第201話 エクソシストといっしょ2
比較的新しいマンションだというのに、見た目はかなりクラシック。
ある程度は景観を合わせるつもりで作ってあるんだねえ。
「古い建物ほど伝承による防御が発生しているのです。ですから、魔のものは新しい建物を狙います。古い建造物には既に何かが住み着いているため、入り込む隙間がないですからね」
「色彩の魔女は実力ある気がするんで、それくらいなら突破しそうですけど? やっぱ人格ばらばらになって活動してるから、思考よりも反射みたいな感じでやりやすいところをダンジョン化してるのかなあ」
「スパイスさん、詳しいようですね。やはりあなたの同行を許可して正解だった。白い魔女との共闘は俺も初めてですから」
マンションの中に入りつつ、グスタフは十字架グローブを構える。
一歩踏み込んだ瞬間から、外の寒さとは全く違う冷気を感じる。
本格的なオカルトスポットのダンジョンだぞー!
全ての扉が開け放たれており、スパイスたちの侵入に合わせるようにして、怨霊みたいなのが這い出てくる。
問題は、そいつらがみんな極彩色にペイントされてること。
雰囲気壊れるなあ!!
「これ、みんな色彩の魔女が配置したモンスターですねー? なんか様式がクラシックじゃないっていうか、量産型怨霊っていうか」
「ほんとだ!」
「我々にとっては量産型でも、一般市民にとってはこの上ない脅威ですからね。行きましょう!」
グスタフが走った。
大きな背中が猛烈な勢いで遠ざかる。
彼を迎え撃つように、怨霊が次々に起き上がって俊敏に襲いかかってきた。
おい、俊敏に動けるならなんで這って現れたの!?
『雰囲気づくりじゃないですかねー』
『んオーストリアのぉ、怨霊は素早いなあー』
『ゾンビなんかでも走ってくるやつがいるくらいでやんすからねー』
グスタフは怨霊の一体に素早くジャブを叩き込む。
打撃の瞬間に十字の光が怨霊に刻み込まれるのだ。
おお、グローブ効いてる!
ワンツーからの強烈なストレート……正拳突きで、怨霊の一体が『ウグワーッ!!』と浄化された。
さらに他の怨霊の攻撃を、空手っぽい受けで捌く。
そこから懐に入り込んで……怨霊の胸ぐらをつかむと、そこから投げる!
払い腰だー!
怨霊が落下する寸前、地面に十字架の紋章が出現。
そこに激突した怨霊が『ウグワーッ!!』と浄化された。
見たこと無いファイトスタイルだ!
かっけー。
ちなみにこの光景、グスタフとエクソシスト協会の許可を得て配信に流しております。
※『うおおおおおお!!』『エクソシスト柔道!!』『空手と柔道と除霊を組み合わせた全く新しい格闘技!』『いちいち演出が厨二でかっこいい!!』
うちのお肉どもにも大好評だね!
※マルチョウ『これは……まさか、伝説のヤコブ空手では……!?』
トンチキなことをいい始めるのがいるなー!
「さて、枠主はスパイスなわけだし、じっと見てるのもよくないよねー。怨霊もどんどん溢れ出してくるし、素のままだとウィンディ写せないし」
「はい! じゃあメタモルしましょう!」
※『オトナスパイスちゃんも魅力的よ』『そのまま戦ってー!』『ウィンディちゃんの変身前の声、大人っぽいねー』『こっちもよきよき』『画面に映らないのが残念!』
「変身しないと魔法が十分に使えないからね! あと、ウィンディは若い人なので色々配慮が必要なの! それじゃあいくよ! メタモルフォーゼ・スパイス! さらにフォームチェンジ! イグナイトスパイス!」
『ん俺だぁー!』
バシーン!とイグナイトと合体。
イグナイトスパイスの登場だ!
「わたしもメタモルフォーゼ!! じゃーん!! ウィンディ! わたしも変身フォーム欲しいなー」
『ウィンディはまだ未熟だからダメ!』
スノーホワイトに叱られてる。
どうも、ウィンディは基本フォームらしく、腕を上げると上位フォームになれるようだ。
そっちも楽しみかも知れない。
「ウィンディこっち来てこっち。怨霊が来る前にやるから。例の」
「はーい! こっちでいい? スパイスお尻当たってますよー」
「この距離だとどうしてもね! いくぞー!」
「「リトルウィッチ・デュオ!」」
びしいっとポーズを決めるスパイスたち。
イグナイトが気を利かせて、背後で爆発を起こしてくれた。
「なんだ!?」
びっくりして振り返るグスタフ。
ごめんね!
そしてスパイスたちが幼女になっているので、二度びっくり。
「は……配信者というのは年齢まで変わるのか……!? 知らなかった……」
いかん、グスタフが動揺して怨霊たちへの攻撃がゆるくなってる!
「あぶなーい! 伸びろ炎の矢! 撃ち抜けフレアアロー!」
ダッシュしながら指を突き出すと、その先から炎の矢が飛び出した。
グスタフに襲いかかろうとしていた怨霊を一撃で貫く。
『ウグワーッ!?』
バシューッと消えて、ダンジョンコアになる。
おや?
グスタフにやられてもダンジョンコアは出てこなかったような。
「エクソシストの攻撃は浄化ですからねー。ダンジョンコアごと消えるんじゃないかなあ。おっと! 風よ集え! ねじって放つ……ウィンドシュート!」
風の矢が飛んでいき、数体の怨霊を弾き飛ばした。
『ウグワーッ!!』『ウグワーッ!!』
「ははーん、つまり除霊しちゃうとほんとに消えちゃうから、資源回収も考えると配信者も活動したほうがいい……?」
「そうかもですね! 考察動画でやってました!」
ウィンディそういうの見るのね。
これにグスタフが応じて、
「誰もが配信できるわけではないし、どうしてもフットワークは重くなる。敬虔な教会の信者たちを守るためには、常に戦えるエクソシストは必要なのです」
「なるほど、フットワーク!」
ケースバイケースってわけだね!
そんな感じで、三人揃ってダンジョンをもりもりと突き進んでいくことになるのだ。
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