第211話 突撃! リトルウィッチデュオ+1
『足元を固めるわよぉー!! 滑るけどこのスケーティングに身を任せなさーい!!』
スノーホワイトの宣言と同時に、辺り一帯の地面が凍りついていく。
というのも、地面がドロドロの絵の具みたいになってカラフルにぐねぐね蠢いていたからだね!
色彩の魔女本体が出張ってきてしまったから、大変なことになってるのだろう……!
とても歩けないような地面を、固めてくれたわけだ。
「うおおっ、足元が……。そうか、踏ん張ろうとせず、身を任せろと……」
元オリンピック選手、グスタフは理解が早い!
スノーホワイトが凍結させた地面は、足を乗せるとつるつる滑るのだが……。
この滑りが、なんと自動的にレーゲンボーゲン社まで連れて行ってくれるのだ!
「うおー! 便利ー! じゃあここで配信始めちゃおう! こんちゃー! どーもー! 今から決戦の突発配信スパイスでーす! 見にこれる人だけ見に来てね!」
※『!?』ランプ『突然俺達メンバーに流れてきた配信開始の連絡!!』マルチョウ『ふう……会議が終わった直後で助かった。応援させてもらう』
訓練されたお肉どもが集まってきたぞ。
訓練したのはスパイスですけど。
あっという間に同接が1000人を越えた。
よしよし!
日本だと、同接増やしてダンジョン配信を応援するのは最重要! みたいな法律ができてますからね。
お陰で助かるー。
『ん主ぃ! 行くぜぇ!』
「おっけー! メタモルフォーゼ! イグナイトスパイス!!」
ババーンっとオレンジカラーの炎衣装なスパイスに変身!
その眼の前では、ウィンディが氷の魔法でレーゲンボーゲン社の扉を凍りつかせている。
ははーん、魔女が入り込んだウィッチハンターを逃さないために閉ざしてたんだな。
これを凍らせて、イグナイトがスパイスに声を掛けたということは……。
「うおー! 急速冷却からの急速超加熱! 行くぞー!! いきなり! バーニングハンマー&ネイル!!」
バカーンッ!!と叩き込まれる、炎の釘。
さらに大きな炎のハンマーを振りかぶると……。
ハンマー後部から炎が吹き出した。
ロケットハンマーだー!
釘をさらに猛烈な勢いで叩き込む!
ここで、扉が破裂して粉々になった。
破片は、スパイスの後ろに抜ける前に、イグナイトの発する熱で融けてしまうぞ。
「恐るべき威力だ……! 魔法による封印を、力づくで突破するとは」
グスタフが驚いている。
『これはあれね。魔法の技術で上回る色彩の魔女を、無理やり属性の相性勝負に持ち込んで叩き潰すみたいなそういうやり方だわね!』
スノーホワイトの説明がわかりやすーい!
そう、魔法というのは熟練度とか技術だけの問題じゃなく、じゃんけんみたいなものでもあるのだ!
扉を吹き飛ばして突入!
そうしたら、待ち構えていたっぽい色とりどりのモンスターたちが、『ウグワ~』とか力なく呻きながらみんなぶっ倒れていたのだった!
待ち伏せなんかしてるから巻き込まれるのだ!
一階はダンジョン化してて拡張してたはずなんだけど、完全にもとに戻っている。
さっきの扉破りの一撃でやっつけてしまったっぽい。
「くっ……! ここで脱落者が出ていたか……。無茶な突撃をするから……」
グスタフが、倒れているウィッチハンターを見つけた。
三人ほど。
もう死んでいるようだ。
そして残るハンターは上の階に進んだと。
「大丈夫なんでしょうか? 心配です」
「ああ……。俺達も先に進みましょう」
ウィンディの言葉にグスタフは直接答えないが、これはもうダメじゃないかなーと思ってる顔だな。
色彩の魔女レベルの相手と戦うために、カッとなって本拠地乗り込むなんて自殺行為でしかないからねー。
戦えるのはトップクラスの配信者か、エクソシストでも完全に準備を整えた集団じゃないといけないと思う。
じゃあ、魔女ならどうなの?
「メタモルフォーゼ・マリンナ! アクアスパーイス!!」
※『アクアスパイスきたー!!』『待ってました!』『マリンナ、色彩の魔導書への殺意マシマシだもんなあw』
『うおー! やりますよう! 任せてくださあい! 主様、ここはタイダルウェイブで……』
「えっ、階段を遡っていくタイダルウェイブが!?」
『できまぁす!』
タイダルウェイブの魔法が発動する。
押し寄せる波が、スパイスたちを乗せて階段をぐんぐん昇っていく。
下から上に上がる波なんか初めてだあ。
おっと、二階のフロアに色彩の魔女の分身発見!
なぜ分身だと分かるかと言うと……。
明らかにこの間見たやつよりも色数が足りてない!
『うぼおおおお!!』
『うるさーい!! 押し流しますよー!!』
『ついでに風でぶっ飛ばすわ! ウィンディやっちゃいなさい!』
「オッケー! ウィンディストラーイク!!」
『ウグワーッ!!』
タイダルウェイブで浮かせられた分身に、いつものキックが炸裂!
風と氷で固定&凍結、強いショックで粉々の分身!
「パーフェクトにパターンを覚えましたねー。もう怖くないです」
「いけないぞウィンディ。それフラグだぞ」
「ハッ! わたしとしたことが!」
気を取り直すウィンディなのだ。
なお、グスタフは神妙な顔をしてずっと運ばれていっている。
魔法みたいな攻撃手段がないと、やれることがどうしてもね……!
もうちょっと待ってて欲しい。
すぐにこの間の会議室だから。
で、この会議室にて残るウィッチハンターたちが全滅していたのだった。
あー、やっぱり!
むしろよくぞここまで上がってきた……って、半数がカラフルに変色してるんで、魔女に操られてゾンビ化でもしたっぽい?
それで同士討ちかあ。
「くっ……なんということだ……! 彼らの尊厳を傷つけるとは……許せん……!」
派閥が違う人たちだけど、エクソシスト仲間ではある。
グスタフは怒りを燃やすのだった。
そしてここに!
魔女の分身みたいなのがいる。
ここもどうして分身だと分かったかと言うと……。
『ははーん、今まで同様、中身が入ってないでやんすね。切り離された人格でやんす。あいつに近づくと頭の中をあいつの考えで染められるでやんすよ!』
「メンタリス詳しい! ということは~……フォームチェンジ!! マインドスパイス!」
『主様、行くでやんすよー!! 空間を通した精神汚染なんて、薄めたジュースみたいなもんでやんす! 原液で攻撃するでやんすよー!』
「おう! 格の違いを見せてやるーっ!! おらーっ! 空間にハードショック!」
『!? ウグワーッ!!』
魔女の分身がガクガク震える。
なんか、こいつの中身にある思念みたいなのを、外に伸ばしてる状態だったらしい。
だからこれに捕まると、洗脳されてしまったわけだ。
今回、この思念を直接ハードショックの魔法でぶん殴りまくりました!
魔女の分身が『オロロロロロ!』とか絵の具を吐き散らしながら、ぐらんぐらん揺れている。
そこにグスタフが駆け寄った!
「これは……仲間たちの無念の分!!」
完璧なワンツーが!
ローキックからのコンビネーションが魔女に炸裂!
「そして主の怒りを受けるがいい!」
あっ、自分の怒りではなく、エクソシスト総体としての怒りを!
分身を担ぎ上げたグスタフが、肩車の要領で倒れ込む。
しかも受け身を許さない、頭から落とす反則技だ!
地面に出現した十字架に、魔女が突き刺さった。
『ウグワーッ!?』
爆散する魔女分身!
これで残るは、本体のみなのだ。
張り切って行ってみよう!
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