラゴンとライバル関係にあるらしい。
『その他に、イカルガに魔将が所属してるじゃないですか~』
「あー、いたいた。イカルガエンターテイメントって人間じゃない配信者が結構いるんだよねえ」
そもそも核になっているきら星はづきからして、あの強さは人間ではないのではないか疑惑が常に流れてるもんね。
スパイスとしても、あの内気そうな女子高生が世界最強の配信者だとは今も信じられない……。
『ハハハ、私達はもう諦めましたからね』
『んん~。既に化け物の腹の中だぁ』
達観しているフロータとイグナイトなのだった。
ここで、スパイスのカバンからマリンナが飛び出す。
『では私はこれから、ライバルとのオフライン対戦をして来ます』
「あ、がんばってねー」
青い魔導書がひらひら飛んでいき、途中で色違いアクアスパイスに変身した。
イカルガのスタッフさんたちがちょっと驚いたあと、ドラゴンの居場所を聞かれて親切に案内してあげている。
さすがは現代世界の対ダンジョンの梁山泊、イカルガエンターテイメント。
魔導書が人になるくらいではなんともないか。
スパイスたちはと言うと、二階にある撮影スタジオへ。
このビル、かなり広いんだよね。
一階のスタッフスペースはそこまででもないけど、二階のスタジオが本体と言っていい。
ビルの大半を占めるであろうスタジオが解放されていて、今回はスパイスが一番乗りだった。
「おはようございます! ようこそお越しくださいました!」
社長秘書だという女性が出てきて、台本を手渡してくる。
もともともらってたけど、これが完成版ということね。
進行についてが書かれていて、こちらの発言はお任せになっている。
「よろしくおねがいしまーす! いやー、でもイカルガはほんとに凄いですよねえ。こういうイベントを開催して。国から睨まれるかもしれないのに」
「弊社はおかしくなった迷宮省とも正面から対決しましたからね。今さら国と戦うくらい、なんとも無いと言いますか」
「つよい!」
感心してしまった。
イカルガエンターテイメントは、ダンジョンの休日を取りやめさせる活動も行っているのだ。
これには、ライブダンジョンやなうファンタジー、ジェーン・ドゥと言った大規模配信者企業も協賛している。
といったところで、パタパタと足音がした。
「ごめんなさーい、ちょっと遅くなりましたー」
「大丈夫よー! 全然時間内だから」
この声は……!
振り返ると、以前に見たときよりもシュッと背筋の伸びた女の子がいる。
今年で18歳の、まだ現役女子高生な配信者。
世界からはゴボウガールの愛称で親しまれる、最強の配信者、きら星はづき。
「あのあの、スパイスちゃんお久しぶりです!」
「お久しぶりです~!」
お正月以来!
生身だと、1年半ぶりくらい?
彼女とむぎゅむぎゅ握手した。
そうしたら、はづきちゃんのシルエットがぶれて……。
横からコウモリの翼を生やしてちょっと角が生えた、露出度高めのはづきちゃんが出てきた。
既にバーチャライズ済みのような姿をしているが、これが……。
『ベルゼブブでーす』
「あーどうもどうもー!」
暴食の大罪であったはづきちゃんから分離された、大罪そのもの。
ダンジョン側で言う魔将みたいなものなんだけど、何故かフレンドリーに人間側にいついてしまった存在が、このベルゼブブだ。
最近は当たり前みたいな顔をして、きら星はづきの配信に出演している。
カバンからフロータたちがひょこひょこ顔を出して、
『あっ、本物の悪魔ですね!』
『最上位悪魔みたいなのだなぁ!』
『どうもどうもでやんす』
『なんざんすか? 日本の東京は魔境ざんすか? これじゃグラーツは平和な田舎町みたいじゃないざんすかー』
ようやく気づいたかねカラフリーくん!
我が家の家主はドラゴンだし、世界最強の配信者と魔王ベルゼブブが一緒にいたりするのが日本の日常なのだ!
その後、熊内またぎちゃんと、ぱいかじゆくいちゃんが一緒にやって来た。
またぎちゃん、ホテルにいるゆくいちゃんを迎えに行っていたらしい。
ゆくいちゃんの生身の姿は知ってるけど、日焼けした二十歳くらいのお姉さん。
またぎちゃんはもうちょっと年上の、スラッとした色白なお姉さんだ。
「こんにちはー! はじめまして! スパイスちゃん!? うわーっ! かわいいー!!」
「どーもどーもー! おじさんですけど!」
またぎちゃんと握手!
「スパイスちゃん、みーどぅーはーそーなー(久しぶりー)! みしゃーろーるんさー(元気だった)?」
「元気元気!」
「スパイスちゃんがゆくいちゃんの言葉を理解してる!」
「さすが大人のおじさんですね……!」
驚くはづきちゃんと、またぎちゃんなのだ。
ある程度は八重山の方言を勉強してきましたからね……!
こうして、揃った四人で台本を読み合わせし……。
いざ、番組本番へ!
よっしゃー、やるぞやるぞー!
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