第217話 二世の素ができた
「ショウゴさん実は!」
「えっ、三ヶ月!?」
帰ってきたその夜に、大変なことが発覚してしまった。
な、なんとマシロのお腹の中に新しい命が~!
「嬉しいッス~。ショウゴさんが早く帰ってきてくれたし……って、これからはパパって呼ばないと」
「ちょっと早過ぎるのでは? というかついこの間まで先輩呼びだったし」
「子どもができると女は意識が切り替わるッスよ! 母は強い!」
「なるほど~」
そんな俺たちのやり取りを聞いて、魔導書たちがポポポポポーンと飛び出してきた。
『なあんですってー!! 二世誕生おめでとうございます!! あっ、まだお腹の中でしたか! フロータとしては多くの命の誕生にも立ち会ってますからね! いくらでもアドバイスしますよ!』
『んめでたいぃぃぃぃ! 命の炎がまた一つぅ!! 男だろうかぁ、女だろうかぁ』
『どっちにしてもいいことでやんすね~。おめでとうございます! あっしは情操教育を担当するでやんすよ』
『おめでとう~! 産湯は水を使うでしょう? だったら私の出番ね。ちなみに私の魔法は羊水まで影響を及ぼすことができるんですけど~』
『おやおや、ミーが初参戦ざんすよー! と飛び出す前にビッグニュースざんすねえ! 確かに中途半端に古い魔女たちではこんな明るいニュースが出ようはずもなかったざんすからねー! コングラッチュレーションざんすー!!』
「うわーっ!! 急に賑やかになった! ありがとうみんなー!!」
マシロはおめでとうの雨に、感激して涙ぐんでいる。
そうね、例え相手が魔導書でも、心からの祝福は嬉しいものだ。
こいつらみんな、スパイスの後継者誕生を寿いでいるだけな気もするのだが!
「あれっ? なんかカラフルな表紙の子が一冊増えてない? 新作?」
「魔導書相手に新作って言うのどうかなあ」
『ミーざんすね? お初にお目にかかるざんす~! ミーはカラフリー! 色彩の魔導書ざんす! なんでもできるざんすよ~』
『何でもできるってことは器用貧乏ってことですよねえ』
『ノンノンノン、ミーは万能ざんす~! そこんところ間違えないで欲しいざんすねえ、チミぃ』
『うきー! 私のことチミって呼ばないで~!』
『アヒェー! 暴力反対ざんす~!』
カラフリーがマリンナに追い回されてるな……!!
「個性的だねえ……。あと、こう、なんかショウゴさんの仕草が女性っぽくなってる」
「グラーツ滞在中、ずっと大人スパイスの外見だったからね……。染み付いてしまった」
「口調も女の人っぽい! 早くもとに戻ってほしいッス~!」
頑張る。
さてさて、俺達が賑やかにしていたら、隣室で仕事をしていたらしいシノや下の階にいたコーラル社長も気づいたようだ。
当たり前みたいに扉を開けて入ってくる。
「おかえりなさーい! 大活躍やったねえ。魔導書が? 一冊増えた? ははー、日本が五回沈没できる数やね」
「ほうほう、なんだなんだ。マシロの腹に新しい命が? いいことではないか! 我がちょっとデビュー準備をしている間に、世の中は激しく動いているものだな! おおそうだ、今回は我のおごりでピザを取るぞ! フロッピー!」
『はい、社長』
「お前のメモリーにあるピザメニューから、良さそうなLサイズを5つばかり注文せよ。支払いは我のクレジットカードを使うがいい」
『はい社長』
話の展開が早い!
こうして四人と五冊でわいわいとお喋りしながら、深夜のピザパーティと相成るのだった。
マシロはしばらくは仕事をして、きつくなってきたら産休に入るそうだ。
実家も近いし、色々ケアをしてもらえることであろう。
俺は俺で、一応父におめでたの話を連絡しておくかとメールを送った。
「それで、スパイスはんはお子さんができたら後継者にするんです?」
「そこはまだ考えてないかなー。魔導書が遊び相手になっているうちに勝手に魔法を覚えそうな予感もするけど」
「ひー、生まれる前から魔法の英才教育の話されてる!」
「当然であろうが。複数の魔導書を持つ魔女の子だぞ? 運命からは逃れられん。まあ、今は配信があり、魔法も大いに受け入れられる時代だ。魔女であってもなんら支障なく生活できるであろうよ」
「流石にアイドルデビューを控えた現役ドラゴンの言葉は説得力が違う」
「社長がそういうなら……」
マシロも説得されているな。
魔法なんて、生活に活かせる技能の一つでしかないからな。
そこでピザ到着。
社長がいそいそと受け取りに行った。
ライブダンジョンで、あのままの姿でデビューするわけだからな。
後日、ピザ屋の店員は驚愕することであろう。
あれ?
我が家が社長の家だって誤解されない?
まあいいか。
このマンション自体が社長の力によって守られてるようなところがあるからな。
「では! マシロのおめでたと、俺の仕事の成功を祝って!」
ピザと一緒に頼んであった、人数分のコーラ。
みんな一斉にプルタブをプシュッと開けた。
「乾杯!」
「「「かんぱーい!」」」
魔導書たちもわあわあと賛同する。
いやあ、仕事が終わって帰ってきたら、賑やかなことになっちゃったぞ。
まだ実感が無いが、次々にいいことが起こっているのは分かる。
帰り際に仙人に聞いた、魔王が云々とか言う話は忘れて、今夜は楽しく過ごしてしまおう。
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