第216話 再びテイクオフ
「わたしはここで! またねー!」
「じゃーねー! うちに帰り着いたらまたザッコでやり取りしよう!」
「もっちろん! あと、ぜーったいに留学を勝ち取るから楽しみにしててください!」
「たのしみー!」
ってことで、ウィンディと別れたのだ。
いやあ、今回の旅はとても実り多いものになりましたねー。
「おっと、マシロにも連絡しとこっと。今帰ります……っと」
そうしたら、すぐに返信が来た。
今がグラーツの午前十時だから、あっちは夕方五時かあ。
「家につくのは朝になると思うから、まだ帰ってこなくて大丈夫だよ……と!」
『主様ゆっくりめに帰る感じですねー』
「家に帰るまでが旅だからね! 安全運転しないと」
カバンの中では、魔導書たちがわいわいと会話している。
今はイグナイトとメンタリスが、マリンナとカラフリーの仲を取り持とうとしているみたいだ。
何気に男子陣が穏健派なんだよなあ。
我が家で共同生活をするので、仲良くやってもらいたいものだ。
『主様、来た時のルートをフロッピーちゃんが記録しているので、帰りはかなりの速度でいけますよ?』
「えっ、ほんとうー!?」
『お任せ下さい、えっへん』
おおー、フロッピーが自信満々だ!!
『私達魔導書の、自慢の妹ですからねー。優秀なんですよー!』
「そう言えば、魔女との対決でもフロッピーがかなり強かった……」
『お姉様お兄様がたの魔法を教えていただいていますので。それから、バッテリーに関しても同接のパワーを少々拝借しまして充電が可能になりました』
「配信ちょこちょこやれば永久機関になれるのか! それは凄いなあ」
『私達の薫陶を受けて、フロッピーちゃんは魔導書化しつつありますからねー。意思疎通できるデバイスってこれまで存在してなかったから、魔導書を増やしようがなかったんですよね。人間が私達を写本したものがありますけど、所詮劣化コピーですしこちらを解析しきれてないので、意志が宿りません』
「ほえー、そうなんだ!」
フロッピーのオートパイロットに任せて、ビュンビュン飛びながら会話するのだ。
背景が信じられない速度で流れていくけど気にしない。
あれ?
もうモンゴル上空じゃない?
早すぎない?
グラーツを発って一時間くらいしか経過してないんだけど?
『読むことで正気を失う魔導書~って言われてますけど、大半は私達ですからね! 他のはかなり性能を盛ってる感じで現実に即してはいないですからねー。ま、私達をこんなに大量に所持している魔女なんか、先代と主様しかいませんからね!』
「えーっ、まことに~っ!?」
驚愕するスパイス!
今、そんなとんでもないことになっていたのかーっ!!
『マスター、中国上空です。お気をつけて』
「あっはい。ってうおおおお速い! 速すぎる!!」
フライト、とんでもないことになってるな!
それに、フロッピーのオートパイロットが優秀すぎる。
マッハ10くらいで移動してるんじゃないの今!?
これにはフロータも大変驚愕している。
『フロッピーちゃんがいれば、フライトが使いこなせるんですねえー! 歴代の主が自滅してたのは、つまりフロッピーちゃんがいなかったからってコト……!? 納得ですねー!!』
今明かされる驚愕の事実!
っていうか、スパイスの状況が異常なだけなんだな。
それにフロッピーがかなり育った今だからこそできる、安心のオートパイロット。
条件が揃ってきたということではないだろうか。
『アハーン? つまりフロッピーくん、チミはとっても優秀ということざんすか? ほほー! ミーは気になるざんすねえ~』
『いけなーい! フロッピーちゃん、変な魔法を教え込まれるわよおー! 気を付けてえー!』
『マリンナ、あまりにも人聞きが悪いざんす! ミーから魔法を教わると頭がおかしくなるみたいに……』
「おかしくなるの?」
『ちょっと』
包み隠さぬカラフリー!!
カバンから飛び出した彼とマリンナが、わあわあ言い合っているが、この感じならまあ仲良くやっていけるんじゃないだろうか。
「あっ、帰ってきたか配信者~」
おっと!!
今、仙人がいたな?
フロッピーが気を利かせて急停止してくれる。
もうすぐ日本海という辺りで止まったよ!
仙人が必死の形相で飛んでくる。
「ひい、ひい、なんという速度だあ。とんでもない魔法を使いよる」
「どうもすみません。普賢真人さんですよねえ」
「そうそう。もう調べたのかね? ほんと、普賢菩薩になって見守ってたら、一瞬で世界が地獄に変わってて腰を抜かした。わしの他にも、どんどん仙人が戻ってきておる。だがこう……魔王めが強力でな」
今明かされる、仙界の事情!
みんな人界から離れてたんだけど、ダンジョンが顕現して世界がこの世の地獄に変わった。
慌てて戻ってきて、やれる範囲でダンジョンと戦っていたということらしい。
ところで、魔王?
なんか不穏なワードが飛び出してきましたねえ。
仙人たちが戻ってきてなお、対抗が難しいヤバいのがいるの?
「どういうやり方をしたのかは分からないが、人間からの連絡を受けてね。この大地は彼らと協力して取り戻すことになった。お主も頑張るのだぞ」
「はーい! あと、御札ありがとう! 役立ちました!」
「それは何より! 素直ないい子だなあ」
普賢真人がニコニコしながら見送ってくれたのだった。
ってことで、スパイスの旅は本当に終わり!
山間をサクサク抜けていくと、見えてきましたよ我が街が!
我が家のマンションが!
ベランダにマシロがいるんだけど。
一晩中待つつもりだったのかー!?
「あっ! ショウゴさーん!!」
彼女がぶんぶん手を振る。
スパイスはバンザイしながら帰宅したのだった。
「ただいまー!!」
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