第213話 多彩な攻撃色彩の魔導書! ……を超越するスパイスの手数を見なよ
「詠唱を省略。力を引き出す……! 死ね、小娘!!」
魔法の名前すら唱えない。
足元から、光を発さない純粋な極彩色がドバーッと伸びてきた。
スパイスはこれを、フライトでビュンッと部屋の隅まで移動して回避だ!
足元の極彩色が、天井に向かってドバーッと跳ね上がる。
※『ウワーッ』『コワイ!』『何あれー!!』『きっしょ!』
「うひゃー、何あれ?」
『擬似的に色彩の底なし沼を作り出して、引きずり込んだ相手の思考から生物としてのあり方から、でたらめなものに塗り替えるタイプの魔法ですね! タチ悪いですねー! ま、スパイラルで跳ね飛ばせますよ!』
「こえー! えっ、ほんと!?」
試しにやってみた。
再び色彩の魔女が伸ばしてくる、壁伝いの極彩色を……スパイラル!
「おりゃー!!」
※『うおおおおおスパイスちゃんのスパイラルが!』『なんか極彩色の伸びてきたのを壁ごと巻き取ってグルグルにしてバラバラに分解して部屋中に撒き散らしたぞ!』『空気に溶けてくんですねえあれ』
『色彩の成分をバラバラにされて、形を維持できなくなったんでやんすよ!』
「なんだその対処は! ならばこれはどうだ!」
色彩の魔女の足元から、色とりどりのモンスターが出現する!
ゴブリンとかオークとか、羽の生えたガーゴイルとか。
そういうのがグワーッと湧いてきてどんどんこっちに突撃してくるのだ!
「スパイスさん、危ない!」
グスタフが心配してくれる~。
いい人だなあ。
「ってことでここは、おりゃー! イグナイトスパイス!! 集団戦は得意だぞこのやろー! 燃やし尽くす火の玉を、広げて集めて叩きつけろ! 真・スプリットファイアボール!!」
詠唱付き、スパイスの熟練度が練り込まれた爆裂火球がぶっ飛んだ。
直径1mあるからね!
正面から激突したゴブリンが『ウグワーッ!?』と叫んで燃え尽きた。
で、そこで当たったかな? と判断したっぽい爆裂火球が、スパーンと周囲に飛び散った。
モンスターたちが巻き込まれて、『ウグワーッ!』と悲鳴を上げる。
だけど根性があるやつが突っ切ってきて、同時に色彩の魔女が極彩色の触手みたいなのを頭上から伸ばしてくるのだ!
「なんのー! アクアスパイス! なんかいい魔法よろしく!」
『お任せくださあい! 主様は魔法ごとぶっ放しても大丈夫な魔女だと分かったので、これでどうでしょう?』
「いいね! 深きものよ力を貸せ! 汚れをこそぎ、洗い流すぞーっ! ウォッシングボルテックス!!」
スパイスを渦の中心にして、水がゴンゴンと渦巻く。
それが横向き!
渦の尻尾の部分で、ウィンディを束縛していた色彩が洗い流されたっぽい。
「助かりましたー!」
「ウィンディ、スパイスを後ろから押してー!」
「押すんです? あちょー!」
ウィンディがスパイスのおしりをぎゅっと押した。
すると、渦が発進する!
横向きの渦が回転しながら、弾丸みたいに突き進む!
中心にはスパイスの顔があるぞ!
「おりゃりゃー!」
『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!!』
『なにっ!? 私の触手を……!!』
モンスターを巻き込んですりつぶし、触手を巻き込んですりつぶし、床やら何やらも巻き込んですりつぶし!!
グスタフを束縛していた触手もふっ飛ばしたぞ!
投げ出されたグスタフが、受け身を取ってから立ち上がる。
色彩の魔女は眼の前に色とりどりの石柱みたいなのを召喚し、これを組み合わせて渦を止めた。
目と鼻の先に、真っ黒な魔女の顔がある。
うおー、黒くても分かる!
めちゃくちゃ怒ってる。
「舐めるなよ、小娘がぁぁぁぁぁ!! 私は! 三百年を生きた魔女なんだぞ!!」
「スパイスはアラサーです!!」
※『今語られるスパイスちゃんのおじさん年齢!!』『聞きたくなかった! いや、だがそこがいい』『にらみ合い、絵になるなあ』
「ここで貴様の精神を染め上げてやる!」
魔女の目に力がこもる!
それがぐりぐり色を変えて……。
スパイスの中に入り込もうとしているな?
「マインドスパーイス!!」
パッと変わったスパイスは……。
「精神魔法はこっちが専門家だおらー!」
『主様! 小賢しい洗脳なんかやる前に分かりやすい攻撃でふっとばしゃ勝ちでやんすよ!!』
「ほんとだね! ショーック!!」
「!?」
一瞬ビクッとして魔法が止まる色彩の魔女。
「さらにハードショーック!!」
「ウグワッ!?」
魔女がちょっと下がった。
もう精神魔法を使うどころではない。
『精神の魔法は使い手自身がこれをコントロールできる精神状態である必要があるでやんすからねー。ショックで揺らすと、実は全ての精神魔法の前提が崩れるでやんすよ』
「ほへー!」
※『ショックって一番の基礎魔法でしょ?』『基礎を極めて応用を凌駕する!』『王道だなあ』『スパイスちゃんショック大好きだもんね』
手軽だからね!
ということで、色彩の魔女はあらゆる攻撃手段を使ってくる多彩さが脅威っぽいけど……。
フォームチェンジを鍛え上げたスパイスは、手数勝負だけなら常に勝てるじゃんけんを選んで繰り出せるのだ!!
「おのれおのれおのれぇぇぇぇっ!! やはり、力を切り離しては複数の魔導書を使うお前には分が悪いか!? いや、お前、どうして正気を保っていられる!? それだけの魔導書を従えて、どうして人間のままでいられるのだ!?」
「人間と言うか魔女っ子で、かつ複数のモードを使いこなすのはヒーローの特権だからね……」
※『つまりスパイスちゃんはヒーローだった!』『見た目が魔女っ子なだけで実際はヒーローだよな……!』
「ええい、ふざけた事を……! ならば私は人ではなくなった私を全て呼び寄せ……お前を捻り潰してくれよう!!」
色彩の魔女が両手を広げた瞬間、CEOルームがガーッと広がった。
そして開いた天井に向かって、グラーツのあちこちからビュンビュンと極彩色の塊が飛び込んでくるのだ。
これ、全部がゲーミングおばあさんかゲーミングおばさんだ!!
あ、ゲーミング幼女もいる!
「どうだ! これだけの数があれば、お前の手数など話にもならない……」
「なるんだなあ、これが。魔導書ー! 出番だぞー! フロータ! イグナイト! メンタリス! マリンナ!」
『待ってましたよー! うおー!! 潰すーっ!!』
『ん俺がやるぜぇーっ!! 焼き尽くすー!!』
『やっぱり受肉して戦うのもオツでやんすからねえ』
『ひゃっはー! これでカラフリーを直接殴れますよう!』
現れたのは、色違いのあらゆるスパイスのフォームたち!
「雑魚狩りだー! スパイシーズ! あっせんぶる!!」
「なんだと!?」
色彩の魔女が驚く中、スパイシーズが分身魔女たちに襲いかかるのだ!
「スパイスー! ここで決めましょう!」
「おっけー!」
駆け寄ってきたウィンディと、並ぶスパイス。
※『来るぞ……』『来るぞ来るぞ……!』『待望の……』
「リトルウィッチ・デュオ!」
ばばーん!!
振り返ったイグナイトが、サービスで背景を爆発させてくれる。
※『きたー!!』『きちゃー!!』『待ってた!!』『とんでもねえ待ってたんだ』『お約束ーっ!!』
リスナーがめちゃくちゃに盛り上がった!
そうすると、スパイスとウィンディの中にもりもり同接パワーが注ぎ込まれてくるじゃないか。
おっしゃ、行くぞー!
最終決戦だ!
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