第196話 合流! スパイス&ウィンディ
「ふむふむ、グラーツはオーストリア南部の美とも呼ばれているんだねー」
「うむぅー。やはり欧州に帰ってくるとぉー、昔ながらの町並みを模していてえ、俺は落ち着くなあー」
ボイチェンの甲高い声なイグナイトが面白いなあ。
これはグラーツ市街を観光するライブ配信であり、つまりスパイスとイグナイトが二人で歩いている光景はアワチューブで垂れ流されていることになる!
※『石造りとかレンガの町並み!』『雰囲気いいよねー』『落ち着いた感じ』
「風の大魔将から解放されたことで、観光客も増えてるみたいだねー。ちなみに有名な名所であるエッゲンベルク城には大阪屏風全図がありまーす。色彩の魔女を粉砕したら見に行きたいよねー」
※『いいねー!』『オーストリアに日本の屏風が!?』『不思議!』『それはそうと、スパイスちゃんが大人になってるから凄く不思議な感じだ』『イグナイトがスパイスちゃんポジだもんなw』
「ん俺はぁー! なんかこのアバターになるとぉ、自分がカワイクなった気がして仕草とかが変わるぞー」
ほんとだ。イグナイトがカワイクなってる。
なお、スパイスも大人になると、仕草や考え方がちょっと落ち着いている気がする。
精神というのは身体に引っ張られるのだ。
今のスパイスはアラサーボディなので、ショウゴとも近い。
大人の女性なのだ!
おっと、レディはなのだ!とか言わない。
風情のある、ヨーロッパー!って感じの町並みを見ながら歩いていると、向こうの通りにざわめきが満ちた。
みんな空を見上げてわあわあ言っている!
「何か飛んでくる? どれどれ、現地の人たちの言葉を翻訳してみようか。フロッピー!」
『はい、マスター』
ここからは、グラーツの人たちの言葉が日本語になって聞こえるぞ。
「何かが空を!」「なんだあれはーっ!」「鳥か!?」「飛行機か!?」「いや、ちっちゃい女の子だー!!」
「な、なんだってー! なにものなんだー!!」
※『棒読みの叫びで草』『スパイスちゃん誰が来るのか分かってるでしょw』『空を飛んでくる幼女なんか二人しかいないもんなあ!』『再登場うれしうれし』
「ハーイ! スパイスー!」
彼女は空から堂々とやって来た!
緑色のアリスドレスを纏った、まさにふしぎの国のアリスという外見の女の子。
まあ、ちょっと魔法少女っぽい装飾があちこちについてるんだけど。
風と氷の新たな魔女にして、スパイスと並ぶ魔法少女。
ウィンディの登場だ。
「ウィンディー! 実はスパイスはこっちだよ」
「えーっ!? あなたがスパイス!?」
ウィンディはストンと道路の上に降り立った。
ちょうど噴水の前で合流した形になり、次の瞬間に噴水がプシューッと吹き上がった。
『ウィンディ、確かにこっち、スパイスじゃないわね! イグナイトじゃない! なあにその格好!!』
「ふっふっふー。俺達はあ、こうやって主の姿を模して変身できるようになったのだあ」
『な、なんですってー!!』
衝撃を受ける風と氷の魔導書、スノーホワイト。
ここにフロータとメンタリスとマリンナも飛び出してきて……。
『ほほほ、うらやましいでしょう! 私達もメタモルフォーゼですよー! うおー!』
何がうおーだ。
雄叫びをあげて、水色エプロンドレスのスパイスになるフロータ。
制服ありの小学校のメガネ女児みたいに変身するメンタリス。
そしてスク水のマリンナ……は流石に不味いと思ったのか、青いジャージを羽織っていた。
バリエーションあるんだねそれ。
※『うおおおおお!!』『スパイスちゃん軍団勢揃い!!』『グラーツの往来でええんかw!?』
「ほんとだ!! 天下の往来だった!」
スパイスはハッとして、注目を浴びる中、とりあえず人気の少ないところに移動することにした。
ちなみにグラーツは裏通りにダンジョンが発生しやすい状況になっているそう。
間違いなく色彩の魔女の影響なんだけど、おかげで欧州の配信者やエクソシストが数人乗り込んできていて、活動しているんだそうだ。
おかげで、裏路地に入るだけで人気が無くなる……。
あっ、ダンジョン化してる!
『主様! 私達はこの姿だと主様っぽいですけど、主様がスパイスになってないと大きな魔法が使えませんので!』
「あっ、そういう仕組み? 司令塔としてスパイスが必要と。よーし、それじゃあ……メタモルフォーゼ!」
白黒の光の螺旋に包まれて、黒胡椒スパイス登場!!
※『オリジナルのスパイスちゃん来たー!!』『やっぱこれよ』『色違いスパイス軍団を従えるリーダーみたいになってる』『今回はライバルキャラのウィンディもいるもんな』
「なるほどー! ちょっとうらやましいデスねー! 後でうちのスノーホワイトも変身できるようにしてあげて!」
「いいでしょう!」
ウィンディにお願いされたフロータが、なんか二つ返事でOKしたぞ!
魔導書に新しい文化が広まっちゃってるじゃん。
「よーっし、じゃあ行けえー、ものどもー! スパイス軍団……スパイシーズあっせんぶる!」
「うおおー!」
「行くでやんすよー!」
「近くを川が流れてるから魔法が使えますねえ」
ダンジョンから湧き出すのは、おなじみのゴブリンとかオーガなんだけど、みんな形がおかしい。
腕がやたら長かったり、頭が二つあったり、四足歩行形態になってたり。
あと、みんな異常にカラフルだ。
色々なカラーのペンキをぶちまけたみたいな。
「これは色彩の魔女から眷属化されてますね。この都市の住民は、ほんとに怖いでしょうねえ……。このダンジョン化、都市のあちこちまで波及してますから」
「ははーん。じゃあこれを攻略しながら、色彩の魔女の情報集めになるわけだねえ」
「スパイス! ここはあれで決めましょ!」
「あれというと……ほほーん」
ウィンディの大好きな、アニメチックなやつね。
スパイスとウィンディ、背中合わせに立ち、ダンジョンのモンスターに向けて宣言する。
「浮遊の魔女スパイス!」
「風と氷の魔女ウィンディ!」
「「リトルウィッチ・デュオ!」」
この間ザッコで雑談しながら決めた名前ね!!
イグナイトが背景で、ドカーンと炎を吹き上げて演出してくれる。
コメント欄は大盛りあがり。
さあさあ、海外一発目ダンジョン、攻略しちゃおう!
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