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第206話 魔女本体は社会的地位がある!?

 とんでもない情報が掴めたので、その足でエクソシスト協会へ向かった。

 協会はオーストリア的な雑居ビル……見た目は風情がある、古風な建物……の二階にある。


「やあ、スパイスさん、ウィンディさん。お待ちしていました」


「グスタフさん! 昨日ぶりです」


「グスタフさん! よろしくお願いしまーす」


 ここは雑居ビル入口。

 一見すると若い女性二人に囲まれてチヤホヤされているグスタフに、同僚らしきエクソシストがうらやましそうな目を向けた。

 実質女性ひとりだけだからね!


 こうしてグスタフに連れられて、エクソシスト協会に入るのであった。

 敬虔なカトリックだけで構成されている協会なので、魔女だということでスパイスたちを敵視するような目を向ける人もいるね。

 仕方ない仕方ない。

 ウィンディはプロテスタントで、スパイスなんか仏教徒だからね!

 浄土宗だよ!


「色彩の魔女の本拠地が分かったということですが……。今調査が進んでいるところです。どうぞお掛け下さい」


 見た目はクラシックな建物なのに、中はリフォームされてちゃんとしたオフィスになっている!

 席についたら、グスタフが手ずから何かドリンクをいれてくれた。


「我が国に来たのなら、これは飲まなければ始まりませんよ」


 ということで出てきたのは、アルムドゥードラーというなんか爽やかなシュワシュワしたドリンク!

 ジンジャーエールっぽい見た目だけど、爽やかな香りで味はレモネードかな……?


「なかなか美味しい」


「ステイツのレモネードよりこう、品がある感じですねー。もう少し甘くても?」


 おっ、対抗意識を燃やすカンザスっ子のウィンディ!

 そんな感じで、朝ジョギングしていた理事もやって来ての会議がスタートなのだ。


 パーテーションで区切られた部屋で、色彩の魔女の拠点についての話をする。

 下手に話が漏れたら、カッとなったエクソシストが突っ込みそうだからね。

 そして多分、普通のエクソシストだと一方的にやられておしまい。


「話を聞いていると、おそらくはAクラスのエクソシスト複数名……それもしっかりと準備を重ねたチームでなければ対応できないだろうね」


 理事は昨日の遭遇戦の話も聞いて、冷静に戦力となるメンバーの選定を行っている。


「問題は、一般企業に魔女が入り込んでいるならば、これを調査するためには国の許可を得なければならないからな。時間が掛かってしまう」


「その辺りはオーストリアでも変わらないんですねえ」


「日本と違い、迷宮省にあたる機関が存在しないから手間がね……」


 エクソシストは政治的な介入なしに動くため、国とは距離をおいているらしい。

 そのせいで、今回の件は国とのやり取りからスタートせねばならず、動くのに時間がかかるとか。


「ここはやはり配信者の出番では。背負うものが何も無いので」


「フットワークの軽さが逆転してしまった」


 グスタフが天を仰いだ。


「わたしなんかただの大学生ですからねー」


 呑気にハーブソーダを飲むウィンディなのだった。


 さてさて、くだんの通販会社は、レーベンボーゲン通信販売株式会社と言うんだそうだ。

 歴史は新しく、ここ十年くらいで起業された会社。

 CEOは女性。


 アイリスという人だそうで、写真を見たら若い。

 若く見える。

 何より、髪の色がブラウンベースでゴールドとグリーンを差し色にしてて、インナーカラーが赤い!


「確定でしょこれ」


「色がうるさいので間違いないですねー」


「そうなのか……?」


「そうなのかなあ」


 グスタフと理事は首を傾げている。

 このアイリスという人は、教会にも多額の寄付を行っているんだそうで、グラーツのカトリックとは大変仲がいいらしい。

 だからこそ、レーベンボーゲンをエクソシスト協会がガサ入れすることは大変困難というわけだ。


 いやあ、社会ですねー。


「俺としてはすぐにでも動きたい。なんなら、エクソシストとしての地位を捨ててでも」


「グスタフさんステイ! 落ち着こう。カッとなって動いてもなんもいいことはないよ!」


 熱い男だけど、危なっかしい。

 グラーツのガードマスクみたいな人だな。


「ここはひたすらに自由が利く、スパイスとウィンディにお任せしてもらえればいいよ」


「君たちだけに任せることに……! 心が痛む」


「国の許可がもらえるまではスパイスたちがいい感じでやっておくから。白い魔女がバッチリ決めるよ!」


「済まない……!!」


 エクソシストは配信をしなくていい分、配信者よりもフットワークが軽いけど、組織と社会のしがらみに縛られるんだよね。

 映画に出てくるエクソシストと違って、戦いが終わっても次の戦いが待っているから、この瞬間に全てを賭ける……なんてわけにはいかない。


「済まないね。頼むよ、任せたよ。現地の配信者のみんなには話を通しておくから」


 ということで、理事のつてを使ってグラーツに入ってきている配信者たちとも連絡が可能になったのだった。

 そんなわけで、彼らとザッコを使った会議を行う。


『レーベンボーゲン株式会社が!?』『ええーっ、あんなホワイトで有名な所なのに』『いや、裏ではCEOに逆らった社員が行方不明になったりしてるらしいぜ』『所属してる社員はSNSでもいいことしか書かないもんなあ』『みんな同じ色に染められてるみたいに、CEOの信者みたいに』


「これ、ブレインウォッシュしてません?」


 ウィンディ、鋭い。


「色彩って言うくせに、周りの人間の頭は一色に染めてる感じ……。もしかして、頭おかしくなる度に人格を切り離して周りに放り投げてる?」


 謎に満ちたレーゲンボーゲン株式会社、調べてみねばなのだ。

お読みいただきありがとうございます。

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>レーベンボーゲンをエクソシスト協会がガサ入れすることは大変困難というわけだ。 >「国の許可がもらえるまではスパイスたちがいい感じでやっておくから。白い魔女がバッチリ決めるよ!」  これならもう国の…
これ、写真見て確信したの髪色がどうと言うより魔女の感知力とかに引っ掛かってて後から物理的な理屈がついた……って感じじゃないかと邪推してみたり。 もしくは髪色が派手に見えてるのは魔女二人だけでエクソシス…
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